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日本国際工作機械見本市( JIMTOF 2022 )出展レポート

2022 年 11 月 8 日から13 日までの 6 日間、東京ビッグサイトで「JIMTOF 2022 第 31 回 日本国際工作機械見本市」が開催されました。 JIMTOF とは Japan International Machine Tool Fair の略称で、東京ビックサイトにて 2 年に一度開催される、工作機械に関する最先端の技術が集結する世界最大級の国際見本市です。前回はコロナ禍によりオンライン開催となったため、4年ぶりのリアル開催となりました。今回の JIMTOF にて、 AWS が一般社団法人 Edgecross コンソーシアム *1の会員企業としてデモを展示致しました。

Edgecross(エッジクロス)コンソーシアムとは

Edgecross コンソーシアムとは、工場内の FA (ファクトリーオートメーション)機器と IT システムの連携を推進する業界団体で、国内外のFAベンダーからITベンダー、その他含め、 380 以上( 2022 年 11 月現在)の組織が加盟しています。エッジコンピューティング領域のオープンなプラットフォーム「 Edgecross 」の進化と普及を通じて、 IoT と産業界全体の進展のために活動しています。下記は Edgecross ソフトウェアの概念図です。

一般的に生産現場では複数メーカーかつ新旧の様々な工作機械が稼働しており、それぞれの装置が CC-Link IE、 EtherCAT 、 EtherNet/IP 、 PROFINET 、 MTConnect などの異なる FA プロトコルを使用しています。真ん中の層に位置する Edgecross 基本ソフトウェアは各種 FA プロトコルのデータコレクタを持っており、生産現場の FA ネットワークに応じて適切なデータコレクタを選択することで、 FA プロトコルの違いを吸収することができます。それにより、工場内に散在する異なるメーカーの装置を束ねて、 IT システム層(上記概念図の一番上の層)に繋ぎ、工場全体の稼働状況の一元把握や、その他様々なデータ活用を行うことができるようになります。次に、実際に展示したデモの概要をご紹介します。

Edgecross (エッジクロス)コンソーシアム 展示ブース

Edgecross コンソーシアムの展示ブースでは、 22 社の会員企業様と協力して前述のコンセプトを体現したスマート工場ソリューションのデモを展示しました。各工作機械メーカー様の展示ブース内で稼働している機械のデータを、コンソーシアムブース内に設置されている Edgecross 対応産業用PCに収集し、 AWS のサービスを用いて生産台数や稼働率等の KPI をダッシュボード上でニアリアルタイムに可視化する、というものです。次に、コンソーシアム全体の展示の中で AWS が作成したデモをご紹介します。

AWSのデモ概要

以下の図はコンソーシアム全体の中での、 AWS のデモ構成です。

各種工作機械から取得された稼働データ(電源状態、アラーム、緊急停止、プログラム名、運転モード、生産数、サイクルタイム等)は、一度 Edgecross OPC-UA サーバーに収集されます。同じ産業用 PC にインストールされている AWS IoT Greengrass がゲートウェイとなり、 OPC-UA のデータを AWS IoT SiteWise に転送します。 SiteWise 内では工作機械の構成を模したアセットモデルが定義されており、転送されたデータを元に生産数や稼働率などの KPI の演算が行われます。その後二つの経路に別れ、一つは Amazon ECS 上に構築した Grafana ダッシュボードにより可視化されます。
もう一方の経路では、 AWS IoT Core がハブとなり、他ソシューションによる更なるデータ活用に繋げます。株式会社日立ソリューションズのBOP *2 ソリューションによる工程情報と実績情報の予実分析、また、ブレインズテクノロジー株式会社による機械学習を活用した予知保全など、サプライチェーンやエンジニアリングチェーンと合わせることで更なる付加価値に繋げるユースケースをご紹介しました。また、データを収集するだけではなく、逆にクラウド側から工場現場に対して制御信号を送るユースケースとして、AWS IoT Core が株式会社パトライトのMQTT対応信号灯をワイヤレスで点灯させるデモを展示いたしました。

稼働状況可視化ダッシュボード①

AWS IoT SiteWise で収集した各装置の稼働データをGrafanaダッシュボードにてニアリアルタイムに表示しています。画面に東京ビッグサイト内の展示ホールの地図を表示し、地図上の各工作機械メーカー様の展示ブースの位置に、丸印で稼働ステータスを表示します。
ダッシュボード下部に並んでいるメーターは、各工作機械メーカー様のデモで実際に加工した回数が表示されています。このように分散した場所に配置された工作機械の状況を横断的に把握出来る様にしています。

稼働状況可視化ダッシュボード②

さらに各社の企業名のボタンを押すと、そのメーカー様の工作機械の詳細画面にドリルダウンします。そこで時間単位での生産数や稼働率等の必要な KPI、また、装置のプログラムのバージョンアップ履歴等を確認することができます。

まとめ

Edgecross と AWS の IoT サービスを組み合わせることにより、異なる FA プロトコルを使用するエッジデバイスのデータを手軽にクラウドに送信、可視化、そして活用に繋ぐところまでを素早く実現できる点が、本デモのポイントです。

また、Edgecross以外を含むデバイス接続手段については、下記の記事をご覧下さい。

期間中JIMTOFには11万人以上の方が来場され、 Edgecross コンソーシアムのブースに累計千人以上の方がお越し下さいました。ブースにお越しいただいた皆様とは、「装置データをクラウドに置くことの価値」や、「実際に自社の工場に導入する際の課題」等をディスカッションさせていただきました。
AWS では日本国内に製造業を専門にしたチームを有し、 Smart Factory のワークロードで AWS クラウドを利用いただくご支援をしています。ご興味のある製造業のお客様は AWS までお問合せください

JIMTOF のイベントブース展示のご報告は以上となります。

*1 Edgecross の詳細は以下を参照ください
https://www.edgecross.org/ja/

*2 BOP:製造に必要な作業手順や工程表、作業指示書などで必要な情報を、製造プロセス情報、プロセスフローとして管理したBOM(部品表)の一形態。

著者について

新澤 雅治
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
IoT スペシャリスト ソリューションアーキテクト

製造業、 IT ベンダーを経て AWS に Join。現在は IoT スペシャリストソリューションアーキテクトとして、主に製造業のお客様の IoT 関連案件の支援に携わる。

渡邉 聡
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
プロトタイピングソリューションアーキテクト

Windows 向けプロダクト開発、家電向けクラウドプラットフォーム開発・運用を経て AWS に Join。現在は、 IoT の導入や PoC 段階のご支援を担当。主に製造系のお客様のご支援をメインに活動中。