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SEQSENSE 自律型警備ロボット構築に AWS を活用

はじめに

国立社会保障・人口問題研究所によると、日本の労働者数は今後 30 年間で 30%減少すると予想されています。日本では急速な高齢化によって、警備業界における人材不足が発生しています。

図 1: SEQSENSE 警備ロボット SQ-2

図 1: SEQSENSE 警備ロボット SQ-2

日本のロボットスタートアップである SEQSENSE は自律型警備ロボットサービスを提供することで、この問題を解決しようとしています。同社はビル内をパトロールする自立移動型警備ロボット SQ-2 を開発しました。このロボットは事前に作成されたフロアマップをもとに自走し、エレベーターと通信して複数のフロアをパトロールします。日本国内のオフィスビルやショッピングモール、空港など 30 カ所以上の施設に導入されています。

SEQSENSE のコア技術は、超広視野角 LiDAR を用いた位置測位、自律移動、マッピングです。同社は 3D マッピングと位置測位のために、独自の 3D LiDAR センサーを開発しました。この技術により、狭い通路や混雑した環境でもロボットが自走できるようになりました。

SQ-2 は高解像度カメラと 3 つの魚眼レンズで構成された 360 度カメラ、マイク、スピーカーも搭載しています。オペレーターはロボットを遠隔監視し、ロボットを介してコミュニケーションをとることができます。ロボットは 1.5 時間の充電で最大 6 時間稼働可能で、自分で充電ステーションに戻ります。

図 2: 同社の 3D LiDAR テクノロジー

図 2: 同社の 3D LiDAR テクノロジー

警備に自律型ロボットを活用することは、いくつかのメリットがあります。例えば、ビルのセキュリティに監視カメラがよく使われます。しかし、監視カメラには死角がある場合があり、増設するにはコストと時間がかかります。一方 SQ-2 ロボットはエレベーターに乗ってビル全体をパトロールするので、警備員はルートを選択することで、死角を減らしたり、無くしたりできます。また現地に警備員を配置しなくても、ロボットが存在する事で万引きの様な犯罪を防止するのにも役立ちます。

次の動画では、SEQSENSE がロボットとの接続や遠隔操作、複数機器の監視等の機能で AWS をどのように活用しているかご確認頂けます。この記事では、同社のアーキテクチャと AWS サービスで解決した課題について深く掘り下げます。

課題

自律型ロボットの開発は複雑で時間のかかる作業で、デバイスからクラウドまで様々な技術が必要です。例えば、複数機器を安全に運用監視するには、リアルタイムダッシュボード用にテレメトリや映像データを収集する必要があります。ロボット開発者は、収集したデータを分析することでロボットのソフトウェアを改善し、クラウドを通じて OTA (Over the Air) アップデートを提供することができます。

スタートアップ企業として、SEQSENSE は差別化と 3D LiDAR や自律移動技術等のコアコンピタンスに集中したいと考えています。しかし、同社のロボットは警備員がウェブコンソールから操作できるように設計しているため、クラウドプラットフォームもビジネスとして重要です。限られた数のエンジニアで、ロボットの開発・運用だけでなく、クラウドプラットフォームの開発・運用も行う必要がありました。

ソリューションとアーキテクチャ概要

同社のロボットは 4G 回線でインターネットに常時接続し、テレメトリと映像データをクラウドに送信します。しかし、接続が切れたとしても単独で動作することができます。警備員やオペレーターは、ウェブコンソールからロボットを監視・管理します。ウェブコンソール上にはロボットの状態、地図、位置とロボットからの映像が表示されます。ユーザーはロボットに特定箇所のパトロールや、充電ステーションに戻るよう指示します。

図 3: ロボット管理者用のウェブコンソール画面

図 3: ロボット管理者用のウェブコンソール画面

次の図は、同社のロボットとクラウドアプリケーションのアーキテクチャ概要図です。

図 4: ロボットとクラウドアプリケーションのアーキテクチャ概要

図 4: ロボットとクラウドアプリケーションのアーキテクチャ概要

SEQSENSE は、インフラ運用のコストを削減できるフルマネージドサービスを求めていました。ロボットデータの取り込みには、AWS IoT CoreAmazon Kinesis Video Streams などのサービスを活用しています。SEQSENSE は 4 人のエンジニアだけで全てのクラウドインフラを開発・管理しています。

テレメトリの収集

同社はロボットからテレメトリを収集するのに AWS IoT Core を使用しています。IoT Core を利用する事で、デバイスは簡単かつセキュアにクラウドへ接続し、クラウドアプリケーションと連携する事が出来ます。ロボットから収集されたデータは、ユースケースに応じて各データベースサービスに保存されます。例えば、パトロール結果は Amazon Relational Database Service (Amazon RDS) に、動作モードやエラー、バッテリー残量等のロボットの最新ステータスは Amazon ElastiCache for Redis に、ロボットの移動履歴データは Amazon TimeStream に保存されます。

図 5: テレメトリ送信のアーキテクチャ

図 5: テレメトリ送信のアーキテクチャ

クラウドに接続するエッジ側ソフトウェアは Go 言語で書かれています。同社は Go 言語で AWS IoT Core の機能を利用するためにライブラリを開発し、オープンソースソフトウェアとして GitHub で公開しています。

遠隔操作

IoT Core は遠隔操作にも利用されています。警備員やビル施設のオーナーは、ウェブコンソールで パトロールのルートを作成し、各ロボットにルートを設定します。ロボットは通常、指定されたルートに従ってビル内をパトロールします。途中で障害物を発見した時は迂回します。しかし迂回に失敗して、指定箇所に到達できない場合は、オーナーに通知します。オーナーは指定箇所をスキップ、その場にとどまる、もしくは充電ステーションに戻るようロボットに指示することができます。

図 6: 遠隔操作のアーキテクチャ

図 6: 遠隔操作のアーキテクチャ

ビデオストリーミングと録画

SQ-2 は 4 台のカメラを搭載しており、ユーザーはウェブコンソール上からライブ映像やオンデマンド映像を確認することができます。クラウドにストリーミングされた映像は、オンデマンドで再生を行うために Amazon Kinesis Video Streams へセキュアに保存されます。ユーザーは特定期間の映像データを簡単にダウンロードや再生することができます。また、SEQSENSE はロボットソフトの改良にも保存された映像データを活用しています。同社は Go 言語用の Kinesis Video Streams Producer and Consumer Library を開発しました。

図 7: ビデオストリーミングと録画のアーキテクチャ

図 7: ビデオストリーミングと録画のアーキテクチャ

まとめ

SEQSENSE は自律型警備ロボットを開発する事で、警備業界の人材不足問題を解決しようとしています。同社は AWS サービスを利用することで、信頼性、耐久性に優れ、また保守、スケールそして拡張しやすいサービスを実現しています。特に、AWS IoT Core と Amazon Kinesis Video Streams によって、自動パトロールや遠隔監視などのコア機能を容易に開発・運用をすることができました。

他のロボットユースケースについては AWS Robotics でご確認頂けます。また、AWS IoT サービスやソリューションについては、AWS IoT をご確認頂くか、お問い合わせ下さい

Mihira Yuma

三平 悠磨 (みひら ゆうま)

アマゾン ウェブ サービスのシニア IoT スペシャリスト ソリューションアーキテクト。日本を拠点に、お客様の IoT ソリューションの構築を支援。AWS 入社以前は、ソフトウェアエンジニアとしてロボット開発に従事。

この記事は AWS empowers SEQSENSE to build Autonomous Security Robots の日本語訳です。ソリューションアーキテクトの 山岡 卓紀夫 が翻訳しました。