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【開催報告】データ活用による製造業のトランスフォーメーション セミナー
こんにちは!アマゾンウェブサービスジャパン合同会社で製造業のお客様を支援しているシニア事業開発マネージャーの川又です。
2024 年 3 月 14 日に製造業向けオンラインセミナー「データ活用による製造業のトランスフォーメーション」を開催いたしました。セミナーの開催報告として、ご紹介した内容や、当日の資料・収録動画などを公開いたします。
はじめに
今回のセミナーは、製造業の皆様や、製造業のお客様を持つパートナーの皆様から、よくご要望をいただく、「製造業におけるデータ活用やお客様での事例」を単にプレゼンテーションでご紹介するだけではなく、実際に視聴者の皆さまにより具体的にイメージを持っていただけるようデモも交えながらお伝えさせていただきました。それぞれのセッションの内容を本ブログと動画でお届けいたします。
オープニングセッション:製造業におけるデータジャーニーとベストプラクティス
登壇者: AWS エンタープライズ技術本部 ハイテク・製造・自動車産業グループ 製造第一ソリューション部・部長 河村 聖悟
私達の暮らしの中では、天気や交通状況など、日常生活の様々な場面でデータに基づいた判断が行われています。製造現場においてもデータの力を活用できれば、生産効率・最適化など多くのメリットがありますが、現場には課題が山積みです。デジタル化されていない情報が多数存在して、可視化は部分的であり、オペレーションが分断されているなどの課題が挙げられます。課題対策の指針として「製造業におけるデータジャーニー」というロードマップをご紹介します。
製造業におけるデータジャーニー
「製造業におけるデータジャーニー」は、データ運用の成熟度によって4つのエリアに分かれています。エリア1は「局所的なリアルタイムの可視化」、エリア2は「全社的な可視性」、エリア3は「予測的オペレーション」、エリア4は「コスト最適化オペレーション」です。必ずしもすべてのエリアを順番に進む必要はなく、現在の成熟度から次のステップを知ることが重要です。
エリア1:局所的なリアルタイムの可視化
エリア 1「局所的なリアルタイムの可視性」では、パイロット施設や重要要素を特定し、優先ワークロードにソリューションやダッシュボードを導入します。既存設備からデータを取り出すことが重要で、現場ノウハウから生産管理者への情報伝達を円滑にします。大きな投資は不要ですが、全体最適化を見据えたロードマップを意識しつつ、将来的な展開を見越した取り組みが求められます。
エリア2:全社的な可視性
エリア 2「全社的な可視性」では、全社的なデータレイク戦略の構築が求められます。企業全体のデータレイクと OT / IT 接続戦略が必要不可欠です。リアルタイムなデータは、意味のあるコンテキストを持った状態での可視化が分析に必要であり、優先順位を付けたユースケースについて、丁寧に複数の場所で段階的に実施していくことが重要です。現場にとってインセンティブが少ないため、中期的な視点で各現場・部門との調整を行い、PoC を実施して小さな成功体験を積み重ねていく必要があります。
エリア3:予測的オペレーション
エリア 3「予測的オペレーション」では、アナリティクスや AI、機械学習を活用して工場の財務計画や生産能力計画でリソースの最適化を図ります。過去のデータだけでなく、仮説に基づいた予測を行う仕組みが必要不可欠です。標準のモデルなどを活用した予測データ・グラフから新たな気づきを得ることで、これまでにない観点や改善や、判定条件を設ける事で機械同士の連携や自動化が可能になり、フィードバックループを作り出せます。現場では手戻りや重複作業の削減、多品種少量生産への対応など、エリア3のメリットを享受できるようになります。
エリア4:コスト最適化オペレーション
エリア 4「コスト最適化オペレーション」では、企業がビジネスプロセス全体を最適化する能力を獲得します。アナリティクスに基づく最適化がモデルと意思決定プロセスに統合されることで、真のコスト削減と、統一されたインターフェイスにより工場・工程を横断した全体最適化が実現できます。設計・デザイン・スマートファクトリー・スマートプロダクトがデータでつながり、製品やプロセスの継続的な改善につながります。エリア4に至るには、企業全体のデータ統合と、新しいデータ駆動型の企業運営モデルへの関係者全員のコミットメントが必須条件となります。
モダンデータ戦略の成功要因としての3本の柱
製造におけるデータジャーニーを支える大切な3つの柱をご紹介します。1 つ目は「マインドセット」の柱です。データドリブンなカルチャーを取り入れてデータ活用を進めるためには、意識改革が不可欠であり、経営層からの強いコミットメントが求められます。2 つ目は「人材とプロセス」の柱です。イノベーションを最も促進できる組織構造・役割・プロセスを定義してコミュニケーションを密にし、データ活用の舞台・教育体制を提供することを指します。最後に「テクノロジー」の柱があります。パフォーマンス、費用対効果、安全性、スケーラビリティに優れた、クラウドデータアーキテクチャの活用に代表されます。これら 3 つの柱が、データ活用を企業文化に根付かせる鍵となります。
製造業における AWS の幅広いケイパビリティ
講演の中では、製造業のデータジャーニーを力強くサポートする AWS の幅広いサービスとケイパビリティをご紹介しました。AWS は、工場のエッジ、オンプレミス、既存システムとの連携を強くサポートします。エッジでは、エンドツーエンドのセキュリティ、開発、デプロイ、管理の機能を提供します。様々なデータフォーマット・転送形式に対応したデータ収集機能や、柔軟なデータレイクのインフラ、データ管理に関するセキュリティ、アクセス権限管理機能を提供しています。目的別のデータベース、豊富な分析手段、機械学習のツール、リアルタイム分析の可視化機能が、データジャーニーのジャンプスタートを可能にします。
製造におけるデータジャーニーでは誰もが主役
データジャーニーを推進するには、経営層、生産管理者、現場の全ての関係者がコミットし、同じ歩幅でなくとも、同じ方向を向いて小さな一歩を踏み出す必要があることをお伝えしました。完全なデータ利活用は一朝一夕にはできませんが、クラウドの力を借りてすぐに開始可能であり、製造業のデータ活用の可能性を身近に感じていただけたら嬉しいです。AWS は、お客様とともに製造業のデータジャーニーを歩んでいく所存です。
ここからは、製造業におけるデータジャーニーのいくつかのエリアについて、詳細な説明やデモをご紹介します。
デモ1:業務改善につながる生産関連データ活用
登壇者: AWS ソリューションアーキテクト 山田 航司
このセッションでは、データジャーニーのフェーズ1「ローカライズされたリアルタイムの可視性」における、既存の設備からデータを取り出す方法がイメージできるように、ミニチュアスマートファクトリーデモをご覧いただきました。スマートファクトリーデモでは、受注に応じた加工を施して出荷する 「多品種少量の受注生産品」の生産ストーリーを設定しました。
このような複雑化したオペレーションに生じやすい課題として、「人手に頼った生産によりヒューマンエラーが起こりやすくなる」や「生産の不安定化」といった課題が挙げられます。対応策として、設備装置から発生するデータを AWS IoT SiteWise や AWS IoT Core に集め、生産稼働状況をニアリアルタイムで可視化することで、異常やイレギュラーが発生してからアクションに移るまでの時間を短縮し、稼働率を高める方法をご説明しました。
既存設備を新しい機能をもった設備に入れ替える必要はなく、PLC などまずはできるところから可視化していくが重要であり、ミニチュア工場の中のどの部分が既存設備にあたるかや、AWS IoT Greengrass をインストールした産業用 PC を新規で設置すれば生産データ活用のためにクラウドにデータを送れるようになることをビジュアルで解説しました。
デモ2:予測的オペレーションを実現する AWS Supply Chain
登壇者: AWS ソリューションアーキテクト 水野 貴博
このセッションでは、サプライチェーン領域においてデータジャーニーのフェーズ3「予測的オペレーション」を実現する AWS Supply Chain をご紹介しました。サプライチェーンの領域では、エンタープライズリソースプランニング (ERP)、倉庫管理システム (WMS)、注文管理システム (OMS)、輸送管理システム (TMS) など、システムがサイロ化されているケースが多く、サプライチェーンのデータを統合し、エンドツーエンドのプロセスの可視化を実現し、予測的なオペレーションを実現することが難しいとされてきました。AWS Supply Chain は、サプライチェーンデータレイクによる統合データ管理を提供し、既存のプロセスを最適化することができます。統合されたデータを活用し、予測精度の向上、過剰在庫の削減、サイクルタイムの短縮を可能にします。
AWS Supply Chain の「データ取込み」「在庫可視化」「デマンドプランニング」そして、2024 年にリリースされたばかりの「サプライプランニング」「N – Tier 可視化」について、デモを交えてご紹介しました。最後に 2024 年後半リリース予定の生成 AI アシスタント「Amazon Q」をご紹介しました。自然言語インターフェースによるサプライチェーンデータに対して「何が」「なぜ」「もし~だったら」という問い合わせを行う様子をご覧頂きました。
デモ3:クラウドネイティブ BI Amazon QuickSight
登壇者: AWS ソリューションアーキテクト 岩根 義忠
このセッションでは、データジャーニーのフェーズ2「全社的な可視性」に至ることの価値と、その一例としてのデモをご覧いただきました。データドリブンな意思決定を一貫した KPI に基づいて素早く行えるようになると、意思決定サイクルが組織の各階層で頻繁になり、結果として組織・工場のアジリティを高めることができます。
こうしたアジリティを高めるための、一貫した KPI に基づくデータドリブンな意思決定の一例として、Amazon QuickSight を用いた製造ダッシュボードのデモをご紹介しました。また、BI ツールによる可視化や分析レポートのために必要とされる専門知識のハードルを下げ、「データ分析の民主化」を成し遂げるために、自然言語による直感的なダッシュボード作成や、ダッシュボードから得られる洞察を自然言語でレポート化できる Amazon Q in QuickSight (Preview) によるダッシュボード作成とレポート作成のデモをご紹介しました。
部門や工程の壁を超えたクラウドへのデータ集約と、強力な可視化ツール、生成AIの組み合わせにより、「現場に可視化のパワーを与える」ことが可能となり、さらに次の段階の「予測的オペレーション」に向け、改善活動の志向が全体最適に向かうことが期待されます。
終わりに
本セミナーでは、 製造業におけるデータジャーニーとベストプラクティスをご紹介するプレゼンテーションから、工場の可視化‐複数工場の現在の稼働状況を遠隔地から把握するデモ、サプライチェーンに関わるデータ活用とデモ、製造現場のデータ活用における思想設計やユースケース設定に立ち戻ったデータ活用推進のアイディアやデモや AWS の提供する新機能活用などを通して、AWS がご支援する製造業におけるデータ活用を紹介しました。
本ブログは、事業開発マネージャーの川又俊一、ソリューションアーキテクトの 河村聖悟、山田航司、水野貴博 、岩根義忠が執筆しました。