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VMware Cloud on AWS への AWS クラウド導入フレームワーク (AWS CAF) 適用方法

2017 年のローンチ以降、VMware Cloud on AWS を利用することで Amazon Web Services (AWS) のお客様はネイティブの VMware 仮想マシン (VM) を AWS グローバルインフラストラクチャ上で稼働させることができるようになりました。

VMware Cloud on AWS をすでに運用している、または利用する予定がある場合、セキュリティ上の特別な考慮事項があるかどうかを気にされるかもしれません。この記事では、AWS クラウド導入フレームワーク (AWS CAF) を VMware Cloud on AWS に適用する方法について説明し、セキュリティとコンプライアンスの要件を満たすために各目的をレビューし、関連する機能を適用するのに役立ちます。

VMware Cloud on AWS は、現在オンプレミスで使用されているのと同じ VMware ソフトウェアをクラウドで提供します。これにより、ワークロードを迅速に AWS にリフト&シフトできますが、セキュリティ、コンプライアンス、およびガバナンスに対する新しい視点も提示されます。VMware Cloud on AWS を使用してリフト&シフトを行うお客様には、このフレームワークを新たなインフラストラクチャに適用するための手助けが必要です。

AWS CAF は、その機能をビジネス、人、ガバナンス、プラットフォーム、セキュリティ、オペレーションの 6 つの視点でグループ化しています。それぞれは、クラウドジャーニーにおいて、機能的に関連するステークホルダーが所有または管理する一連の機能で構成されています。

CAF のセキュリティの観点では、AWS ワークロードのセキュリティ機能を構築し、ベストプラクティスを採用する際のガイドとして使用されます。以下に示すこれらの機能を使用して、クラウドセキュリティ、コンプライアンス、ガバナンスを評価し、クラウドワークロードの機密性、完全性、可用性の実現を支援することができます。

VMware Cloud on AWS では、VMware と AWS の両方のセキュリティとコンプライアンスのスコープを適用するため、より注意が必要となります。

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図 1: AWS CAF のセキュリティの観点の機能

お客様の観点

AWS におけるデプロイメントに関して、セキュリティのベストプラクティスやパターンについてのリソースは多数存在しますが、VMware Cloud on AWS では考慮すべき新たな側面があります。例えば、Amazon GuardDutyAmazon Inspector (エージェントレス) などのサービスとは統合されていません。

VMware Cloud on AWS は、VMware が管理する仮想プライベートクラウド (VPC) 上で VMware によって運用されるマネージドサービスであるため、監視と構成管理にはクラウドとオンプレミスのハイブリッドアプローチを適用することになります。また、マネージド VPC の監視やベースとなるサービスコンポーネントのセキュリティ保護など、セキュリティとコンプライアンスの一部は VMware の責任範囲となります。

AWS に移行する場合、VMware Cloud on AWS ではオンプレミスのデータセンターと同じ VMware のツールとプロセスを維持することができるため、速度の向上とリスクの軽減が可能になります。規制の厳しい業界では、セキュリティとコンプライアンスが極めて重要であり、新たな考慮が必要な基盤技術を追加導入することで移行時間が長くなる可能性があります。

VMware Cloud on AWS は、AWS のネイティブサービスと統合されています。セキュリティとコンプライアンスの環境には、Amazon Inspector、AWS ConfigAmazon EventBridge、または AWS Security Hub に調査結果を集約できる多数のサービスが含まれる可能性があります。通常、セキュリティとガバナンスのためのソリューションはすでにオンプレミスにありますが、これらを AWS Security Hub と統合するか、2 つの異なるシステムを運用する必要があります。

CAF のセキュリティの観点の VMware Cloud on AWS への適用

AWS CAF のセキュリティの観点は、9 つの機能で構成されています。ここでは、AWS ネイティブワークロード、VMware Cloud on AWS ワークロード、およびオンプレミスシステムのハイブリッド環境において、これらの機能をどのように適用するかを学びます。この総体的なアプローチにより、セキュリティ体制の信頼性を高めながら、移行とモダナイゼーションを迅速に行うことができます。

セキュリティガバナンス

セキュリティガバナンスには、セキュリティを定義し周知する役割と責任が含まれます。ポリシー、プロセス、手順を作成し、説明責任の所在を明確にします。遵守すべき法律や規制を適用し、継続的に更新する必要があります。

以下の図 2 では、VMware、AWS、お客様の間で責任を共有しています。お客様は、Software-Defined Data Center (SDDC) 内のワークロードの構成、VMware ファイアウォールルール、およびその他の SDDC の構成に対して責任を負います。

緑色の部分を見ますと、SDDC だけでなくマネージド仮想プライベートクラウド (VPC) や関連する AWS リソースに対しても VMware が責任を負っていることが分かります。一方、AWS はグローバルインフラストラクチャと基盤サービスを担当しています。

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図 2: VMware Cloud on AWS の責任共有モデル

SDDC や VMware ファイアウォールなど、セキュリティやコンプライアンスを考慮する必要のある新しい構成が存在します。これらの構成の一部は VMware によって管理されていますが、お客様で変更することも可能です。

セキュリティ保証

セキュリティ保証については、クラウドベンダーのレポートやコンプライアンス証明書をレビューして実施されているコントロールを理解するだけでなく、継続的な改善を適用しながらセキュリティメカニズムを監視、評価、管理します。お客様は、どのコンプライアンスフレームワークを適用するかを決定し、VMware のコントロールをそれらの要件にマッピングする責任を負います。

VMware は、コンプライアンス文書を提供し、それぞれの管理を実施する責任があります。VMware のスコープに関する詳細については、VMware Trust Center を参照してください。これは、AWS のセキュリティおよびコンプライアンス情報が掲載されている AWS Artifact と組み合わせて使用できます。

アイデンティティとアクセス管理

Identity and Access Management (IAM) を使用することで、アイデンティティ・プロバイダの集中管理と多要素認証 (MFA) を使用して最小特権アクセスを実装できます。

VMware は SDDC をプロビジョニングする前に、お客様の身元証明でもある有効な AWS アカウントを持っていることを顧客に要求します。サービス説明のページでは、VMware がどのようにクラウドサービスポータル (CSP) を保護し、MFA との統合をサポートしているかについての詳細情報を提供しています。

アイデンティティ・プロバイダ (既存のアイデンティティ・プロバイダとのフェデレーションを推奨) と同様に、SDDC 内の仮想マシンの認証を管理する責任はお客様にあります。VMware Cloud on AWS のアイデンティティとアクセス管理については規範ガイダンスを参照してください。

脅威検出

この機能には、様々なデータソースと相関性のある脆弱性のスキャンと修復の発見が含まれ、修復とその結果の状況をステークホルダーに伝えます。ユーザアクティビティ、ネットワークアクティビティ、アプリケーションアクティビティのログの記録など、SDDC 内の仮想マシンの脅威検出はお客様の責任となります。

ユーザーアクティビティのログ記録には、CSP や API アクションを含む SDDC 内で実行された管理アクティビティを記録する Aria Operations for Logs を利用できます。ネットワークアクティビティのログ記録には、SDDC ネットワーク上のパケットキャプチャが含まれ、SDDC ではこのトラフィックを調査するためにポートミラーリングを有効化することができます。

さらに、IP Flow Information Export (IPFIX) ログは、ネットワークトラフィックを要約するためにコレクターに送ることができます。アプリケーションログは、CloudWatch Logs Agent を使用して Amazon CloudWatch に転送することができ、セキュリティ情報イベント管理 (SIEM) やその他のログ収集ソリューションにログのコピーを送信することでログを転送することができます。

VMware はサービス概要に記載されているとおり、サービスを提供しているシステムの脅威の検出、分類、エスカレーション、および修復に責任を負います。

脆弱性の管理

脆弱性管理機能には、SDDC 内の VM だけでなく、VMware Cloud on AWS サービスを提供するために使用されるシステムのスキャンとパッチ適用が含まれます。SDDC 内のワークロードのスキャンとパッチ適用はお客様責任となりますが、AWS Systems Manager を利用することができます。

VMware は、Service Lifecycle ガイドに記載されているように、SDDC と基盤となるサービスコンポーネントのスキャンとパッチを管理します。

インフラストラクチャの保護

この機能には、深層防御を活用してセキュリティのレイヤーを提供する一方で、システムをグループ化するためのネットワークゾーンを定義し、必要に応じてトラフィックの検査とフィルタリングを実装することが含まれます。SDDC ファイアウォールを設定してアクセス制御リスト (ACL) を作成し、トラフィックを許可するだけでなく、ルーティングを設定してトラフィックフローを確立します。

さらに、VPC ルートテーブル、セキュリティグループ、ネットワーク ACL (NACL) を管理し、SDDC から VPC に流れるトラフィックを制御します。よりセンシティブなシステムを保護する場合は、ゼロトラストアプローチを検討してください。

VMware は SDDC ファイアウォールとルーターのコンポーネントのパッチ適用を管理し、稼働時間を確保します。

アプリケーションのセキュリティ

この機能では、ソフトウェア開発プロセス中に脆弱性を検出して対処することで、本番環境に投入されるコードのセキュリティを強化します。コードのスキャンとセキュリティ問題のパッチ適用を自動化することで、人手による作業を最小限に抑える必要があります。

VMware は、VMware Cloud on AWS サービスに関連するコードのセキュリティを確保する責任を負います。

インシデント対応

インシデント対応には、インシデントと問題の管理が含まれ、実行計画に従ってタイムリーに対応します。GameDay 演習を通してセキュリティイベントをシミュレートし、継続的に対応を改善することができます。また、インシデントの事後分析を実施して根本原因を特定し、発見から学ぶこともできます。

VMware は、VMware Cloud on AWS サービスに関するインシデントおよび問題管理 (検出、分類、記録、エスカレーション、サービス復帰) に責任を持ちます。

まとめ

企業は VMware Cloud on AWS を活用して、AWS へのクラウド移行を簡素化し、加速しています。この戦略は、自社データセンターとの運用上の一貫性を提供しますが、セキュリティとコンプライアンスの観点からは AWS 上で実行される VMware ワークロードならではの追加の知見が必要であることを理解することが重要です。

本稿では、AWS クラウド導入フレームワーク (CAF) のセキュリティの観点を VMware Cloud on AWS で評価し適用する方法を解説しました。また AWS の責任共有モデルを紹介し、VMware、AWS、お客様の間でどのように責任を分担するかについても説明しました。

参考文献

翻訳は SA 太田が担当しました。原文はこちらです。