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大学・研究機関でのAWS活用事例シリーズ (1)
みなさん、こんにちは。アマゾン ウェブ サービス ジャパン、パブリックセクターの田代です。
今回は、ブログでまとまった形で紹介することが少なかった日本の大学・研究機関におけるAWS活用事例を紹介します。
“大学・研究機関がクラウドを使うメリットはなにか? クラウドはどのようなワークロードで使われているのか?” このような疑問をお持ちの大学・研究機関の方々がいらっしゃることと思います。
AWSを活用して、業務の効率化、TCO(Total Cost of Ownership)削減、あるいはより迅速に研究成果を生み出すことに取り組んでいる大学・研究機関のお客様が日本にも数多くいらっしゃいます。その中からほんの一部ではありますが、それぞれのお客様のクラウドジャーニーの様子をお届けします。
【近畿大学における活用事例】
近畿大学は、医学から芸術まで14学部48学科を擁する総合大学ならびに、附属幼稚園から大学院まで約5万2000人が在籍する西日本最大級の学園です。2015年から教務システム等の17の業務システムをAWS上に移行、大きな障害もなく安定運用しています。
≪お客様の声≫
“近畿大学は「高可用性」「実績」「多機能」「マネージドサービスが豊富」の4つを重要視してクラウド事業者を選びました。初期費用が約70%削減することおよび、10年間の初期投資およびランニングコストを合わせた総費用が、オンプレミスと比べると約20%削減可能という試算のもと、2015年から教務システムをはじめとする計17のクラウド化可能な業務システムをAWSに移行し、大きな障害もなく安定運用しています。
AWSを活用することで職員はハードウェア起因のシステムリプレースから解放され、学生サービスの向上や大学としての魅力の向上のための検討に注力できるようになりました。”
上田 拓実 氏 学校法人近畿大学 総合情報システム部
≪具体的なAWS活用方法≫
業務要件に応じて多様なマネージドサービスを組み合わせて運用コストを最適化した構成を実現しています。Amazon EC2については豊富なラインナップから最適なインスタンスタイプを選択しコストパフォーマンスの最適化を実現しています。
また、学術情報ネットワークSINET5経由の接続によりセキュアで高速なネットワーク環境のもとでAWSと接続をしています。アカウント管理環境をAWS上に統合し、外部のクラウドサービスとのシングルサインオン連携も実現しています。
【国際基督教大学における活用事例】
国際基督教大学は学生数3,105名(2020年10月1日時点)の日本で最初の4年制のリベラルアーツ大学です。文理にわたる31のメジャー(専修分野) を通して「新しい知の世界」に触れ、自分の興味・関心を見極め、幅広い視点を持ちつつ学びを深める教育を実践し、卒業生は、国内外を問わず多岐にわたる分野で活躍されています。
国際基督教大学では、AWSのグローバルインフラストラクチャを活用し、高い耐障害性と柔軟性を備えた大学ホームページを構築されています。
≪お客様の声≫
“AWSを活用することで、従来よりも運用負荷とコストを削減しつつ、大規模災害やDDoS(Distributed Denial of Service)攻撃等にも対処可能な堅牢な大学ホームページを構築することが出来ました。また、グローバルインフラストラクチャを最大限活用し、海外に居住している学生や保護者に対しても迅速に情報を届けることが可能となり、サービス向上につながっています。
本学では2014年のAWS利用開始以来、継続的に構成の見直しを行っています。見直しの度に事業継続性の向上と運用負荷やコスト削減の両立が出来ていることはAWSを利用しているからこそ実現できたと実感しています。”
佐藤 健二 氏 国際基督教大学パブリックリレーションズ・オフィス
太田 康寛 氏 国際基督教大学ITセンター
≪具体的なAWS活用方法≫
全世界に配置されたエッジロケーション上のAmazon CloudFrontを利用し、低レイテンシーで安全なコンテンツ配信を行っています。コンテンツをAmazon S3に配置することでコンテンツ管理システムの稼働を減らし、Webコンテンツ配信コストを低減しています。
【大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構における活用事例】
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(以下、KEK)から2つの活用事例を紹介します。
KEKは、日本の加速器科学の総合的発展の国際的な拠点として、国内外の研究者が最先端の研究施設等を用いた共同利用・共同研究を実施しています。また、総合研究大学院大学の基盤機関として、大学との連携・協力により大学院学生を受け入れ、加速器科学関連分野の人材を育成しています。
≪大強度陽子加速器内における陽子のふるまいを可視化するシミュレーションでAWSを利用≫
KEKの有する大強度陽子加速器内における陽子のふるまいを可視化するシミュレーションをAWS上で展開、高速処理することで計算時間を 10 分の 1 に短縮しました。
≪お客様の声≫
“シミュレーションの実行時間をこれまでの1/10に短縮することができ、さらに並列で複数の運転条件のシミュレーションを行えるようになったことで、大強度陽子加速器における陽子運動に関して理解がより進みました。特に、将来の大強度化において障壁となる現象も明らかになりつつあり、その対策も考えられるようになりました。
今後も、AWSの利用は大強度陽子加速器の性能向上に有効であると確信しています。”
栗本 佳典 氏 大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構 加速器研究施設 准教授
≪具体的なAWS活用方法≫
Amazon EC2のGPUインスタンス(P3インスタンス)を利用しシミュレーションの高速化と複数インスタンスによる並行処理を実施しています。シミュレーションデータはAmazon S3に格納し、AWS内でシミュレーションがクローズする環境を構築しています。
≪放射光ビームラインやクライオ電子顕微鏡から取得する膨大なデータの解析でAWSを利用≫
KEK物質構造科学研究所構造生物学研究センターでは、構造生物学研究の実験にかかわるデータ解析サービスの提供を AWS の HPC 技術をベースに実現し、測定装置の稼働スケジュールに合わせリソースを柔軟に活用してTCO抑制を実現しています。
≪お客様の声≫
“AWS への移行後、インフラに関するトラブルは一度も発生していません。保守運用まで自分一人で行っていたときにはトラブル対応に不安がありましたが、インフラから業務システムまで精通した APN パートナーにお任せできることのメリットを実感しています”
山田 悠介 氏 大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所
構造生物学研究センター/放射光科学第二研究系 助教
≪具体的な活用方法≫
Amazon EC2を利用しシミュレーションの高速化と複数インスタンスによる並行処理を実施しています。シミュレーションデータはAmazon S3に格納し、AWS内でシミュレーションがクローズする環境を構築しています。
ここまで、大学・研究機関におけるAWS活用事例を紹介しました。今回ご紹介した事例は2021年1月~3月にかけて作成したものです。
アマゾン ウェブ サービス ジャパン、パブリックセクター営業本部では今後も大学・研究機関のお客様事例を作成、公開をしていきます。お客様の活用事例がAWSに関心を持たれているみなさまのお役に立つことを願っております。
【Learn More】
AWSブログ
“Education transforming like never before”(2021年4月13日 英文のみ)
“AWS Diagnostic Development Initiative helps nonprofits harness the cloud to research and combat COVID-19“(2021年4月12日 英文のみ)
“学術情報ネットワークSINETクラウド接続サービスでのAWS利用でSINET大阪DC経由も選択可能となりました”(2020年9月1日)
“学術研究機関でのSINET5を経由したAWSの利用”(2019年6月19日)
“事例から学ぶAWS Educateの授業での活用法”(2019年6月19日)
AWSホームページ
AWS in Education 助成プログラム:AWS では、お客様が研究活動や教育活動をクラウドに移行し、より速く、より低いコストでイノベーションを生み出せるようにするために 2 つのプログラムを用意しています。
COVID-19 の研究と開発のための AWS での HPC:COVID-19 HPC コンソーシアムの一部として、AWS は新型コロナウイルス (COVID-19) の診断、治療、およびワクチン研究を推進して包括的な理解を加速化するために、AWS のサービスの使用に対するテクニカルサポートとプロモーションクレジットを研究機関および企業に提供しています。
【日本の高等教育機関および研究機関向け お問合せ窓口】
AWSのご相談全般に関しては「aws-jpps-er@amazon.com」までご連絡ください。
SINETクラウド接続サービスでのAWS利用に関する申請は「sinet@amazon.com」までご連絡ください。
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このブログは、アマゾンウェブサービスジャパン株式会社 パブリックセクター営業本部
アカウントエグゼクティブの田代 皓嗣が執筆しました。