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J.フロント リテイリングにおけるデータアナリスト育成の取り組みについて

本稿では、J.フロント リテイリング株式会社(以後、JFR)が取り組んでいるデジタル人財育成の中で、 AWS 上に構築した統合データ基盤を活用したデータアナリスト育成の取り組みについて紹介します。

JFR の人財育成のアプローチ

大丸松坂屋百貨店、パルコを傘下に持つ JFR は、デジタル戦略の骨子を取りまとめ、現在はそれに基づいた推進を行っています。戦略骨子は以下の3つの柱から構成されています。

  • カスタマー・データドリブン経営の実践
  • デジタルテクノロジーを活用した新たなビジネスモデルの構築
  • これらのアクションを支えるデジタル人財の育成

このうち3つ目の「デジタル人財の育成」について、説明します。
JFR では、デジタル人財として「データアナリスト」「デジタルデザイナー」の2つの人財像を設定し、マインド、スキル、ナレッジを身に着け、データやデジタルテクノロジーを活用して、業務課題の解決や新しいビジネスをデザインできる人財の育成を目標としています。

2つのデジタル人財教育

データアナリストの重要性

デジタル人財のうち、「デジタルデザイナー」は、ビジネスとテクノロジー双方のナレッジを持ち、課題や戦略に沿ったビジネスデザインを行う人財です。これらの人財育成を内製したプログラムで取り組むことで、単なるスキル習得だけでなく、 JFR で求められるマインド、ナレッジを身に着けることを狙っています。もう一方の「データアナリスト」とは、統計解析のナレッジを基に BI ツールなどを用いてデータを分析し、ビジネスレポートや施策の立案、評価などを行う人財です。

データアナリストとして活躍していくためには、仮説の立案を行うと共に、データに基づいた検証を自ら実施できる必要があります。データアナリストは、自ら検証した結果を基にデジタルデザイナーや現場の担当者と協力して戦略施策を立案し、実行していくことが求められるのです。そのために、データアナリストのデータ活用力を高めることが重要となってきます。

人財育成プログラムで目指すこと

データプラットフォームを作っただけでは DX を実現できないことを多くの方が認識しています。データアナリストの育成も同様であり、単にスキル教育をするだけではデータ活用力を高めることはできません。そのため、 JFR では、「マインド設定」「データに関する基礎知識」「専門的な実践技術」「現場での実行力」を組み合わせることで、より実践的な人材を育成するプログラムを目指しています。

「データに関する基礎知識」では統計学で用いられる理論やクラウド活用で得られるビジネスメリットの基本知識を押さえ、「専門的な実践技術」ではクラウド上のデータの操作技術、最近では一般化してきた ML などの AI 利用技術などを取得する必要があります。

一方で、研修を受講する JFR グループ社員の強みはこれまでの現場で培った経験であり、顧客感覚です。そのため、この強みに対してデータ活用力を付加していくことが重要です。

これらを考慮した育成プログラムは、 JFR 社員が主体となって作り上げる必要があり、そこへ外部の専門家の力を組み合わせることになります。また、内製化を中心にすることで以下を期待しています。

  • 各プログラムで取り扱う事例やデータを身近なテーマとすることで、受講生の理解を促進する
  • 変化し続ける市場、会社の状況に合わせて、都度育成プログラムを調整することで、正確な情報を受講生へ伝える
  • 社員が中心となって育成プログラムの改善サイクルを回すことで、少ないコストで最適なプログラムを提供する
  • 育成プログラムを社内へオープンにすることで、受講生だけでなく、多くの社員へ自学自習環境を提供する

AWS との取り組み

データアナリストには、自ら検証を行えるようになることを求めています。すなわち、 JFR が採用しているクラウド環境( AWS 環境)の基本を理解し、自ら操作し、結果を得るスキルを身に着ける必要があります。これを実現するために、 AWS 協力の下で、以下の内容を盛り込んだ独自のコンテンツを用意しました。

  • AWS をベースとしたクラウド環境の一般知識、利用におけるメリット/デメリットの解説
  • AWS の各種機能とJFRが活用している機能の紹介(Amazon Simple Storage ServiceAWS GlueAmazon Athena など)
  • AWS へ実際にアクセスし、操作方法を学ぶハンズオン
  • 実業務を想定した、クエリー(SQL)の基本を学ぶハンズオン

自社環境による本格的な教育実施の前にクラウド利用の基礎を、専門家である AWS のソリューションアーキテクトが語り、演習をすることで、 JFR は実践的な教育に専念することができます。また、受講生は一般的な知識やスキルと、当社の環境での活用方法を関連付けて考えることができるようになります。

JFR の AWS を活用した演習環境は、実務データをベースにした非常に実践的な環境です。研修の集大成の位置づけで業務に密着したレポートテーマを設定し、演習環境を利用したデータ分析、仮説立案と検証を行うことで実行力を定着させることを狙っています。

JFR のグループデジタル統括部デジタル推進部でデジタル人財育成チームを率いる村川氏は、「私たちがデジタル人財の育成で大切にしているのは、実践力です。」と述べています。「私たちはこの研修カリキュラムを通じて身に着けた、 AWS を実際に操作して自らデータ分析を行う実践力を、現場で発揮することを期待しています。そのために研修終了後も、企画支援やデータ分析支援を行う体制を整え、データアナリストをバックアップする体制を整えています。」

デジタル人財育成プログラム向けコンテンツについて

JFR のデジタル人財育成プログラム向けに作成したコンテンツは、 AWS と SQL の基礎を学ぶハンズオンです。AWS 入門では、 JFR で利用している AWS サービスの基本操作を学び、SQL 実行環境を構築します。SQL 入門では、基本的な構文(GROUP BY 句、 JOIN 句など)を学び、実務に沿ったデータを用いた演習問題に取り組みます。これにより、受講者全体のスキルを向上させ、データアナリストとして活躍するための土台を築きます。

ハンズオンの全体像 SQLを利用したデータ抽出

実際に取り組んだコンテンツの抜粋

まとめ・今後について

JFR では、データアナリストの育成を 2022 年末から行っています。すでに 20 名以上のデータアナリストを輩出しており、データアナリストとデジタルデザイナーを合わせて、2024 年度末に 100 名、2030 年度末に 1,000 名まで増やす計画を進行中です。データアナリストは現場に戻り、現場課題を抽出し、データ分析による解決に取り組んでいます。データ分析にあたっては、現場に任せきりにするのではなく、統合データ基盤を活用できる環境と共に、分析アドバイスやサポート、継続的な取り組みと、スキルアップが可能な仕組みを提供し、活躍してもらっています。今後は、この動きを活発化させると共にデジタルデザイナーとも連携して、「カスタマー・データドリブン経営」を一層加速させようとしています。

JFR ではこの取り組みを強力に推進していくために、共に取り組んでいく仲間を募集しています。興味を持っていただける方のご連絡をお待ちしています。

 

本稿は、ソリューションアーキテクト 齋藤、髙橋が担当し、J.フロントリテイリング株式会社 グループデジタル統括部デジタル推進部 デジタル人材育成チームリーダー 村川氏との共同執筆です。デジタル人材育成に取り組む方の参考となれば幸いです。

JFR における統合データ基盤を活用したカスタマー・データドリブン経営の取り組みについても、以下のブログで紹介しています。合わせてご覧ください。

J.フロントリテイリングにおける統合データ基盤を活用したカスタマー・データドリブン経営の取り組み