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シドニー工科大学が生体医療用ロボットと AWS IoT で脳卒中リハビリを変革する方法

この記事は Nils De Vriesによって投稿された How the University of Technology Sydney is transforming stroke rehabilitation with biomedical robots and AWS IoT を翻訳したものです。

はじめに

本ブログでは、シドニー工科大学(UTS)が、バイオメディカル工学とロボティクス、そして AWS Internet of Things(IoT)などの AWS ソリューションを用いて、脳卒中患者の家庭環境でのリハビリテーションにおけるチャレンジにどのように取り組んだのかを紹介します。

オーストラリア脳科学財団法人によると、脳卒中はオーストラリアで 3 番目に多い死因であり、身体障害の主要な原因となっています。脳卒中は、血栓や血管の破れによって脳への血液供給が絶たれることで起こります。

リハビリテーションは、脳卒中になった人が、脳の一部がダメージを受けたときに失われた能力を再び身につけるのを助けます。リハビリの目標は、言語能力、認知能力、運動能力、感覚能力の向上や回復です。

ほとんどの患者さんのリハビリテーション・プログラムは、入院、外来、または設備の整った看護施設で実施されています。これらの方法は費用が高く、自宅で行うことはできず、また長距離の移動が必要なこともあります。

家庭環境でのリハビリテーションは、施設でのプログラムの問題をいくつか解決しますが、高価で特殊な機器の必要性、リアルタイムのモニタリングやセラピストの即時フィードバックができないなど、他の課題があるのが現状です。

UTS のバイオメディカル工学部の学生は、家庭環境でのリハビリテーションの課題を克服するために、ロボティクスとクラウド技術を活用することにしました。彼らの目標は、リアルタイムの遠隔監視とフィードバック機能を備えた治療用動作トレーニングを低コストで提供することでした。

ロボット外骨格アーム「 Franky 」による在宅リハビリテーションの改善

UTS のソリューションは、UTS – ProtoSpace でプリントされた171個のカーボン強化ピースでできたロボット外骨格アーム「 Franky 」です。Franky は、ワイヤレス通信機能を備えたタッチスクリーンインターフェースと接続された多数のセンサーによって構成されます。

Franky は外骨格として装着され、患者の治療動作を物理的に支援します。患者は、リハビリの専門家がその場にいなくても、Franky を使用することができます。外骨格のセンサーは、脳の電気信号を測定することで患者の動きを読み取ります。そして、そのデータをリハビリテーションの専門家に伝え、専門家がリアルタイムでフィードバックします。

患者が正しく運動をしていない場合には Franky はそれを検知し、正しい動きを行う方法を示します。

このプログラムの最高技術責任者である Kairui Guo は、「私たちは、約 100 種類の異なる入力を受信し、それを機械学習によって処理することのできる産業レベルの通信インターフェースを使用しています」と述べています。

Franky が動作する様子

バイオメディカル工学チームは、高性能なエッジコンピューティングを低コストで実現できるという理由から、Franky の制御に Raspberry Pi を採用しました。AWS IoT Core を利用して Raspberry Pi をクラウドに接続し、患者の運動に合わせてほぼリアルタイムのデータを収集し、Amazon Simple Storage Services (S3) に情報を送信します。データの読み込みには、ストリーミングデータを S3 に読み込むためのシンプルで信頼性の高い方法である Amazon Kinesis Data Firehose を使用します。

Franky の映像をもっとご覧になりたい方は、こちらのビデオをご覧ください。– https://youtu.be/IA0myITVreg

リハビリテーションの専門家が、患者がリハビリテーション中に生成するデータにアクセスするためには、高速な検索データベースが不可欠です。Amazon DynamoDB は、あらゆるスケールで1桁ミリ秒のパフォーマンスで、高速かつ柔軟な NoSQL データベースサービスを提供します。リハビリテーションの専門家は、S3 と Amazon CloudFront 上でホストされた低遅延のコンテンツ配信ウェブサイトを使用して、世界のどこからでも患者をモニターし、通信することができます。

以下の図は今回使用した AWS サービスのハイレベルオーバービューです。

まとめ

AWS IoT Core は、リモート管理メッセージ処理、コネクションリカバリー、シャドウによる状態管理を可能にします。最終的には、シンプルで安定したアーキテクチャにより、バイオメディカル工学チームは、脳卒中患者の回復時間を改善することのできる、家庭環境で利用可能な低コストの技術ソリューションを提供できるようになりました。

AWS IoT Core により、チームは IoT ソリューションの構築に時間とエンジニアリングリソースを費やす必要がなくなり、患者の予後改善に集中できるようになりました」と、このプログラムの最高技術責任者である Kairui Guo は述べています。

Franky は初期のトライアルにおいて、患者の移動時間の短縮、データ収集方法の改善、パンデミック時の患者との物理的な接触の回避など、AWS IoT を使用するメリットを示しています。

次のステップ

次の段階としては、Franky の臨床試験を実施し、家庭環境における有効性と採用可能性を評価する予定です。治験データは、患者の回復時間の改善と Franky の患者への普及度合いを測定するために分析される予定です。

2022 年には、バイオメディカル工学チームは、AWS IoT GreengrassAWS IoT Greengrass ML 推論 を取り入れる予定です。AWS IoT Greengrass によって、チームはクラウドで構築、学習、最適化された機械学習モデルを使用し、デバイス上でローカルに推論を実行できるようになります。AWS IoT Greengrass 上で実行される推論から収集されたデータは、Amazon SageMaker に再度送付され、タグ付けして機械学習モデルの品質を継続的に向上させるために使用することができます。

AWS IoT を利用したコネクテッドデバイスソリューションの構築について、詳しくはこちらを御覧ください。

著者について


Nils De Vries はアマゾン ウェブ サービスのソリューション アーキテクトです。オーストラリアの高等教育機関のお客様を担当し、AWS を使ったスケーラブルでセキュアなソリューションの構築のために、クラウド技術の導入を支援しています。余暇にはマウンテンバイクでアウトドアを楽しみ、家中のものを自動化することを目標としています。

この記事はプロフェッショナルサービス本部 IoT Consultant の小林が翻訳しました。