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【開催報告 & 資料公開】 AI/ML@Tokyo #8 エンタープライズにおけるDXとAI/ML 開催報告

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 機械学習ソリューションアーキテクトの伊藤です。AWS Japan では、AI/ML 関連情報を発信するイベント「AWS AI/ML@Tokyo」を定期的に開催しています。2020年11月26日にオンラインで開催された AWS AI/ML@Tokyo #8では、AWSのAI/ML事業開発シニアスペシャリストより、エンタープライズ企業におけるAI/機械学習プロジェクトの進め方をご紹介し、ソリューションアーキテクトより、手軽に導入できるAIサービスを活用した実際のユースケースを紹介しました。また、お客様活用事例として、株式会社 JAL インフォテック様、三菱UFJインフォメーションテクノロジー株式会社様 よりAIサービスや Amazon SageMaker を活用したDX事例をお話しいただきました。

「エンタープライズにおけるAI/機械学習の活用のための道標」[Slides]

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社
AI/ML事業本部 シニアスペシャリスト 帆足 啓一郎

本セッションでは、AI/MLを自社のDXに活用したいとお考えのお客様向けに、どのような課題や検討ポイントがあるか、課題解決に向けたAWSの支援プログラム ML Discovery Workshopのご紹介をいたしました。
はじめに、デジタルトランスフォーメーションの本質は自社が提供する商品やサービス、自社そのものを変革することであることを確認し、デジタルフォーメーションの段階として、既存業務をデジタルに置き換える「デジタイゼーション」、デジタルでビジネスを拡張していく「デジタリゼーション」、ビジネスモデルの変革を根本的に行う「デジタルトランスフォーメーション」があり、AmazonのEコマースもこの段階に従ってビジネスを拡大してきたことをご説明しました。爆発的に増加するデータの中からいかに価値や洞察を導き出すかが重要であり、そのためにAI/MLがキーとなる技術であることを説明しました。自社の差別化要素を見い出すためには課題設定がキモであり、ビジネスバリューがある課題かつ機械学習で解ける問題をうまく見い出すことが重要であることを説明しました。この見極めをするために理解すべきである「機械学習で解ける(解くべき)課題」と、「ビジネスバリューのある課題」の例を説明しました。また、多くのお客様が社内の人材育成に課題感を感じていることもご紹介しました。
後半では、AI/MLで解くべき自社課題の見極めや、社内人材育成などの課題をお持ちのお客様向けに、各フェーズに対応したAWSのAI/ML活用支援プログラムをご紹介いたしました。そもそも課題が明確かどうか不明なお客様に対しては、Digital Innovation Program(DIP) や、Innovation Advisoryサービスなど、AI/MLで解決すべきかわからないお客様に対しては ML Discovery Workshopを、自社内で実装が難しいお客様には ML Solutions LabやML ProServeによる支援や、ML SA Prototypingなどのサービスがあることをご説明いたしました。最後にML Discovery Workshopの事例として、CAPCOM様で実施した活動をご紹介させていただきました。

「エンタープライズにおける顧客サービス、業務改善でのAI/MLのソリューション」[Slides]

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社
ソリューションアーキテクト 伊藤 芳幸

本セッションでは、AI/MLがデジタルトランスフォーメーションに不可欠とされている背景を整理し、「顧客体験の向上」、「ビジネス判断の迅速・高度化」、「安定した仕組みの構築」にフォーカスして、AI/MLの活用事例を具体的なアーキテクチャとともにご紹介しました。
「顧客体験の向上」の事例としては、お客様ごとのクーポン配信、宿泊施設のレコメンド、コールセンターでの会話分析、無人販売体験を提供、というソリューションを紹介させていただき、その中で活用してるサービスとしてカスタマー個別のレコメンドを生成する Amazon Personalize、音声をテキストに変換する Amazon Transcribe、テキスト処理のソリューションとして Amazon TranslateAmazon Comprehend の特徴をご紹介させていただきました。また、AIサービスの利点として、データを準備すればGUI操作でAI機能が利用できるお手軽さについて説明いたしました。「ビジネス判断の迅速・高度化」の事例としては、サービス解約予知、マスク着用チェック、遠隔接客+感情分析、ブランドイメージ観測、というソリューションを紹介させていただき、画像と動画分析のAIサービスである Amazon Rekognition をご紹介させていただきました。最後に「安定した仕組みの構築」の事例として、センサーデータからの予防保守、サプライチェーンの温度管理、レストランの混雑緩和、クレンリネス、というソリューションを紹介させていただきました。AWSのサービスを組み合わせることで、様々なビジネス課題に応じたアーキテクチャを構成することが実感いただけたのではないでしょうか。
まとめとして、具体的なアーキテクチャを検討する一方で、まずはビジネスの課題解決に向けた試行錯誤を行うために、データを準備するだけで利用できるAIサービスをまずは使ってみることをご提案させていただきました。また、AI/MLを本番システムで運用していくための考え方の参考として、AWSにおけるMLOpsの参考リンク、Amazon SageMaker を使用したセキュリティおよび機械学習のガバナンスプラクティスの概要の資料をご紹介させていただきました。

「WebカメラとAmazon Rekognitionを用いた空港混雑度の可視化事例」[Slides]

株式会社 JAL インフォテック
エンジニア
樋口 寛之 様

株式会社JALインフォテックは、JALのDX推進のために最新技術を検証したり、実際にサービスとして開発を行っています。また、最近では一般企業向けにもサービス展開を検討するなど、新しい挑戦を積極的にしています。DX推進の組織としては、Scratchでサービス開発を行うチーム、RPA活用を推進するチーム、PaaS活用を推進するチームで構成されています。今回は、現場の声が起点となり、空港混雑度の可視化をするためのAIソリューションを開発したという、ボトムアップで実現したDX事例をご紹介いただきました。きっかけとしては、ミーティングにてJAL担当者から「コロナ禍なので、混雑度が自動的にわかるものはないかな?」という悩みを聞き、AWSのAIサービスである Amazon Rekognition で技術検証を行い、システム概要のアーキテクチャを作成、コスト概算を見積もったことに加え、後にリスクとなりそうなセキュリティとプライバシー保護を事前に調査しておいたという経緯をご説明いただきました。技術検討の結果を報告し、JALの各部門に紹介してもらったところ、空港部門から「空港で利用したいが、どのくらいの期間で構築できそうか?」と質問があり、既存のWebカメラを活用すれば、AWS Lambda 2つ、画面1つ、AWSの設定を2名の開発者(AWS初心者)で2週間で構築できると見積もり、実際に2週間で構築することができたとのことでした。構築した Amazon Rekognition による混雑度可視化ソリューションは、実際に羽田空港でお客さまに対しサイネージを利用して混雑度を3段階で表示し、空いているカウンターや保安検査場へ誘導し、安心・安全に空港をご利用いただきたい思いがあったとのことです。PoCでの工夫点として、Amazon Rekognition で画像内の人が多くなる場合にうまく検出できなかった点があったが、アプリケーション側で処理の工夫をすることで、多数の人が写っていても精度よく検知できるようになったと解説いただきました。まとめとして、今回のボトムアップDXが成功した事例として3点「低コスト、スピード感、初期消化」、「業務側との綿密な連携、コミュニケーション」、「AIサービスをうまく活用したこと」を挙げられておりました。
今後は、この混雑度データをインプットに、Amazon Forecast を利用して、混雑予測を消費者に提供するなど、さらなる取り組みを進めていきたい、コロナ禍の投資困難な状況でも、JALグループとして対応必須な案件は効率的に進めていくとのことです。

まとめ

今回は AWSにおけるDX推進のための支援サービスのご紹介と、AIサービスを活用した具体的ユースケースとアーキテクチャをご紹介し、お客様からDX事例についてもお話いただきました。次回のAWS AI/ML@Tokyoは、12/17の開催を予定しています。お申し込み こちら から。
2019年に開催した「Amazon SageMaker事例祭り」、2020年からスタートした「AWS AI/ML@Tokyo」の開催報告と登壇スライドは、以下のリンクからご覧いただけます。

第1回 Amazon SageMaker 事例祭り 2019年1月15日 [Web]
第2回 Amazon SageMaker 事例祭り 2019年2月12日 [Blog]
第3回 Amazon SageMaker 事例祭り 2019年3月12日 [Blog]
第4回 Amazon SageMaker 事例祭り 2019年4月24日 [Blog]
第5回 Amazon SageMaker 事例祭り 2019年5月21日 [Blog]
第6回 Amazon SageMaker 事例祭り 2019年7月18日 [Blog]
第7回 Amazon SageMaker 事例祭り 2019年8月29日 [Blog]
第8回 Amazon SageMaker 事例祭り 2019年9月19日 [Blog]
第9回 Amazon SageMaker 事例祭り 2019年10月30日 [Blog]
第10回 Amazon SageMaker 事例祭り 2019年11月28日 [Blog]
第1回 AWS AI/ML@Tokyo #1 2020年2月6日 [Blog]
第2回 AWS AI/ML@Tokyo #2 2020年2月27日 [Blog]
第3回 AWS AI/ML@Tokyo #3 2020年4月23日 [Blog]
第4回 AWS AI/ML@Tokyo #4 2020年6月11日 [Blog]
第5回 AWS AI/ML@Tokyo #5 2020年7月9日 [Blog]
第6回 AWS AI/ML@Tokyo #6 2020年9月3日 [Blog]
第7回 AWS AI/ML@Tokyo #7 2020年10月15日 [Blog]

またAmazon SageMakerのオンラインによる体験ハンズオンがございますので、こちらもご活用ください。
https://pages.awscloud.com/event_JAPAN_hands-on-ml_ondemand.html