Amazon Web Services ブログ

欧州委、WWF、スペイン政府。AWS Summit Brussels の模様をお届けします

今回のブログでは、 AWSジャパン・パブリックセクターより、「ヨーロッパ各国の行政機関が集中するブリュッセルでのAWS Summitの模様」をご紹介します。ご不明の点、「Contact Us」までお問合せください。(以下、AWS Public Sector Blog へ掲載された「What you missed at the AWS Summit Brussels keynote」と題された投稿の翻訳となります。)

2022年3月31日、ベルギーのブリュッセルにあるEggを会場に AWS Summit Brusselsが再開されました。この無料のカンファレンスでは、クラウドの知識を深め、クラウドによって世界中の組織やビジネスがどのように変化するかを学ぶために、公共部門と民間部門の、熱狂的なクラウドユーザー達が現地に集まりました。Amazon Web Services (AWS) ワールドワイド公共部門担当副社長の Max Peterson 氏は、本イベントの基調講演を行ったAWS ワールドワイド公共部門 欧州・中東・アフリカ (EMEA) セールス担当副社長の Isabella Groeger-Cechowicz 氏を紹介しました。Isabella 氏は、データのプライバシーと保護、持続可能性、ソーシャル・インパクトに関して献身的な取り組みを続ける AWS が、どのように各イニシアチブにおいてお客様をサポートしているか──について述べました。また、3名のお客様が登壇し、クラウドを利用してどのように各機関のミッションにインパクトを与えているか、そのストーリーを紹介してくれました。 AWS Summit Brusselsのキーノートで、皆さんが見逃しているかもしれない内容については、以下をご参照ください。

データ・セキュリティとその保護で
DXを促進

AWSはEMEA地域で成長を続けており、30カ国に54のオフィスを持ち、そのうちベネルクスにはブリュッセル、ハーグ、アムステルダム、ルクセンブルクなど4カ所の拠点、さらに地域内の10カ国に15のAmazon Development Centers を構えています。「私たちは欧州のイノベーションと経済成長に貢献しており、セキュリティと信頼こそが、その土台であることを理解しています」──と、Max は述べています。

AWSは、米国のハイパー スケール クラウド プロバイダー(CSP)として唯一、Infrastructure as a Service Code of Conduct on switching cloud provider and porting data(SWIPO)の遵守を宣言しています。また、AWSは次世代データインフラの標準を定義する GAIA-X 構想をサポートしました。

最近では、AWSは、一般データ保護規則(GDPR)の追加的な要求項目を満たすするために、欧州のクラウドインフラストラクチャサービスプロバイダ(CISPE)のデータ保護行動規範に準拠しているサービスを発表しました。「クラウドを利用したモダナイゼーションと同時に、クラウドも常にモダナイズされています」とイザベラは述べています。

デジタル脅威の新時代に対応したレジリエンス(強靭さ)を身につけるお客様

バーレーン政府は、効率的かつ高度なサービスを通じて国民の生活の質を高めてゆくため、クラウド ネイティブ ポリシーの導入とその実施において、成功し続けています。行政機関の業務の、実に70%以上をクラウドに移行し、100%クラウドでホスティングすることを目標に掲げ、世界初のクラウド ネイティブ カントリーに移行しようとしています。

AWS のお客様は、クラウドをデジタル トランスフォーメーションへの第一歩と捉えています。欧州委員会のクラウド カウンシル議長である Philippe Merle 氏が登壇し、欧州委員会のデジタル変革戦略において、AWS とクラウドがいかに重要な位置を占めているか──を紹介してくれました。Philippe 氏によると、欧州委員会は7年前に初めてクラウド・ジャーニーを始め、現在ではEUの全機関の中で最大のクラウド ブローカー(cloud broker、訳注:クラウドコンピューティングサービスの購入者とそのサービスの売り手の間を取り持つ第三者)となっているとのことです。Philippe 氏は、クラウドアーキテクチャから最大限の効率性を引き出すために、マネージドサービスとしてのサーバーレス技術の重要性についても語りました。「サーバーレスにより、アプリのコードを80%、場合によっては95%まで削減することができます。これは非常に大きなことです。私たち行政機関にとってそれは、  コードの削減=メンテナンスの軽減=コストの削減──です”。Philippe 氏のチームは、他の機関のクラウド導入の妨げとなるブロッカーを取り除き、クラウド・ジャーニー実現するための先導的な取り組みを行っています。「文化的な変革が、鍵です」──と彼は言います。

安全で保護された基盤でモダナイゼーションを実施したお客様は、市民と直接かつ効率的に関わる機会を増やすことができます。ドイツのハイデルベルク市は、AWS Smart Territory Framework を使用して、モノのインターネット(IoT)データを使用したスマートシティプラットフォームを展開・運用しました。ハイデルベルク市は、1週間足らずで、それまでの既存のサービスを統合し、新しいデータ スペースを作成するための基盤を速やかに構築することができました。現在、彼らのモダナイゼーション・ジャーニーは、市民のデータを保護しながら、都市のデータ文化を革新し、構築してゆくことを可能にしています。

AWS によるサステナビリティへの道筋の革新

Amazon は2019年に The Climate Pledge を共同設立し、パリ協定より10年前倒しの2040年までに事業全体でネット・ゼロ・カーボンとなることを公約に掲げています。AWS を利用することで、各地域の公共機関のお客様は、クラウドを利用することでサステナビリティ目標の達成を加速することができます。

2021年、AWSは欧州の他企業と共同で「Climate Neutral Data Center Pact」を策定しました。これは、私たちの設備の設計と製造を通じて、エネルギー効率を高めていくことを意味します。例えばアイルランドでは、AWSはサーバーの冷却に主に外気を利用することで冷却システムを使用しています。つまり、1年のうち95%の期間において、AWS はアイルランドのデータセンターの冷却に水を使用していないことになるのです。

また、AWSは英国、スウェーデン、スペインに風力発電所と太陽光発電所を建設し、欧州の多くの地域の電力供給に貢献しています。調査によると、ヨーロッパでは AWS のインフラは5倍のエネルギー効率を持ち、AWS のシステムはオンプレミスのデータセンターよりも88%低いカーボンフットプリントで同じタスクを実行できることが分かっています。AWSは、当初の目標よりも5年早く、2025年までに100%再生可能エネルギーでオペレーションを行うことを約束しています。

AWSカスタマー・カーボン・フットプリント・ツールは、
持続可能な目標に向けた戦略立案を支援

3月、AWSは「AWSカスタマー・カーボンフットプリント・ツール」をリリースしました。このツールは、大小さまざまな規模のお客様の機関が、二酸化炭素排出量を監視・分析・削減できるようにするものです。お客様は、より正確に二酸化炭素の削減目標を設定し、AWSの使用に伴う排出量を測定することで、より良い戦略の策定と排出量削減のためのより良い行動を取ることができます。

各国行政機関はAIとMLでデータを活用し、
環境とコミュニティを守る

“私たちは模範を示すことでリードしたいと思い、お客様のサステナビリティ・ジャーニーをサポートしたいと思っていますが、お客様の各機関がクラウドテクノロジーを使って予測し、行動を起こし、被害を防ぐために素晴らしい仕事をしているケースも多数見ています “──とイザベラは述べています。その一例がスペイン政府で、AWSの人工知能(AI)および機械学習(ML)サービスを利用して「山火事」を予測するツールを作成しました。これにより、政府は山火事の予防を支援するとともに、消火活動に適切な量のリソースを割り当てることもできるようになりました。

注目の顧客登壇スピーカーである世界自然保護基金(WWF)オランダの最高経営責任者(CEO)Kirsten Schuijt 氏は、森林破壊を防ぐための「早期警告システム」Forest Foresight を AWSを活用してどのように運用しているか──について紹介してくれました。WWFは60年の歴史を通じて、最大の自然保護団体となり、現在では破壊的な脅威から生態系や景観を守ることに注力しています。Forest Foresight は、衛星画像と Amazon SageMaker を利用した AI の利用により、森林破壊の脅威を早期に特定し、まだ行動に移す時間があるうちに、重要なステークホルダーに証拠と情報を提供するものです。彼らはまずガボン共和国[訳注:中部アフリカに位置する共和制国家]でForest Foresight を試験的に導入し、その予測によりリアルタイムで違法な金採掘を発見し、かつ、ガボンの熱帯雨林30ヘクタールを違法伐採から救った──という事例も登場しています。現在、彼らは政府と協力してこのシステムを全国的に展開し、さらに重要なことに、これらの脆弱な地域の周辺に住む地域社会とリーダーがこの技術を民主化し、広く利用できるようにしていくという目標に向けて歩みを進めています。

社会的責任の拡大を支援するトレーニング

クラウド ソリューションで地域社会のためにイノベーションを起こしてゆく各公共機関には、熟練した「クラウド人材」が必要です。ヨーロッパの公共セクターでは、70%の組織が、パンデミックの影響もあり、市民にデジタルサービスを提供するためにクラウドへの移行を加速していると回答しています。しかし同時に、63%は必要なスキルや経験が不足している──とも回答しているのです。

AWS、学習機会を拡大する新しい教育プログラムを開始

今月、AWS は、クラウドの基礎的なスキルを身につけるための、2つの無償トレーニングイニシアチブを発表しました。1つ目は、「AWS Cloud Quest クラウド・プラクティショナー」です。これは、ゲームベースのロールプレイングで、まだキャリアが浅い方やクラウド初心者の方に最適な内容となっており、仮想都市でのチャレンジを通して、クラウド コンピューティングの基本概念を学ぶことができます。2つ目は、「AWS Educate の新規改良バージョン」です。このアップデートでは、インタラクティブなコンテンツが追加され、さらに多くの言語を通じてより広く利用できるようになりました。AWS Educate は、世界各地のお客様や市民をサポートするために、英語・フランス語・ドイツ語・ポルトガル語・スペイン語など各国の言語でこのトレーニングを提供しています。これらのプログラムの詳細については、こちらをご覧ください。

オランダの新しい AWS Cloud Labs は、地域のイノベーションを育む

また、AWS はオランダにおける AWS クラウドラボ (Cloud Labs) の立ち上げを発表しました。オランダの Haarlem にある AWS Cloud Lab は、CupolaXS イノベーションセンター内にあり、中小企業へのデジタルサポートを提供しています。CupolaXS は、国際的な企業や地元企業を一箇所に集め、テクノロジーを使ってビジネスを変革し、成長させるために必要なリソースを提供しています。このコラボレーションについて詳しくはこちらをご覧ください。

Startup にとってはトレーニングが成功の鍵

スタートアップ企業である Showpad社 のチーフアーキテクト兼データ部門長である Jeroen Minnaert 氏がイザベラのキーノートのなかで登壇し、スタートアップがどのようにクラウド トレーニングと認証資格取得のカルチャーを醸成しているか、その取組を紹介してくれました。Showpad社は、パーソナライズされたトレーニング・コンテンツを提供することで、現代型の営業を行うチームを強化し、最高の営業体験を実現しようとしています。彼らは2015年に AWS へのリフト&シフトを行い、クラウド・ジャーニーを開始しました。2020年までには、クラウドを完全に取り入れ、サーバーレス技術を倍増させ、インフラ管理の重労働を取り除き、より多くの “イノベーションのための頭脳労働の余力 “をエンドユーザー向けに提供できるようになりました。80以上の AWS サービスを使用しているだけでなく、Showpad社 は Immersion Days を開催して AWS の協力を得ながら、強力な AWS 認定取得を動機付けるカルチャーを社内に涵養することで、さらにクラウドを受け入れる取り組みを続けています。Showpad社 のチームは73以上の認定資格をすでに取得しており、今後さらに、80以上ものAWS 認定資格取得数が増加するものと予測されています。

「私は、お客様やパートナー様がリードしている取り組みに常に刺激を受けていますし、得られた勢いを利用してイノベーションを推進し続けるために、減速すべきでないのは明らかです。新しい道を切り開き、境界を押し広げるために行っているすべてのことに、改めて感謝します。この先には多くのチャンスが待っています。」──このように述べ、登壇は締めくくられました。

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AWS Summit Brusselsの基調講演を「オンデマンドで視聴」することができます。

また、公共機関向けのコンテンツについてもっと知りたい場合にはぜひ、2022年5月下旬にワシントンDCで開催されるAWS Summitに「ご登録」ください。

日本の公共部門の皆様へのご案内

AWSでは、政府・公共部門、パブリックセクターの皆さまの各組織におけるミッション達成が早期に実現するよう、継続して支援して参ります。

今後ともAWS 公共部門ブログで AWS の最新ニュース・公共事例をフォローいただき、併せまして、国内外の公共部門の皆さまとの取り組みを多数紹介した過去のブログ投稿に関しても、ぜひご覧いただければ幸いです。「クラウド×公共調達」の各フェーズでお悩みの際には、お客様・パートナー各社様向けの相談の時間帯を随時設けておりますので、ぜひAWSまでご相談くださいContact Us)。

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このブログは英文での原文ブログを参照し、アマゾンウェブサービスジャパン合同会社 パブリックセクター 統括本部長補佐(公共調達渉外担当)の小木郁夫が翻訳・執筆しました。

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小木 郁夫
AWSジャパン パブリックセクター
統括本部長 補佐(公共調達渉外)
BD Capture Manager
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#AWSCultureChamp (2021年7月~)