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岐阜大学データサイエンティスト育成プログラムでのエデュケーションプログラムの活用
パブリックセクター事業開発マネージャー(教育・研究担当)澤です。この記事では今年で2年目の取り組みとなる岐阜大学データサイエンティスト育成事業の一環で行ったAWSを活用したハンズオントレーニングを含む集中講義について、具体的にどのように講義の行ったかについて詳細をご紹介します。
実践データサイエンティスト育成事業とは
超スマート社会のデータサイエンティストに必要な3要素(実世界データ知識,ツールの活⽤スキル,異分野との協業マインド)の育成を⽬的として2019年度に開設されたプログラムで,企業などから提供されるデータを⽤いて実社会の課題をグループワークで解決する「実世界データ演習」を実施することを目標とされています。この育成事業の中の集中講義「高度プログラミング」を2年度にわたりAWSが担当しました。
AWSにお寄せいただいた相談「ハンズオンをどのように実施するか」
データサイエンティストを目指す受講者のために実践的な講義を提供したいので協力をお願いしたいと2020年に岐阜大学様からご相談をいただきました。参加は岐阜大学以外からも参加を募るため、実際に名古屋大学、三重大学、同志社大学、筑波大学、中京大学など複数の大学の学生と社会人学生の方が参加されています。2021年年度については同年8月からエデュケーションプログラムの移行(こちらの記事)が始まっていたため、変更点を考慮してハンズオントレーニングを提供する必要がありました。ソリューションアーキテクトの櫻田と入念にチェックを行い、今年度の準備を行いました。なおAWSの利用のために学生が用意しなくてはいけない環境はネットワークに接続されてブラウザとキーボードが利用できる環境だけで、これは昨年度と同じ条件で実施できました。
1年目(2020年度)の講義
想定される受講者のレベルを教員と探りながら、全120分x3回の講義を実施。
- 1回目の講義
AWSのことを初めて学ぶレベルの講義としてAWSのクラウドの概要説明とごく基本的なサービスを触ってみる内容。演習環境としてはAWS Educateのクラスルームアカウント(注意:2021年8月で新規提供を終了しました。)を使用。学生は自身のクレジットカード登録をすることがなくAWSコンソールにアクセスしAmazon EC2、AWS Cloud9などの基本的なサービスの使い方をハンズオンで学んだ。AWS Educateの加盟手続きやコンソール起動までの手順は事前の課題として各自の環境で行っておくことをお願いしました。 - 2回目の講義
Amazon SageMakerを使いR言語による統計処理の実行やSageMaker上のJupyter Notebookにて 機械学習のサンプルコードを実行。AWS EducateのクラスルームアカウントではSageMakerの使うために十分な機能が提供できないため演習環境としては教員のAWSアカウントのIAMアカウントを受講者に期限付きで配布。教員は上限緩和申請などの準備を行ったうえで受講者にIAMアカウントを配布。講義後は自身で選んだデータを機械学習の技術を使って分析する課題に取り組んでもらった。 - 3回目の講義
課題の発表と評価。
2年目(2021年度)の講義
1年目の講義をベースに講義内容を準備。全120分x2回の講義を実施。(課題評価は授業外で行うことになった)
- 1回目: 昨年同様AWSの基本(VPCの作成、Cloud9からEC2にログインする)
昨年同様初心者レベルのハンズオンを含む講義。使用したサービスなどは後述の教材をご参照ください。AWS Academy のクラスを教員が事前に作成し受講者を招待してもらい、受講者にはそのクラスに参加しLearner Labという演習環境内でAWSコンソールにアクセスするところまでを事前課題として自分の環境で確認おくことをお願いした。この事前課題により限られた事業時間の中でスムーズにハンズオンを始めることができた。
【利用したサービス】
統合開発環境 AWS Cloud9
仮想サーバAmazon EC2 - 2回目:昨年同様AWSを用いた機械学習(Sage Maker の利用)ただし演習環境を変更
昨年同様Amazon SageMakerを使いR言語による統計処理の実行やSageMaker上のJupyter Notebookにて 機械学習のサンプルコードを実行。1年目と異なり演習環境は新たにAWS AcademyのLearner Labを利用した。AWS EducateのクラスルームよりもSageMakerについては制限が少なかったためこの方法を選択した。講義の課題としてこちらのAWSが提供しているオープンデータセットを活用いただいた。
【利用したサービス】
Amazon SageMaker
機械学習を実施するうえで必要なモデル開発、学習、推論を実施できるフルマネージド型サービス
2021年度の教材のダウンロード
※岐阜大学が用意した人材育成事業のWebサイト上で公開されているデータです。
注意:これらの教材は2021年9月22日時点の各サービスの仕様に基づき作成されています。サービスの使用は変更されることがありますのでご注意ください。
AWS AcademyのLearner Labとは
AWS Academyは教育機関にAWSを学ぶための実践的な授業を実施する無償のカリキュラムパッケージで、
- 講師向けトレーニング
- 授業で使う教材
- 学生のためのAWSの演習環境(各コース中のラボや自由に利用できるLearner Lab)
などをカリキュラムパッケージとして高等教育機関に提供する無料の教育プログラムです。Learner LabはAWS Educateのクラスルームに近い機能を持つAWSの演習環境を学生に無料で提供できる仕組みで、学生が教員から一つのクラスに招待されると、招待されたクラスごとに100ドル分のサービス(利用できるサービスとリージョン、連続サービス起動時間に制限有り)が利用できます。新規にAWS Academyに参加しLearner Labを学生に提供するには
- 教育機関としての加盟(機関代表者はどなたでもよく後から変更も可能。)
- 機関の代表者が教員メンバーになりたい教員をノミネート
- 教員メンバーがAWS AcademyのLSMの中でクラスを作成し学生を招待
この3つのステップを経ることになります。
Learner Lab
[Start Lab]をクリックしAWSの横の●マークが緑●になると連続4時間AWSコンソールにアクセスできるようになる。4時間を経過すると再びStartをすることができる。クレジットの過剰消費を防ぐ仕組み。
教員と学生の声
- 教員の声
クラウドコンピューティングという言葉は聞いたことがあるけれども実際に操作したことがない学生が多く,食わず嫌いの状況でした.実際に学生に操作を体験させることで,研究や業務などで利用する良いきっかけとなったと思います。(岐阜大学工学部 鈴木優准教授) - 学生の声
- 実際にお金を払わないと利用できないものを授業の中で触ることができて良い経験になった。
- クラウドコンピューティングの意義と、基盤的なサーバの構築から体験できたので、初心者としてはありがたかった。
- 実際に手を動かして学習できる点がよかった。
- クラウドを扱った機会がなかったので貴重な体験ができた。
AWSの思い
社会人1年目2年目くらいのクラウドを業務で使っている若手技術者に学生のころにクラウドを使っていたかと尋ねると意外に多くの方が「使ったことがなかった」と回答されます。理由を伺うと、課金の仕組みがよくわからず怖かった、大学でどのように契約すればよいかわからなかった、使うきっかけがなかったということをよく伺います。AWSでは今回の講義で使った無料のエデュケーションプログラム、大学での利用のための課金や契約についてのオンデマンドセミナーのシリーズなどを、研究活動などでAWSの利用を始めるきっかけになるよう提供しています。すぐに使い始められるのがクラウドの最も重要なベネフィットですが、少しの心配事や不明点がクラウドを使い始めることのハードルになっていることがあるようですので、それを取り除くための活動を今後も続けたいと思います。
AWS Academyに関するお問い合わせはawsacademy-japan@amazon.comで承ります。
また、教育機関でのAWSのご利用に関するその他のお問い合わせはaws-jpps-qa@amazon.comで承ります。公共機関における AWS 導入のためのお役立ちサイトもご参照ください。
著者
パブリックセクター 事業開発マネージャー(教育・研究担当) 澤 扶美 新卒で入社した外資系コンピュータ会社の技術者から理化学研究所にスーパーコンピュータの技師に。2018年10月AWSにエデュケーションプログラムマネージャーとして入社、2021年9月より現職。AWSカルチャーアンバサダー。公私にわたりSTEM分野で働く女性を増やす活動も積極的に行っている。大阪出身。好きなAWSのサービスはAWS Cloud9. |