AWS Startup ブログ

「Amazon Personalize によって、工数をかけずにレコメンド機能を実現できた」SARAH 社の AWS 活用事例

3 社のスタートアップ企業による Amazon Personalize の活用事例を 3 日間連続でご紹介します!

第 3 弾はグルメコミュニティアプリ「SARAH」や外食ビッグデータ分析サービス「FoodDataBank」を提供する株式会社SARAH。同社はパーソナライズされたレコメンデーションの機能を提供する AWS のマネージドサービス Amazon Personalize を活用しています。「SARAH」のユーザーにおすすめの投稿を表示するために、Amazon Personalize を使用してレコメンドデータを生成しているのです。

今回は SARAH 社へのサポートを行うアマゾン ウェブ サービス ジャパン スタートアップ事業本部 アカウントマネジャーの植本 宰壮が、株式会社SARAH 取締役 CTO 林 健一 氏とエンジニアリングマネージャー豊田 悟之 氏にお話を伺いました。

レコメンド機能を簡単に実装できるのが魅力的

植本:SARAH 社の事業とサービスの概要を教えてください。

林:株式会社SARAH は「よりよいごはんとの出会いをつくる」をミッションに掲げるフードテックカンパニーです。レストランの一皿に対する投稿を中心としたグルメコミュニティアプリ「SARAH」を提供しています。このアプリは、レストラン単位ではなくメニュー単位での投稿や検索が可能で、サービスを通じてユーザーと一品との出会いを作り出します。

他には、外食ビッグデータ分析サービス「FoodDataBank」も提供しています。これは食品の企画・開発や飲食業界のマーケティングに携わる方などをサポートする SaaS 型のサービスで、「全国の飲食店で何が食べられているか」や「美味しいと思われるメニューの傾向」といった外食トレンドを分析できます。

植本:Amazon Personalize の導入を決めた経緯についてもお話しください。

林:私たちはこれまで「SARAH」を長く運営していますが、その過程で、おすすめの料理を提案する機能のユーザーニーズが非常に高いことがわかってきました。そこで、実現方法を検討するために、当時の AWS 担当者に相談しました。

すると、プレビュー版がリリースされて間もない頃の Amazon Personalize をご紹介いただいたのです。工数をほとんどかけずにレコメンド機能を実現できるのが魅力的でした。検証作業を行い、良好な結果が出たため導入を決めました。

SARAH 取締役 CTO 林 健一 氏

植本:弊社の提案が、御社のサービス展開にプラスに働いて良かったです。

豊田:AWS の担当者と情報交換したことで、システム改善に好影響があった例は他にもあります。たとえば最近では、Amazon Aurora Serverless v2 のことを教えてもらったのですが、その情報交換が導入を検討するきっかけになりました。

私たちは、システムの運用を効率化するために AWS のマネージドサービスを積極的に取り入れたいと考えており、弊社のサービスに活かせる提案をいただけるのは非常にありがたいです。

開発からリリースまでをわずか 2 週間で実現

植本:ここからは、Amazon Personalize を用いたレコメンド機能の開発エピソードを伺いたいです。

林:私たちは複数の種類のレコメンド機能を開発しているのですが、そのうちの 1 つに Amazon Personalize を組み込みました。事前の検証作業を除くと、開発からリリースまでわずか 2 週間ほどでした。弊社はスタートアップですしエンジニアの人数も限られているのですが、少ない人員でもスピーディーに開発できたことに、Amazon Personalize の利点を感じました。

Amazon Personalize を組み込んだ機能では、1 日 1 回のペースでレコメンドデータを自動更新し、ユーザーに適したコンテンツを表示しています。「SARAH」をより良いサービスへと改善していくうえで、「ユーザーが魅力的だと感じる投稿の割合をなるべく増やすこと」は重要です。だからこそ、レコメンド機能の実装は大きな意義がありました。ユーザーからの評判も良好ですので、サービスの UX 向上にこの機能が有効に働いていると実感しています。

植本:Amazon Personalize に関連した箇所のシステムアーキテクチャを教えてください。

林:「SARAH」は iOS アプリと Android アプリ、そして Web アプリで提供しています。そのバックエンドには REST API のサーバーがあり、ユーザーからのリクエストを API が受け付けて、処理をしたうえでレスポンスを行います。Amazon Personalize が生成したレコメンドデータを、この API が返す構造になっています。

バックエンドのインフラとしては、API を Amazon EC2 上で動かしており、リレーショナルデータベースとして Amazon Aurora を使っています。また、他にもキャッシュ情報やワーカーのジョブを取り扱うために Redis を、検索機能を実現するために OpenSearch を使っており、画像データは Amazon S3Amazon CloudFront で取り扱っています。

植本:インフラ運用の工数を削減するために、Amazon EC2 ではなく AWS Fargate を利用する企業もありますが、SARAH 社が Amazon EC2 を使っているのには理由がありますか。

林:私たちがサービス開始したのが 7 年前くらいなのですが、当時はまだ AWS Fargate がリリースされていなかったのが大きな理由です。その頃に Amazon EC2 で構築したサーバーを現在も使っています。もちろん古いアーキテクチャのままで良いとは考えておらず、より良いシステムの実現のためアーキテクチャ改善は継続的に実施しています。

SARAH エンジニアリングマネージャー 豊田 悟之 氏

豊田:たとえば、一部のシステムは Amazon EC2 から AWS Fargate・AWS Lambda への移行を行っており、運用にかかる工数を削減するようにしています。システムのレガシーな部分を、今後も積極的に改善していきたいです。

植本:アーキテクチャ改善に関するエピソードとして、他の切り口でもお聞かせください。現在、Amazon Personalize だけではなく Amazon SageMaker を用いたレコメンドの仕組みも構築中だと伺いました。

林:そうですね。Amazon SageMaker によって構築したレコメンド機能の検証作業を行っており、将来的にはプロダクション環境へも反映する予定です。

また、レコメンド以外の機能でも Amazon SageMaker を活用しています。「SARAH」の iOS アプリと Android アプリでは、ユーザーのカメラロールにある画像の種類を認識し、料理の写真のみを選別してアップロードできる機能を実装しています。この画像処理のモデルの検証作業に、Amazon SageMaker を用いています。

マネージドサービスにより運用工数を減らし、より本質的な業務にフォーカス

アマゾン ウェブ サービス ジャパン スタートアップ事業本部 アカウントマネジャー 植本 宰壮

植本:サービスやアーキテクチャを今後どのように発展させたいですか。

林:これからも引き続き「よりよいごはんとの出会いをつくる」という目標にフォーカスして事業を推進したいと考えています。

「SARAH」に関しては、ユーザーにとって最適な情報を必要なタイミングで、そのユーザーへとダイレクトに届けられるようにするのが最終的なゴールです。その状態を実現するために、レコメンドなどの機能をさらに強化して、ユーザーがアプリを開けば理想の一皿に出会える世界観を目指します。

また、「FoodDataBank」もサービス改善を続けて、良質なデータを事業者に提供していきたいです。そうすることで、よりよいごはんがさらに世の中に増えていくような、好循環を生み出したいと考えています。その目標を実現するうえでシステムの力は必要不可欠ですから、AWS のサービスを効果的に利用しながらより良い開発体制を私たちの力で実現していきたいです。

豊田:私からはシステムのアーキテクチャについてお話すると、弊社のシステムは 7 年前に構築されたためレガシーな構成になっている部分もあり、今後はそうした技術的負債を返していく必要があります。

今回のインタビューでも登場したように、AWS には有益なマネージドサービスがいくつもありますから、そうしたサービスを積極的に取り入れていきたい。そうすることで、システムのインフラ運用にかかる工数をなるべく低減し、ユーザーへの提供価値に直結するような機能の開発に注力し、事業に貢献していきたいです。

植本:ぜひ今後も、御社の事業成長のお手伝いをさせてください。どうもありがとうございました。


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