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Amazon Monitron による多拠点工場群設備の不良予知保全ダッシュボードデモを AWS Summit 2024 Japan で展示します (Part 1)
複数の拠点に工場やプラントを持つ企業において、何千もあるモーターやポンプなど設備の保全タイミング管理は操業品質とコストに影響する重要な課題です。 AWS Japan ソリューションアーキテクトチームに所属する執筆者は、この課題に対するソリューションのデモを開発し、来る 2024 年 6 月 20 日、 21 日に開催する “ AWS Summit 2024 Japan “ にデモ展示します。デモは産業設備の予知保全サービス Amazon Monitron と AWS IoT SiteWise などのさまざまな AWS サービスを統合し、多拠点にある工場設備群の不良予知状況を可視化・スコア化して、 設備の健全性を一元管理するダッシュボードの展示です。このデモは、 Monitron が検知する設備の不良予兆状態を収集・蓄積し、拠点毎の健全性を評価します。そして保全が必要なタイミングで信号灯を点灯し、チャットアプリに通知して点検作業員を割り当てます。 このブログではこのデモで解決したい課題とユースケース、実現手法を二回に分けて解説します。
Part 1 では、主に開発したソリューションが解決する課題とデモの内容を解説します。 Part 2 ではデモの中で利用している各サービスの役割を解説します。
このブログを読んでいただきたい読者
工場、物流拠点、プラントを操業する企業の方、モーター・ベアリング・ポンプ・ファンなど多くの設備を稼働し、その保守・点検を改善することに課題をお持ちの方、そして、自社製の設備や製品の予知保全に関心を持つ方を想定しています。
本デモのユースケースと背景
本デモの想定するユースケースと背景は、AWS ブログ「産業設備の予知保全サービス Amazon Monitron の紹介と、多拠点・大規模な設備群における保全効率化への取り組み」にて説明しておりますので、御覧ください。
開発したデモが目指すもの
今回私達は、前述の大規模運用計画を支援するダッシュボードの概念を実際にデモンストレーションとして実演し、Amazon Monitron の予知保全機能が他のサービスや EAM (Enterprise Asset Management: 設備資産管理) システムと連携し、大規模な工場やプラントなど多拠点の設備保守に後付で予知保全機能を組み込めること、そして現場と全体管理者がコラボレーションして復旧に当たる運用を改善できることを示すことを目指しました。これにより、デモを見たユーザーは Monitron を活用した大規模な設備保全の効果、統合の難易度、運用への影響を理解し、より深く、検討をすすめることができます。
AWS Summit 2024 Japan イベントでは 3 種類のミニチュアファクトリーデモを展示します。そこで、私達はそれらのミニチュアファクトリーが日本の3箇所の離れた地域に存在すると想定して、全拠点の設備に Monitron センサーを配備し、各拠点の設備稼働状況を1つのダッシュボードで可視化・分析するソリューションを作ることにしました。
- 神奈川県川崎市:プロセス工場
- 大阪府:検査センター
- 山形県:組立工場
(図: 日本の 3 拠点に分散した工場を表現)
さらに、私達は Amazon Monitron が設備保全タイミングを検知したことを視覚的に表現することで、現場での保全のイメージを具体化したいと考えました。そこで、拠点の健全性スコアが低くなったときに信号灯とチャットツールという2つの通知手段と連携するユーザーストーリーを考えました。
デモの内容
アクター (登場人物) として拠点全体を遠隔地から一元管理する「全体管理者」と各拠点に勤務し拠点の保全業務を行う「保全担当」を定義しました。ユーザーストーリーでは「全体管理者」と「保全担当」がソリューション実装を通じてお互いに情報を連携し、保全業務にあたることをストーリーを想定しました。下の図が、登場人物、設備、サービス全体の役割と行動を示したストーリーボードです。
(図: 多拠点工場群設備保全のストーリーボード)
多拠点・大規模な産業設備群の保全には多数の機器状態の効率的な把握や作業員との連携、 EAM と協調した機器交換計画の管理が必要になる場合があります。例えば、多数ある設備ごとに保全にかけつけるのは非効率的ですので、拠点ごとに現在保全が必要な機器数を知り、保全要員のスケジュールを決定したり、過去の保全履歴から不良の原因を分析し、保全マニュアルを改善したり機器交換のタイミングを計画します。また、予知保全により実際の不全より前に兆候を予知できる場合、保全作業に緊急性はなく、複数の作業をまとめることができます。
設備群管理ダッシュボード
多拠点にある多数の設備群を一元的に管理するためのダッシュボードには Amazon Managed Service for Grafana (AMG) を採用しました。AMG は時系列データをもとにした美しいダッシュボードを簡単・柔軟に提供できます。
過去の状況を確認できるよう、Grafana の GUI で表示期間を変更できるようにしました。
(図: 設備群管理ダッシュボードの画面)
(図: ダッシュボードに表示する設備状態の項目)
ダッシュボードのレイアウトは大きく 3 つの階層にわけました。管理者は画面の上から順に下に向かって視線を移動することで、より詳細な情報を分析できます。
プロジェクトビュー
上の階層は「プロジェクトビュー」として全拠点の健全性と過去の設備不良原因や対処内容の統計を表示します。左には地図があり、拠点の位置を表示します。中央には全拠点の健全性を表すスコアとスコアの時系列変化を示すグラフを表示します。右側には4つの円グラフがあります。この円グラフはそれぞれ、「拠点の状態の内訳」と、保守員が過去に Monitron アプリを使って報告した「障害モード」「障害の原因」「保守員が実行したアクション」の統計を表示します。スコアはサイトビュー各拠点の状態から計算式に基づいて算出します。スコアが一定値を下回ると、「複数の機器に異常の兆候が見られるため、メンテナンス作業の実施が必要」と判定し、保全要員への通知アクションを発生します。デモでは信号灯を点灯させ、チャットアプリへ保全要請を投稿します。 EAM と統合している場合は、 EAM でチケットを上げることができるでしょう。拠点に緊急の保全を要する設備がある場合はスコアが大きく下がり、より緊急性を要求する通知アクションを発生します。
サイトビュー
2 段目の階層は「サイトビュー」として各拠点の健全性と設備状態の分布を表示します。拠点ごとに 2 つの棒グラフと 1 つの円グラフがあります。 2 つの棒グラフは現在の拠点への保全の必要性を表しています。拠点内で一定数以上の設備で不良の予兆を検知した場合、棒グラフが黄色に変化します。円グラフは拠点内の全設備の状態の割合を表示します。すべてが正常であれば円グラフは緑色になります。 Monitron が設備の不具合予兆を検知していたり、すでに検知した後メンテナンス状態としたものは別の色で表示します。これにより、全体管理者は拠点の設備保全状態を確認できます。
設備ビュー
3 段目の階層は「設備ビュー」として、全拠点の全設備の状態と履歴を表示します。画面には 2 つの表があります。左の表は現在正常でない設備を表示します。例えば「不具合の予兆を検知 (Warning) 」「すぐに保全が必要 (Alarm) 」「メンテナンス中 (Need Maintenance) 」などです。右の表はこれまで発生した設備状態の変化の履歴を表示します。表示期間を変更したり、「拠点名」「設備名」といった表の項目でフィルタリングも可能です。 不具合箇所を特定したら、保守要員は Amazon Monitron アプリを用いてより詳細は設備状態 (振動や温度のグラフ、 Monitron が発生した不具合情報) を確認し現場で保全します。
デモンストレーション:拠点単位の保全推奨タイミングの判定と通知
イベント会場で私達は「検査センターにある複数の設備で不良予兆が検知された」というストーリーに基づいたデモを行います。具体的には以下のステップを再現します。
- STEP 1 : はじめはすべての設備が正常状態で稼働しています。
- STEP 2 : 検査センターにある複数の設備で “Warning” (不良の予兆を検知) が発生します。これにより、プロジェクトビューのスコアが低下します。その後、信号灯が点灯し、さらにチャットツールに保全を推奨するメッセージが投稿されます。監視者や保全要員はサイトビューや設備ビューを確認し、保全対象設備を特定します。
- STEP 3 : 保全要員の担当者が決定すると、その保全要員はチャットアプリにある「私が担当します!」ボタンを押し、チームに保全を開始したことを知らせます。保全要員は Monitron アプリの「確認」ボタンを押します。これにより、ダッシュボードの設備は「NEED MAINTENANCE (保全中)」状態に変化します。
- STEP 4 : 保全要員が現場で設備を点検し、適切な対処後に、 Monitron アプリに保全結果のフィードバックを入力し送信します。 フィードバックを受け取った Amazon Monitron は設備が正常な状態になったと解釈して状態を「正常 (Healthy) 」に変更し予知保全を再開します。 ダッシュボードは Monitron からの状態変化に連動してスコアを上げ、サイトビュー、プロジェクトビューの状態を変更するとともに、信号灯を消灯し、チャットアプリへ正常への変化を通知します。
Part 1 のおわりに
このブログでは、2 部構成の Part 1として、主に開発したソリューションが解決する課題とデモの内容を解説しました。 このあとに続く Part 2 では開発したデモの中で利用している各サービスの役割を解説します。
より詳しく知るには
この記事では、大規模・多拠点の設備を有する産業に向けた、設備群の不良予兆検知ダッシュボードとその実装構成について、 AWS Summit 2024 Japan で展示するデモンストレーションの内容を解説しました。
製造業を始めとする産業での AWS 利用について、実際の事例やリファレンスアーキテクチャを知りたい方は、 AWS の製造業に対する取り組みを御覧ください。
今回のデモで用いた各 AWS サービスの詳細はサービスの紹介ページを御覧ください。
- Amazon Monitron (産業設備の不良予知保全)
- AWS IoT SiteWise (IoT データコレクター及びインタプリタ)
- Amazon Managed Service for Grafana (運用メトリクス、ログ、トレースのためのスケーラブルで安全なデータ視覚化)
- AWS IoT Events (イベントを検出し、対応)
- AWS Chatbot (チームチャットチャンネルから AWS のリソースを関し及び操作)
- AWS Lambda (イベント発生時にサーバーレスで処理を実行)
- Amazon Kinesis Data Streams (リアルタイム分析向けストリーミングデータサービス)
AWS サービスについてより詳しく学びたい方は、サービス毎のオンデマンドセミナーを公開しています。
パトライト社製品に関するご質問は、パトライト社のサイトからお問い合わせください。
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このブログについて
このブログの内容は AWS Japan のソリューションアーキテクト 吉川晃平 、安田京太 、梶山 政伸 、三好史隆 、秦将之 、大井友三 が開発し、吉川晃平 が執筆しました。