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AWS Backup のコストを最適化する

このブログは 2024 年 4 月 11 日に Kenneth Hui (シニアソリューションアーキテクト) によって執筆された内容を日本語化したものです。原文はこちらを参照してください。

ランサムウェアの脅威により、データ保護はすべての企業にとって最優先事項となっています。Sophos 社の「State of Ransomware Report 2023」によると、2022 年には 66 % の組織が被害を受け、ランサムウェアによる支払い額の中央値は 40 万ドル (平均支払い額は 154 万ドル) でした。バックアップを使用した場合の復旧コストの中央値は身代金支払いの半分 (75 万ドルに対して 37 万ドル) であるため、信頼性の高いバックアップを用意することは贅沢ではなく、組織にとって不可欠です。

同時に、組織はクラウドデータ保護のコストなどのクラウドコストの最適化を検討しています。Flexera 社の「2023 State of the Cloud Report」によると、クラウドを利用しているすべての組織の 82% が、クラウド支出の管理を最優先事項としています。AWS ユーザーからは、包括的な多層防御戦略と費用対効果の高いデータ保護戦略とのバランスを取る必要があるというフィードバックが一貫して提供されています。

AWS Backup は、ハイブリッドリソースの大規模なデータ保護を簡素化する、費用対効果の高いフルマネージド型のポリシーベースのサービスをユーザーに提供するネイティブクラウドソリューションです。13 万人の AWS Backup のお客様 (2023 年 9 月現在) がデータ保護の支出を最適化できるように、何千人ものユーザーとの作業から集めた AWS Backup のコスト最適化のベストプラクティスを概説する一連の記事を公開しています。この記事では、コスト最適化の定義、コストを最適化するための AWS Backup の構築方法、およびバックアップコストを最適化する際に考慮すべき原則について概説します。

コスト最適化とは何ですか?

コスト最適化とは「賢く」支出することであり、必ずしも支出を減らすことではありません。ガートナー社は、コスト最適化を「ビジネス価値を最大化しながら、支出とコスト削減を促進するためのビジネスに焦点を当てた継続的な規律」と定義しています。同様に、AWS はコスト最適化を「システムを運用してビジネス価値を最も低いコストで提供する能力」と定義しています。AWS Backup などのマネージドクラウドサービスは、コストの削減、イノベーションとモダナイゼーションの促進、運用効率とビジネスの成長の促進、ビジネスリスクの軽減により、IT インフラストラクチャからより多くの価値を引き出すのに役立ちます。

AWS Backup がデータ保護コストを最適化する方法

AWS Backup は、データを保護しながら経済的および運用上のメリットを得るのに役立つ主な方法が 3 つあります。

  1. AWS Backup は、バックアップと復旧のインフラストラクチャ全体の支出を削減するのに役立ちます。バックアップサーバーやストレージをプロビジョニングして管理する必要はありません。リソースの増大に合わせて容量を手動でスケールアップする必要はありません。AWS Backup を使用しても、年間のソフトウェアライセンスコストはかかりません。資本的支出や運用上のオーバーヘッドなしで、AWS Backup にすぐにアクセスでき、使用した分だけ支払います。
  1. AWS Backup はバックアップ操作を簡素化するので、バックアップ操作に費やす時間とサイクルを減らし、代わりにイノベーションとモダナイゼーションに焦点を当てることができます。AWS Backup を使用すると、サポートされた AWS サービスを一元的に保護できます。ネイティブの AWS サービスのバックアップを管理するために、購入または構築した複数のソリューションを管理する必要はありません。AWS Backup はマネージドサービスであるため、リソースのプロビジョニングやソフトウェアのパッチ適用、キャパシティプランニングなど、区別できないタスクに時間とサイクルを費やす必要がなくなります。
  1. AWS Backup は、組織全体のバックアップコストを監視および最適化するための管理ツールを提供しています。コスト配分タグなどのツールを使用して、バックアップのコストを追跡できます。AWS Backup ポリシーエンジンを使用すると、バックアップデータの保持とサポートされたサービスのライフサイクルを制御して、必要な時に以降データが保持されないようにすることができます。AWS Organizations と統合することで、これらのポリシーを複数の AWS アカウントに一元的に適用できます。

考慮すべきコスト最適化の原則

バックアップコストを最適化するための万能のソリューションはありません。代わりに、総合的なアプローチを取り、ビジネス目標を達成しながら効率的に支出する方法を検討する必要があります。以下のテーマについて詳しく説明します。

1. 現在のクラウドのバックアップコストを評価して理解する

バックアップコストの計算には、ストレージの料金を知るだけでは不十分です。インフラストラクチャやソフトウェア、運用コストを含め、現在のソリューションにいくら支払っているか知っていれば、コストをより適切に比較して最適化できます。

総保有コスト (TCO) を理解します。バックアップストレージのコストだけでなく、現在のバックアップソリューションの TCO も考慮することをお勧めします。TCO を評価するためには、ソフトウェアライセンス、コンピューティング、運用などの追加コストを考慮する必要があります。

支出を追跡します。実際の支出を理解していなければ、コストを最適化することはできません。AWS Backup は、バックアップコストの追跡と最適化に役立つツールを提供しています。コスト配分タグを使用してバックアップのコストを追跡できます。AWS Cost Explorer を使用してタグ付けされたリソースをフィルタリングすると、部門やプロジェクトなどのさまざまな基準でバックアップコストを表示できます。

2. コストの計算方法を理解する

バックアップコストはサポートされたリソースによって異なり、AWS Backup の料金ページに記載されています。各リソースのコストモデルを理解し、それらのポリシーに基づいてバックアップポリシーを設定することで、コストを最適化できます。

永久増分バックアップのコストへの影響を理解します。従来のバックアップソリューションでは、増分バックアップに加えて、定期的なフルバックアップも必要とする方式が使用されていました。AWS のバックアップは、フルスナップショットを 1 つだけ作成することを必要とする永久増分スナップショットに基づいています。例えば、100 GB の Amazon Elastic Block Store (Amazon EBS) ボリュームで、日次の変更率が 2 % の場合、30 日間の保持期間で 1 か月間の日次バックアップを行うと、最大 160 GB のスナップショットデータが蓄積されます。週次のフルバックアップを行う従来の方法では、同じボリュームに最大 600 GB のスナップショットデータが蓄積されます。

さまざまなリソースのバックアップ料金を理解します。AWS Backup は、Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2)Amazon Relational Database Service (Amazon RDS)Amazon Simple Storage Service (Amazon S3)、VMware vSphere、SAP HANA on Amazon EC2 など 20 のリソース・AWS サービスのバックアップ管理をサポートしています。サービスによってコストモデルは異なる場合があり、それらのコストモデルを理解しすることは、コストを予測および制御するのに役立ちます。例えば、Amazon RDS では AWS Backup を通じて継続的なバックアップを提供しています。これらのバックアップは最大 35 日間保存でき、その保持期間中に作成されたバックアップは無料で提供されます。

3. バックアップストレージにライフサイクル管理を使用する

バックアッププランのバックアップ頻度やライフサイクル、リソース選択の粒度を制御できます。何をどのくらいの期間保護するかを選択できます。これらの設定はいつでも変更できます。

バックアップ頻度を制御します。バックアップのコストは、データをバックアップする頻度に直接関係します。ワークロードごとの目標復旧時間と目標復旧時点に基づいて、ワークロードを分類し、バックアップ頻度を設定することをお勧めします。

保持ポリシーを決定します。同様に、保持要件に従ってワークロードを分類することをお勧めします。例えば、日次バックアップは 1 か月だけ保持し、月次バックアップは 1 年間保持する要件がある場合があります。コストを制御するために、バックアップデータを必要以上に長く保持したくない場合があります。

長期間の保持のためにコールドストレージにバックアップを階層化します。AWS Backup によって保護されている一部のリソースは、コールドストレージへの階層化をサポートしています。保持要件に従ってワークロードを分類し、必要に応じてコールドストレージに階層化することをお勧めします。

まとめ

データが貴重で攻撃を受けている今、AWS Backup などのソリューションを使用してデータを保護することは不可欠です。しかし、その要件とコストの最適化の必要性とのバランスが取られる必要があります。AWS Backup には、最も低い料金でビジネス価値をもたらすシステムを運用できるだけでなく、バックアップの管理に役立つツールとベストプラクティスが用意されています。2024 年中に AWS Backup のコスト最適化に関する記事が他にもありますので、ぜひご覧ください。一方、AWS Backup の詳細については、製品ページをご覧ください。また、この Amazon ストレージブログの記事を読んで、AWS Backup でコスト配分タグを使用する方法を学んでください。

この記事を読んでいただきありがとうございました。

翻訳はクラウドサポートエンジニアの黒川が担当しました。

Kenneth Hui

Kenneth Hui

Kenneth Hui は AWS 州政府と地方自治体チームのシニアソリューションアーキテクトです。エンタープライズテクノロジー分野で 20 年以上の経験があり、複数の移行プロジェクトを主導したり、参加したりしてきました。ケンはニューヨーク市に住んでおり、さまざまなレストランで食事をしたり、さまざまな料理を試したりすることを楽しんでいます。