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VMware Cloud Director Service マルチテナンシーによる MSP コストの管理

本稿は AWS シニアスペシャリストソリューションアーキテクト Adrian Begg、 AWS シニアパートナーソリューションアーキテクト Kiran Reid 、 VMware プロダクトラインマネージャー Steve Lord による記事です。

私たちの共通のお客様の多くは、ワークロードをモダナイズしてクラウドに移行する方法を求めています。過去 5 年間、vSphere ワークロードを持つお客様は、VMware Cloud on AWS を選択して、アプリケーションをクラウドに迅速かつシームレスに移行してきました。
VMware Cloud on AWS を使用すると、アプリケーションコードやロジックをリファクタリングまたは変更することなく、ワークロードをより迅速に移行できます。
世界中の Managed Cloud Service Providers (MSP) は、自社のデータセンターで稼働する VMware Cloud Director を利用したクラウドで、ビジネスを構築しています。これらの MSP は、信頼できるアドバイザーおよびパートナーとして、長年にわたって顧客からの信頼を得てきました。
VMware Cloud Director Service (CDS) は、VMware Cloud Director のコンテナ化されたサービスとしてのソフトウェア (SaaS) 実装であり、VMware Cloud on AWS と統合され、VMware on AWS インフラストラクチャを利用して Cloud Director エクスペリエンスを提供します。 CDS を統合および管理するために、プロバイダは VMware Cloud Console for CDS インスタンスを介し、以下のアクションを実行できます。
本稿では、MSP が直面しているいくつかの課題と、VMware Cloud on AWS でマルチ テナンシーを使用してそれらの課題に対処する方法について説明します。

チャレンジ

ますます多くの顧客がアプリケーションのモダナイゼーションを求め、サービスの成長と進化に合わせてイノベーションのペースを速めようとするにつれて、多くの MSP が同様の課題に直面しています。

MSP が直面する課題

図 1 – MSP が直面する課題

  • ライトをつけ続けるための努力が増加し、将来のために構築する時間がありません: MSP がより成功し、スケールするにつれて、サービスの安定性、信頼性、および安全性を維持するための運用上の努力も同様になります。さらに、業界のスキルが変化するにつれて、チームをサポートできる熟練した技術者を見つけることはますます困難になっています。
  • 需要は直線的ではありませんが、多くの場合、新しいキャパシティを展開するためのコスト構造とリードタイムにおいて次のような課題があります。: キャパシティ管理は常に対立しており、MSP は現在および将来の顧客の需要を満たすだけでなく、オーバーコミット率のバランスをとるのに十分なキャパシティを確保する必要があります。これは、コストを最小限に抑えながら、十分なパフォーマンスと可用性を維持する必要もあります。需要の増加または減少を予測することは、ただの推論ゲームであり、過大評価すると不必要または非効率的な資本の仕様につながる可能性があり、過小評価すると顧客のユーザーエクスペリエンスが低下する可能性があります。
  • サービス提供場所を拡大することは、費用がかかり、リスクが伴います。: MSP は、需要のある場所で顧客にサービスを提供したいと考えています。特に、自社のユーザーや顧客に低遅延サービスを提供する必要があるグローバルな顧客がいる場合はなおさらです。ほとんどのサービスプロバイダーにとって、別の地域にデータセンターを開設して運用することは現実的ではありません。現地のパートナーと提携することで、この問題に対処する企業もありますが、このアプローチは別のパートナーとのやりとりが難しくなる可能性があり、地域ごとに異なる運用チームに依存し、契約上の取り決めが異なるため、エンドカスタマーへのサービスが低下する可能性があります。

ソリューション

VMware Cloud Director Service は、MSP が現在の VMware Cloud on AWS のサービスをマルチテナントパブリッククラウドソリューションに拡張できるようにすることで、この問題を解決します。
Cloud Director Service を使用すると、クラウドプロバイダは VMware Cloud on AWS で組織、アプリケーションサービス、および仮想データセンターサービスをニーズに合わせて適切なサイズで提供できるため、software-defined data center (SDDC) 全体を 1 つの顧客専用にする必要がなくなります。
VMware Cloud Director Service が AWS 再販を通じて利用できるようになりました。サービスプロバイダーは顧客と革新的なサービスの構築に集中できます。 MSP は、AWS へのアクセスという追加の利点を利用して、IT マネージドサービスへの既存の投資を活用できます。

Cloud Director Service のマルチテナンシーソリューション

図 2 – Cloud Director Service のマルチテナンシーソリューション

このサービスが提供するマルチテナント機能により、AWS パートナーは複数のテナント間で VMware Cloud on AWS インスタンスを安全かつ簡単に共有できます。この追加された柔軟性により、パートナーは、VMware Cloud on AWS サービスのリーチを、以前はセグメントの障壁によって妨げられていた中小規模のエンタープライズの顧客にまで拡大できます。

MSP にとっての利点

VMware Cloud Director Service を使用すると、MSP は VMware Cloud on AWS をリソースプールに分割および編成できるため、組織の仮想データセンター、ユーザー、およびネットワークに対するマルチテナントサービスの提供が容易になります。

適切なリソースのサイジング

CDS を使用すると、MSP は VMware Cloud on AWS SDDC インフラストラクチャを顧客組織のより小さなリソースプールに分割することができます。利点は、初期投資が少なくて済むことと、サービス容量の拡大に合わせて専用のリソースプールに拡張できる柔軟性を提供することです。これは、小規模、中規模、および SMB の顧客を持つ MSP にとって特に魅力的であり、費用対効果の高いソリューションとなります。

顧客の環境を適切にサイジング

図 3 – 顧客の環境を適切にサイジング

ニーズに合った割り当てモデルを選択

Cloud Director Service には、MSP の顧客要件に適合する割り当てモデルがあります。フレックス、割り当てプール、従量課金、および予約プールの割り当てモデルから選択します。

  • 従量課金: 組織の仮想データセンター (組織 VDC) で事前にリソースを割り当てる必要はありません。ユーザーが組織 VDC で仮想マシン (VM) または vApp の電源を入れると、リソースがコミットされます。リソースは、vCPU と vGB RAM のパーセンテージに関して VM レベルでコミットされます。プロバイダーは、これらのコミットメントを使用して SLA を指定できます。
  • 割り当てプール: 各組織の VDC は割り当てられたリソースプールを取得し、リソースの一部のみが組織 VDC にコミットまたは予約されます。プロバイダーは、予約されたリソースの量に基づいて SLA と料金を設定できます。
  • 予約プール: 組織は、必要かどうかにかかわらず、リソースの 100% にコミットします。 他の組織 VDC とリソースを共有することはありません。これにより、必要なときにリソースを利用できるようになり、テナントは VM ごとに独自の予約と制限を調整できます。
  • フレックス: サイジングポリシーを通じて、組織 VDC と個々の VM レベルの両方で CPU と RAM の消費を制御することにより、シンプルに最良の割り当てプールと従量課金制モデルを提供します。

Cloud Director Service 割り当てモデル

図 4 – Cloud Director Service 割り当てモデル

シンプルな拡張

VMware Cloud on AWS を使用すると、キャパシティを環境にすばやく追加できるため、数分でテナントキャパシティを追加できます。Cloud Director Service を使用すると、オンデマンドまたはコミットされたマルチテナントキャパシティを購入して、仮想データセンターを新しいリージョンに拡大することで、地理的範囲の拡張をすることができます。
これにより、サービスプロバイダーは、さまざまな地域のさまざまな運用チームに依存しなくなります。さらに、すべてのリージョン、アベイラビリティゾーン、およびエンドポイントは、共通の Cloud Director Service ダッシュボードで確認できます。

AWS によるグローバル展開

図 5 – AWS によるグローバル展開

ハイブリッドクラウドの活用で断片化されたサービスの回避

VMware Cloud Director Service は、オンプレミスの VMware Cloud Director と同じ実証済みのアーキテクチャとユーザーエクスペリエンスに基づいて構築されています。これにより、顧客とクラウド管理者にシンプルでシームレスな共通運用モデルを提供できます。
VMware Cloud Director Service ユーザーインターフェイスから新しいサービスを提供できます。製品が進化するにつれて、VMware Cloud Director と同等のサービスを実現し、マルチサイトハイブリッド機能とサービス提供を提供することが目標になります。

AWS ネイティブサービスとの統合

VMware Cloud on AWS が AWS データセンターで実行されているため、ソリューションはネイティブの AWS サービスに隣接しています。顧客に既存の AWS ソリューションへのシンプルなアクセスを提供し、組織 VDC からこれらにアクセスできるようにすることができます。
VPC 接続を使用すると、プロバイダーは、Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2)、Amazon Relational Database Service (Amazon RDS)、Amazon Simple Storage Service (Amazon S3)、Amazon Elastic File System (Amazon EFS)、および Amazon FSx のような、AWS ネイティブサービスを活用したサービスを公開できます。これにより、MSP は MSP アカウントからテナントにこれらのサービスを提供できます。

AWS ネイティブサービスとの統合

図 6 – AWS ネイティブサービスとの統合

サマリー

VMware Cloud Director Service により、MSP は現在の VMware Cloud on AWS をマルチテナントパブリッククラウドソリューションで拡張できます。この実績のあるクラウドサービス配信プラットフォームである VMware Cloud Director の利点は、Cloud Director Service を使用することで VMware Cloud on AWS にも拡張されました。
これらのアーキテクチャを実装する際のサポートについては、AWS にお問い合わせください。

ドキュメンテーション

本稿はソリューションアーキテクト齋藤が翻訳を担当しました。原文はこちらです。