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2019 年にリリースされた Amazon RDS および Aurora 機能のまとめ
Amazon Relational Database Service (Amazon RDS) で、クラウド内でのリレーショナルデータベースのセットアップ、運用、およびスケーリングが簡単になります。費用効果が高く、容量のサイズ変更も可能です。同時に、ハードウェアのプロビジョニング、データベースのセットアップ、パッチの適用、バックアップといった時間を費やす管理作業を自動化します。そのため、お客様はアプリケーションの開発に集中でき、アプリケーションが必要とする高速な性能、高可用性、セキュリティ、さらに互換性の実現に取り組むことができます。
セルフマネージドデータベースをマネージドデータベースサービスに移行することは新しいスタンダードで、当社は Amazon RDS に矢継ぎ早に機能を追加し続けています。2019 年は忙しい年でした。そこで、さまざまなデータベースエンジンにかけて導入された機能をまとめてみましょう。
Amazon RDS は、10 年以上前の 2009 年 10 月に初めてリリースされました。 Amazon RDS for MySQL からすべてが始まりました。それ以来、合計 7 つのデータベースエンジンオプションに対応するまでになりました。その 7 つとは、Amazon Aurora MySQL、Amazon Aurora PostgreSQL、PostgreSQL、MySQL、MariaDB、Oracle Database、および Microsoft SQL Server です。
2019 年に、Amazon RDS と Aurora データベースエンジン全体で 100 を超える機能をリリースしました。過去の記事をおさらいしたい方は、2018 年のまとめと 2017 年のまとめをご覧ください。まず、データベースの戦略と運用に最大の影響を与えると考えられる、各データベースエンジンと主要なリリースについて説明します。次に、2019 年にリリースしたすべての機能を便宜上分類して以下に列記します。
- 新しいインスタンスタイプ、リージョン、バージョン – さまざまなデータベースデプロイオプションを提供
- 管理性 – データベース管理の簡素化と専門家の推奨事項の提供
- 開発者の生産性 – ビルダーがビジネスにとって意味のあるタスクに集中できるようにする
- パフォーマンス – アプリケーションのニーズを満たすためにデータベースのパフォーマンスとスケールを向上させる
- 可用性/災害復旧 – アベイラビリティーゾーンと AWS リージョン全体で高可用性データベースをデプロイする
- セキュリティ – 安全なデータベース操作の促進
2019 年の主な機能のリリース
Amazon Aurora MySQL
re:Invent 2018 で最初に立ち上げられた Aurora Global Database では、データベースを複数のリージョンに拡張して、災害復旧と高速なグローバル読み取りを実現しました。2019 年に、この機能は、最大 5 つのセカンダリリージョン、MySQL 5.7、および単一リージョンデータベースからのインプレースアップグレードで強化されました。
2019 年に Aurora MySQL 向けにリリースした他の 2 つの主要な機能は、Aurora Multi-Master と Aurora Machine Learning です。Aurora Multi-Master は、複数のアベイラビリティーゾーンにわたって Aurora データベースの複数の読み取り/書き込みインスタンスを作成できるようにすることで、可用性を向上させます。Aurora Machine Learning を使用すると、機械学習 (ML) ベースの予測を SQL クエリでアプリケーションに直接追加できます。詳しくは、AWS ニュースブログをご覧ください。
Amazon Aurora PostgreSQL
Aurora PostgreSQL については、Serverless のサポートを発表しました。これにより、アプリケーションのニーズに基づいて、データベースを自動的に起動、シャットダウン、容量をスケーリングします。Aurora Serverless は、使用頻度の低いアプリケーション、新しいアプリケーション、変動するワークロード、予測不可能なワークロード、開発およびテストデータベース、マルチテナントアプリケーションなどのユースケースにメリットがあります。また、PostgreSQL レプリケーションスロットを使用した論理レプリケーションのサポートを開始しました。これにより、RDS for PostgreSQL で使用するのと同じ論理レプリケーションツールを使用できるようになりました。さらに次のサポートを開始しました。Database Activity Streams は、暗号化された JSON ストリームで詳細な監査情報を提供します。Cluster Cache Management は、フェイルオーバー後に以前のデータベースのパフォーマンスを再開します。S3 インポートは CSV ファイルからのデータのロードを簡単かつ迅速にします (S3 エクスポートは 2020 年の初めに追加されました)。ログの CloudWatch へのエクスポートにより、PostgreSQL ログのモニタリングが容易になりました。PostgreSQL バージョンのサポート 11 により、PostgreSQL コミュニティの最新機能にアクセスできるようになりました。また FedRAMP HIGH に準拠するようになりました。
Amazon RDS for Oracle
Oracle Active Data Guard を使用してリージョン内およびクロスリージョンリードレプリカを起動することにより、可用性と災害復旧を改善しました。リードレプリカにより、最大 5 つのフルマネージド Oracle Active Data Guard スタンバイデータベースを簡単に作成できます。これを使用して、長時間実行される分析クエリの読み取りスケーリングとオフロードを行うことができます。プライマリインスタンスと同じリージョンまたは異なるリージョンにリードレプリカを作成でき、災害復旧のためにレプリカを完全な読み取り/書き込みデータベースに昇格できます。
昨年は、Amazon S3 統合によるデータの入出力機能により、RDS for Oracle への移行も簡素化しました。S3 統合オプションを使用すると、Amazon RDS for Oracle インスタンスと Amazon Simple Storage Service (S3) 間の高速で安全なファイル転送を簡単にセットアップでき、データのロードとアンロードの複雑さを大幅に軽減できます。
Amazon RDS for SQL Server
データベースインスタンスあたりのデータベースの最大数を 30 から 100 に増やすことで、データベースインスタンスをさらに統合してコストを節約できるようにしました。
もう 1 つの素晴らしい機能強化は、移行に関するものです。一部のお客様が RDS SQL Server への移行時にネイティブバックアップとリストアを実行すると、移行プロセスの最終段階で、希望よりも長いダウンタイムが発生する場合があります。フルネイティブバックアップと組み合わせてネイティブ差分およびログバックアップをサポートすることで、ダウンタイムをわずか 5 分に短縮できます。
最後に、SQL Server 2017 Enterprise Edition の Always On 可用性グループをリリースしました。Always On では、フェイルオーバー時間の高速化をサポートする Always On リスナーエンドポイントもローンチしました。
複数の Amazon RDS データベースエンジンにまたがるリリース
Microsoft SQL Server、MySQL、PostgreSQL のデータベースエンジンのために Amazon RDS on VMware をローンチすることにより、Amazon RDS のデプロイオプションを拡張しました。ハイブリッド (クラウドとオンプレミス) データベース環境を実行する必要がある場合、これにより、オンプレミスの VMware vSphere 環境で Amazon RDS の背後にある自動化を使用するオプションがもたらされます。Jeff Barr が、詳しい AWS ニュースブログの記事で、ご利用いただける機能と開始方法を紹介しています。
簡素化されたシングルサインオンについては、Amazon RDS PostgreSQL、RDS Oracle、RDS MySQL のための AWS Managed Active Directory Service を介して、Microsoft Active Directory (AD) を使用できます (AD は SQL Server でもサポートされ、2020 年初頭に MySQL でリリースされました)。これで、同じ AWS リージョン内の異なる VPC に同じ AD を使用できます。異なるアカウントが所有する共有 Active Directory ドメインにインスタンスを加えることもできます。
最後に、Amazon RDS MySQL と Aurora MySQL 向けの Amazon RDS Proxy のパブリックプレビューを発表しました。その名前が示すように、Amazon RDS Proxy はアプリケーションとデータベースの間に位置し、データベース接続をプールして共有することで、データベースの効率とアプリケーションのスケーラビリティを向上させます。データベースのフェイルオーバーの場合、Amazon RDS プロキシは自動的にスタンバイデータベースインスタンスに接続する一方、アプリケーションからの接続を維持します。これにより、Amazon RDS および Aurora Multi-AZ データベースのフェイルオーバー時間を最大 66% 削減します。最後に、データベースの認証情報とアクセスは AWS Secrets Manager と AWS Identity and Access Management (IAM) で管理できるため、アプリケーションコードにデータベースの認証情報を埋め込む必要がありません。Amazon RDS for PostgreSQL および PostgreSQL と互換性のある Amazon Aurora のサポートは、近日提供予定です。詳細については、「AWS Lambda で Amazon RDS プロキシを使用する」を参照してください。
データベースエンジン別の機能
Amazon Aurora MySQL
新しいインスタンスタイプ、リージョン、バージョン
- T3 および R5 インスタンスファミリーをローンチ
- R5.8xl、R5.16xl、R5.24xl インスタンスのサポートを提供開始
- AWS 南米 (サンパウロ) リージョンで利用可能に
- Aurora Global Database が可用性を 14 の AWS リージョンに拡張
- MySQL 互換の Amazon Aurora Serverless が NWCD が運営するAWS 中国 (寧夏) リージョンで利用可能に
- パフォーマンスと管理性を改善するためにサポートされる機能の拡張リスト
管理性
- 2019 年の主なリリース: Multi-Master の一般公開
- Aurora Serverless は 1 ユニットの容量と新しいスケーリングオプションをサポート
- AWS アカウントにまたがるクローン作成をサポート
- Aurora ストレージのコストアロケーションタグをサポート
- MySQL 5.7 向けの GTID ベースのレプリケーションのサポート
開発者の生産性
- 2019 年の主なリリース: Aurora がデータベースから直接機械学習をサポート
- Amazon Aurora Serverless MySQL 5.6 がデータ API のサポートを開始
- MySQL 5.7 データベースから Amazon Aurora for MySQL への迅速な移行
- Amazon RDS の推奨事項が、Amazon Aurora のベストプラクティスのガイダンスを示す
パフォーマンス
可用性/災害復旧
- Aurora グローバルデータベースが、Aurora MySQL 5.7 でサポート
- Aurora グローバルデータベースが、複数のセカンダリリージョンをサポート
- Aurora が、グローバルデータベースへのインプレース変換をサポート
- Amazon Aurora Serverless が、スナップショットの共有とリージョン間コピーをサポート
- ゼロダウンタイムパッチのサポート
セキュリティ
- Aurora サーバーレスが、ログを Amazon CloudWatch に発行
- Aurora Serverless クラスターが、共有 VPC で起動可能に
- Aurora が、AWS GovCloud (米国) で FedRAMP-High に準拠
Amazon Aurora PostgreSQL
新しいインスタンスタイプ、リージョン、バージョン
- Aurora PostgreSQL 2.2 が、PostgreSQL 10.6 互換に
- Aurora PostgreSQL 2.3 が、PostgreSQL 10.7 互換に
- Aurora PostgreSQL 3.0 が、PostgreSQL 11.4 互換に
- AWS 南米 (サンパウロ) リージョンで利用可能に
- R5 と Medium インスタンスタイプのサポート開始
管理性
- タグを Aurora PostgreSQL クラスターからデータベーススナップショットにコピー
- Aurora が、Aurora ストレージのコスト割り当てタグをサポート
- AWS アカウントにまたがるクローン作成をサポート
- Aurora Serverless が、Data API をサポート開始
開発者の生産性
- 2019 年の主なリリース: PostgreSQL 互換の Amazon Aurora が論理レプリケーションをサポート
- Amazon RDS の推奨事項が、Amazon Aurora のベストプラクティスのガイダンスを示す
- Amazon S3 からのデータインポートのサポート
パフォーマンス
可用性/災害復旧
- 2019 年の主なリリース:AuroraPostgreSQL Serverless のサポート
セキュリティ
- リアルタイムモニタリングのためのデータベースアクティビティストリーム
- 暗号化されていないスナップショットから暗号化された Aurora PostgreSQL データベースを復元
- AWS GovCloud (米国) で FedRAMP-High 準拠
- Aurora Serverless クラスターが、共有 VPC で起動可能に
- PostgreSQL ログファイルを Amazon CloudWatch Logs に発行
Amazon RDS for MySQL と Amazon RDS for MariaDB
新しいインスタンスタイプ、リージョン、バージョン
- MySQL と MariaDB は R5 および T3 インスタンスタイプ をサポート
- MySQL バージョン 5.7.25、5.7.24、および MariaDB バージョン 10.2.21 をサポート
- MySQL 5.7 から MySQL 8.0 へのアップグレードの互換性チェック
- MySQL がマイナーバージョン 8.0.16 をサポート
管理性
開発者の生産性
- 2019 年の主なリリース:Amazon RDS プロキシのご紹介 (プレビュー)
パフォーマンス
- MySQL が最大ストレージサイズを 64 TiB に、最大 I/O パフォーマンスを 80,000 IOPS に増加
- Amazon Aurora と Amazon RDS で、MySQL 5.7 データベースからのより高速な移行が可能に
セキュリティ
Amazon RDS for PostgreSQL
新しいインスタンスタイプ、リージョン、バージョン
- PostgreSQL 11 が Amazon RDS でサポート開始
- T3 インスタンスタイプをサポート
- マイナーバージョン 11.2、10.7、9.6.12、9.5.16、9.4.21 および マイナーバージョン 11.4、10.9、9.6.14、9.5.18、9.4.23 をサポート
- PostgreSQL 12 Beta 2 バージョンのプレビュー版をサポート
- AWS GovCloud (米国) リージョンで PostgreSQL 11 およびマイナーバージョン 11.4、10.9、9.6.14、9.5.18、9.4.23 をサポート
- PG 12 Beta 3 のプレビュー版をサポート
- マイナーバージョン 11.5、10.10、9.6.15、9.5.19、9.4.24 のサポート、トランスポータブルデータベース機能の追加
- マイナーバージョン 11.5 および 10.10 のサポート、および AWS GovCloud (米国) リージョンにトランスポータブルデータベース機能を追加
管理性
開発者の生産性
パフォーマンス
セキュリティ
- 2019 年の主なリリース: Amazon RDS for PostgreSQL が、Kerberos および Microsoft Active Directory によるユーザー認証をサポート
- Amazon RDS for MariaDB が、最大ストレージサイズを 64 TiB に、I/O パフォーマンスを 80,000 IOPS に増加
- Performance Insights が、Amazon RDS for MariaDB で一般的に利用可能に
Amazon RDS for Oracle
新しいインスタンスタイプ、リージョン、バージョン
- 2019 年 1 月の Oracle パッチセットアップデート (PSU) およびリリースアップデート (RU)、4 月の PSU および RU、2019 年 7 月の PSU および RU のサポート
- Oracle Database 18c および Oracle Database 19c のサポート
- 2019 年 10 月の Oracle パッチセットアップデート (PSU) およびリリースアップデート (RU) のサポート
- SQLT 診断ツールバージョン 12.2.180725 のサポート
- Oracle Application Express (APEX) バージョン 18.1 と 18.2 および バージョン 19.1 のサポート
- Oracle Enterprise Manager Cloud Control 13c 向けの Oracle Management Agent (OMA) バージョン 13.3 のサポート
- T3 および Z1d インスタンスタイプのサポート
- M5、T3、および R5 インスタンスタイプのサポートが、NWCD が運営する AWS 中国 (寧夏) リージョン、および Sinnet が運営する AWS 中国 (北京) リージョンで利用可能に
- 新しいインスタンスサイズのサポート (R5/M5 8xl/16xl)
- 追加のリージョンで Z1d、X1、および X1e インスタンスタイプをサポート
管理性
- 2019 年の主なリリース: Amazon S3 統合のデータ入出力機能をサポート
開発者の生産性
- Oracle のサポートにより、Oracle Enterprise Manager Cloud Control の EMCTL コマンドを呼び出すためのサポートを追加
- ALLOWED_LOGON_VERSION_SERVER および ALLOWED_LOGON_VERSION_CLIENT sqlnet.ora パラメータのサポート
パフォーマンス
- Amazon RDS for Oracle が、最大ストレージサイズを 64 TiB に、I/O パフォーマンスを 80,000 IOPS に増加
- Amazon RDS Performance Insights が、Amazon RDS for Oracle で SQL レベルのメトリクスをサポート
可用性/災害復旧
- 2019 年の主なリリース: Amazon RDS for Oracle が、読み取りのスケーラビリティと可用性のために Active Data Guard でリージョン内のリードレプリカをサポートするように
- 2019 年の主なリリース:Amazon RDS for Oracle が、クロスリージョンリードレプリカでマネージド災害復旧とデータ近接をサポートするように
セキュリティ
- 2019 年の主なリリース:Kerberos および Microsoft Active Directory でユーザー認証をサポート
Amazon RDS for SQL Server
新しいインスタンスタイプ、リージョン、バージョン
管理性
- 2019 年の主なリリース: データベースインスタンスごとのデータベース制限を最大 100 に増加
- 2019 年の主なリリース: 差分復元とログ復元のサポート
- マルチファイルネイティブリストアのサポート
- サーバーレベルの照合順序の変更をサポート
開発者の生産性
パフォーマンス
可用性/災害復旧
- 2019 年の主なリリース: SQL Server 2017 向けの Always On 可用性グループのサポート
セキュリティ
Amazon RDS データベースエンジン全体に
新しいインスタンスタイプ、リージョン、バージョン
- 2019 年の主なリリース: Amazon RDS on VMware の一般公開
- AWS アジアパシフィック (香港) リージョン
- AWS 中東 (バーレーン)
管理性
- Amazon RDS が 1 秒あたりの請求のサポートを開始
- Amazon RDS が Storage Auto Scaling のサポートを開始
- Amazon RDS により、詳細なバックアップストレージ請求が可能に
パフォーマンス
- Performance Insights が、Amazon RDS for MySQL、RDS for PostgreSQL、Aurora MySQL、Amazon RDS for SQL Server、および Amazon RDS for Oracle のカウンターメトリクスをサポートするように
- Performance Insights が T2 および T3 インスタンスタイプをサポート
セキュリティ
まとめ
過去 10 年間は非常にワクワクするようなものでしたが、当社のサービスはまだ産声を上げたばかりで、お客様のための革新の手綱を緩めることは決してありません。 まだ Amazon RDS を試していない場合は、Amazon RDS の無料利用枠を使って無料でお試しいただけます。ご不明な点がございましたら、このブログ記事にコメントしてください。
著者について
Justin Benton は、アマゾン ウェブ サービスのシニアプロダクトマネージャーです。
Yoav Eilat は、アマゾン ウェブ サービスのシニアプロダクトマネージャーです。