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AWS Glue と Amazon Redshift を活用し、消費財企業が様々な POS データからインサイトを得る

COVID-19 パンデミックによって生じた混乱から産業は回復しつつありますが、消費財(Cconsumer Packaged Goods; CPG)業界は、インフレや消費者嗜好の変化、石油とエネルギー市場の変動といった大きな課題に直面し続けています。最近発表されたマッキンゼーの調査によると、COVID-19 パンデミックの間に米国の消費者の 75% がブランドや店舗を変えており、60% がパンデミック後に新しい購買パターンや習慣を取り入れる予定であることが明らかになっています。今日、企業にとって、地域、ブランド、マーケット、小売業を横断した最新の販売動向についてよりきめ細かいインサイトを得ることがこれまで以上に重要となっています。

データ駆動型になるための最初のステップは、あらゆる販売チャネルから、POS データを含むデータレイクを作成することです。販売チャネルには、対面販売の小売業者(Walmart、Target、Best Buy、Tesco など)、オンライン小売業者(Amazon.com やTarget.com など)、消費者直売チャネル(Direct-to-consumer; DTC)、店舗消費のチャネルなどがあり、これらを単一の情報源として機能させることが可能です。

POS データハブの紹介

データハブは、様々なデータ発生元とデータ利用者を繋ぐ中心的な媒介ポイントです。データハブは単一のテクノロジーではなく、ストレージ、データ統合、データオーケストレーションといったツールを統合したアーキテクチャーのアプローチです。アプリケーション、データサイエンティスト、ビジネスユーザーなどすべてのデータ利用者がアクセスするための単一点として機能します。また、さまざまなタスクのデータ管理を支援し、集中的なガバナンスとデータフロー制御の機能も提供します。

時とともに企業はさまざまなソースに対して個別のデータハブを作成する必要性を感じるようになり、マーケティングデータハブ、POSデータハブ(POSDH)、サプライチェーンデータハブなどのコンセプトが生まれました。POSDH は、さまざまな販売チャネル、小売、e コマース、DTC、店舗消費などで生じるデータを保存し、分析するための中心的な場所です。

消費財企業は POSDH によって「信頼できる唯一の情報源(single source of truth)」を構築することができ、品揃え、マーチャンダイジング、価格設定、需要、販売に関して情報に基づいた意思決定を行うことができるようになります。消費者ブランドにとって重要なデータソースには次のようなものがあります。

1. 販売(セルアウト)データ。販売データとは、販売プロセスで測定できるものすべてを指します。DTC や一部の小売チャネルでは、消費財企業が末端の POS 小売タッチポイントからのデータにアクセスすることができます。売上高、平均顧客生涯価値、ネットプロモータースコア、商品別売上などはすべて、企業が分析できる販売データの例です。企業はこのデータを使って、次のようなことを判断します:

  • 各小売環境における商品のパフォーマンス分析
  • 店舗における適切な品揃えに関するガイダンスの提供
  • 既存の価格パック構造の改善
  • 余剰在庫/在庫不足の防止
  • 消費者と購買行動の理解と予測

2. セルインデータ。消費財企業は、SAP、Oracle、NetSuite などの ERP システムを有しており、そこには注文や取引、出荷、在庫、原料管理、キャパシティ管理に関するデータが保持されています。これらのデータポイントは、需要対販売比、注文照会、注文管理の理解には不可欠です。

3. マーケットデータ、シンジケートデータ。消費財企業は、実店舗販売データを、Nielsen や IRI、Ipsos などのデータ提供者に頼っています。いわゆるシンジケートデータソースからは、集計済みの売上高やブランドポジショニング、広告パフォーマンスなどに関する情報が得られます。サードパーティーの市場調査会社は小売業者からこういったデータを購入し、既知の階層に分類して市場のインサイトを引き出せるようにして、消費財企業に販売しています。これらのデータからは以下のようなインサイトが明らかになります:

  • 品揃えにおける機会損失を発見
  • 競合と比較した店頭での商品パフォーマンス
  • 消費者ニーズの変化の把握

4. 顧客データ。顧客データは、人口統計データと個人情報 (PII) の 2 つに分類できます。 人口統計データは、Nielsen や IRI といった市場調査機関から入手できます。PII となる顧客データは、購買客が消費財企業の DTC チャネルへのアクセスを通し、店舗あるいはオンラインで消費者自らが提供する情報です。PII には、顧客の関心事、行動、人口統計などに関する情報が含まれます。正確な顧客データと組み合わせることで以下のようなインサイトが得られます:

  • 高度にパーソナライズされた購買体験
  • パーソナライゼーションの提供
  • 快適で楽しい購買体験を生み出す能力

5. 在庫データ、商品有無データ。小売業者は、定期的に在庫データと商品有無データを消費財企業と共有し、在庫切れのイベントを可視化し、需要を確実に満たせるように(On-time In-full; OTIF)します。
これらのソースを統合する際の最大の課題の一つに、データ パイプラインを構築して、データソースを協調、正規化し、データ レイクソリューションに保存することがあります。AWS を活用したデータレイクと目的別ソリューションによって、Sigmoid はさまざまな企業を支えています。

リファレンスアーキテクチャ

Sigmoid は AWS チームと協力し、データの取り込みから蓄積、分析、ダッシュボード、レポート、さらに管理レイヤーまで幅広く含む POSDH のリファレンスアーキテクチャを作成しました。図 1 に典型的な POSDH のリファレンスアーキテクチャを示します。

図 1: POSDH のリファレンスアーキテクチャ

図 2 は POSDH の論理構成です。POSDH により解き放たれるインサイトを示しています。

図 2: POSDH における主要データソースとそこから得られるインサイト

POSDH が有効なお客様のユースケース

以下に POSDH が有効に働いた上位 3 つのお客様ユースケースを紹介します:

1. 縮小する市場シェアの逆転

多国展開するある飲料大手企業は、南米のスナックカテゴリーでのマーケットシェアを失いつつありました。私たちはお客様チームと協力し、このマーケットシェア喪失の要因を特定し、人工知能(AI)駆動のソリューションを構築しました。 お客様の主な課題には次のようなものがありました:

  • 店舗キャパシティ追跡の難しさ
  • データ共有エラーにつながるような小売業者の在庫慣行への不遵守
  • 関係者(自社、競合他社ともに)が、マーケットシェアに及ぼす影響を詳細なレベルで明確に把握していない
  • 収益性や投資、競合他社のシェア、収益成長率などに基づき、ビジネスの推奨事項を分析および提供するための多変量システムの欠如
  • 結果を評価、測定するためのガイド付きフレームワークがない

顧客へのインタビューとデータ分析に基づき、Sigmoid は次の 3 つのソリューションに照準を合わせました。

  • インテリジェントな注文レコメンデーションシステム: 在庫、セルインデータとセルアウトデータ、収益性、2 つの類似する POS ユニット(小売業者)間の(アクティブ、非アクティブな)POS データを分析しました。新商品の数、注文数、商品ランキングといったレコメンデーションをそれぞれの POS ユニット(小売業者)に共有しました。このソリューションにより、市場シェアは 2% 向上し、ポートフォリオレベルの収益性は 1.5% 向上しました。
  • 競合他社に関する知見: マーケットシェアを獲得するため、競合他社は品揃えや梱包、プロモーション、マーケティング活動といったさまざまな戦術を展開します。Sigmoid はこの問題を解決するべく市場データとセルアウトデータに基づいて、品揃え計画と主要要因分析という 2 つのサブソリューションを特定しました。これによりスナックの品揃え全体で貢献利益は 3% 改善、国レベルのマーケットシェアは 0.8% 改善しました。
  • マーケットシェア予測: 最後に Sigmoid は AI 駆動型予測モデルを構築し、カテゴリ計画を改善しました。このモデルは、全体の売上予測を改善するため、またチームが次会計年度に向けた決定を下すのに役立ちました。

2. パーソナライズされた購買体験

多くの消費財企業では、取引先(例えばレストランチェーン)、e コマース(Amazon.com、Target.com など)、DTC チャネルを通じて商品が販売されます。

消費財企業は、POS データポイントを活用して消費者セグメント別に商品をパーソナライズします。消費者の嗜好や DTC、e コマースチャネルから得られる消費者像、そしてこれまでの購買実績に基づいて消費者をプロファイリングすることでこれを実現します。この方法で、Sigmoid は大規模な園芸用品会社における顧客離れの予測と、消費者セグメント特定を支援しました。 図 3 にソリューションの論理ビューを示します。

図 3: 消費者セグメンテーション: データソースとソリューションフロー

このソリューションによって、特定の属性を持つさまざまな消費者セグメントを識別できるようになりました。Sigmoid は次のような AWS のアナリティクスサービス、および機械学習(ML)サービスを使用しています。

  • Amazon Kinesis はビデオストリーム、データ ストリームをリアルタイムで簡単に収集、処理、分析するためのサービスです。DTC チャネルからのクリックストリームデータの自動取り込みに利用しています。
  • AWS Glue はあらゆる規模のデータを検出、準備、統合するサービスです。オンライン小売業者、メディアデータ、人口統計データ、気象データを取り込み、 ETL/ELT パイプラインを構築しています。
  • Amazon EMR は Apache Spark、Hive、Presto、およびその他のビッグデータワークロードをシンプルに実行およびスケーリングするサービスです。大量データの準備と処理を担います。
  • Amazon SageMaker は、ML モデルの構築、デプロイ、運用のためのサービスです。

図 4 にテクニカルアーキテクチャを示します。

図 4: ETL/ELT フロー

Sigmoid はまた、商品の品質に関するレビューを分類し、商品の問題を特定するソリューションも導入しました。Amazon Comprehend を使い自然言語処理ベースのシステムを構築し、Amazon.com のカスタマーレビューと評価を分析することで、不満を持つ顧客を特定し、より良い顧客体験を提供し、解約を減らし、商品品質を向上させることができるようになりました。このソリューションにより、クレームをレビュー 100 万件あたりで 20% 削減し、四半期内のリピート購入を 8% 増加させることができました。図 5 にこのソリューションの論理ビューを示します。

図 5: 商品品質レビューと課題特定

3. Amazon のデータを使った需要予測

Sigmoid と AWS チームは、Amazon Vendor Central(AVC; 消費財企業が、在庫切れイベントや純益マージン、グランスビュー(商品詳細ページを見た数)、コンバージョン、チャージバックといった情報を確認できるポータルサイト)のデータを、どこからでもどんな量のデータでも保存できるオブジェクトストレージサービスである Amazon Simple Storage Service(Amazon S3)やその他データストアに自動的に取り込むソリューションを構築しました。消費財はこのデータを使って需要を正確に予測し、OTIF 要件を満たし、販売効果を測定し、最終的に収益成長を促進することが可能になります。図 6 にこのリファレンスアーキテクチャを示します。

図 6: Sigmoid と AWS による AVC ソリューション

最後に

消費財企業にとって POSDH は主要な販売チャネルを特定し、チャネル効果を測定し、利益率を上げ、パーソナライズされたオファーを作成し、顧客体験を向上させるのに役立つものです。重要なデータポイントへのアクセスにより、品揃えやマーチャンダイジング、商業計画、価格設定、需要計画、販売に関して、データに基づく意思決定を行うことができるようになるのです。さらに、販売データをメディアデータやマーケティングデータ、シンジケートデータと掛け合わせて分析することで、購買ジャーニー全体で販売タッチポイントに対してマーケティング費用を割り当てることもできます。


AWS パートナーについて

Sigmoid は消費財企業向けの実用的なインテリジェンスを提供しています。Sigmoid の将棋財業界向け分析ソリューションは、意思決定者に対しターゲットとなる消費者のインサイトを提供し、成長を促進するために専用に設計されています。彼らの消費財業界の分析における専門知識は、業界におけるビッグデータ管理のあらゆるステップを簡素化する堅牢なデータ基盤の構築を支援します。複雑な分析ユースケースを解決することで、ブランドは消費者と効果的に関わり、需要を正確に予測し、在庫レベルを最適化し、e コマースと小売パートナーコミュニティの中でほぼリアルタイムの販売データに基づいてアクションを起こすことができます。

著者について

Mayank Kumar

Mayank Kumar は Sigmoid のパートナーシップマネージャーで、主にクラウドとテクノロジーに関するパートナーシップを担当しています。消費財企業のデータジャーニーを支援しています。

Nishant Ghosh

Nishant Ghosh は Sigmoid のグローバルパートナーシップリードで、テクノロジーコンサルティングとソリューションセリングの経歴を持ちます。これまで、消費財企業、金融サービス、製造業などさまざまな業界の企業のデジタル変革を支援してきました。現在は、Sigmoid のクラウドと独立系ソフトウェアベンダー(ISV)のパートナーシップをリードしています。

Wilson Thankachan

Wilson Thankachan は、AWS グローバルの消費財業界におけるパートナーソリューションアーキテクトであり、サプライチェーンのバックグラウンドを持っています。AWS における消費財業界の顧客のニーズに応えるべく、AWS パートナーの提供する技術検証や、ガイダンスを提供しています。

Kevin E. McCurdy

Kevin E. McCurdy は、APN for AWS のグローバル消費財セグメントリードで、戦略的 ISV および SI パートナーの特定と関係構築を担当しています。E2open のデマンドシグナル管理担当副社長を務め、後に E2open が買収した Orchestro の共同設立者兼戦略アカウント担当副社長、Mercari Technologies の共同設立者兼ビジネス開発・サービス担当副社長を務めました。Coca-Cola、General Mills、Kellogg’s、PepsiCo、Unilever、Kraft-Heinz などのグローバル消費財企業や小売業において、サプライチェーン管理、カテゴリー管理、デマンドシグナル管理などの分野で 25 年以上の経験を積んでいます。ペンシルベニア州立大学でビジネスロジスティクスと国際ビジネスの理学士号を取得しています。

翻訳は Solutions Architect 杉中が担当しました。原文はこちらです。