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re:Invent 2021 新発表トップ10 – ヘルスケア・ライフサイエンス

この記事は “re:Invent Top 10 Announcements for Healthcare & Life Sciences” を翻訳したものです。

ヘルスケア・ライフサイエンス領域のお客様は、コラボレーションの仕方、データ主導の臨床および業務上の意思決定、プレシジョンメディシンの実現、医療コストの削減の方法について革新を進めています。AWS for Healthは、AWSのサービスとAWS Partner Networkソリューションの組み合わせによりヘルスケア・ライフサイエンス領域のお客様向けに設計された厳選したオファリングです。また、このオファリングは、実績があり簡単にご利用いただける機能を提供することで、お客様のイノベーションのペースを高め、医療データの可能性を引き出し、治療の開発とケアにむけてよりパーソナライズされたアプローチの開発をご支援します。

今年のre:Inventでも、新しいサービスと既存のサービスに対する新機能を発表することで、これらのオファリングがさらに広がりました。また、あらゆる業界で数百もの新サービスや主要機能の発表が行われましたが、AWS for Healthチームは、特にヘルスケア・ライフサイエンス領域のお客様にとって最もインパクトのある発表をこのトップ10のリストにまとめました。

ヘルスケア・ライフサイエンス向け新発表トップ10:

1. ヘルスケア・ライフサイエンス領域の中で最もエキサイティングな発表は、AWS Private 5Gの発表でした。これにより、プライベートセルラーネットワークを構築して5Gのテクノロジーメリットを活用しながら、プライベートネットワークのセキュリティときめ細かいアプリケーションとデバイスの制御を維持できます。医療機関にとっては、何千もの健康機器や医療機器を、プライベート5Gネットワークの低レイテンシと高帯域幅で接続できることを意味します。また、既存のITポリシーと統合し、ネットワーク容量をオンデマンドで拡張し、数回クリックするだけでデバイスを追加し、使用した容量とスループットに対してのみ料金を支払うこともできます。医薬品製造領域向けには、AWS Private 5G は、デバイス、センサー、機器、レガシーな装置を接続し、接続されたマシン間での信頼性の高いデータリンクにより、組立ラインの生産をリアルタイムで追跡する新しい方法を提供します。リリースに関するブログセッション動画をご覧ください。

2. AWS Graviton3Amazon EC2 M6i for Epic on AWSなどの新しいハードウェアが発表されました。AWS Graviton3は、AWSが設計した最新世代のARMベースのプロセッサで、Amazon EC2のワークロードに対して最高の価格パフォーマンスを提供します。AWS Graviton3プロセッサは、AWS Graviton2プロセッサと比較して、コンピューティングパフォーマンスが最大 25% 向上、浮動小数点パフォーマンスが最大2倍、暗号化ワークロードパフォーマンスが最大2倍高速化されます。さらに、Graviton3プロセッサは、bfloat16のサポートを含め、MLワークロード向けのGraviton2プロセッサと比較して最大3倍のパフォーマンスを発揮します。また、AmazonEC2 M6i for Epicの拡張機能により、新しいインスタンスサイズ (m6i.32xlarge) が提供されます。このサイズには、128個のvCPUと512GBのメモリとペアになった160,000IOPS、および他の類似したEC2インスタンス間の転送中の暗号化が含まれます。M6iは、M5インスタンスと比較して33%多いメモリと20%高いメモリ帯域幅を提供します。M6iは価格とパフォーマンスにより、Epic on AWSのような高性能でミッションクリティカルなシステムに最適です。この新しいインスタンスにより、AWS は大規模な医療システムに求められるパフォーマンスを提供すると同時に、総運用コストを削減します。AWS Graviton3のリリースに関するブログと、セッション動画をご覧ください。

3. AWS IoT TwinMakerを使用すると、既存のIoT、ビデオ、エンタープライズアプリケーションデータを、データの再取り込みをしたり、別の場所に移動したりすることなく、既存の場所で使用できます。データソースを物理システムの仮想レプリカにバインドし、実際の環境を正確にモデル化する自動生成されたナレッジグラフで時間を節約できます。これにより、病院、研究開発機関、医薬品製造領域のオペレーションチームは、機器や装置のイマーシブ3Dビューを取得し、オペレーションメトリクスを表示して、効率の最適化、生産の拡大、パフォーマンスの向上を実現できます。リリースに関するブログと、セッション動画をご覧ください。

4. Amazon Inspectorは、ネイティブでデプロイが簡単で、スケーラブルな脆弱性管理ソリューションです。新しいAmazon Inspectorは、従来の定期的な評価モデルと比較して、継続的な脆弱性モニタリングを提供することで、脆弱性管理に独自のアプローチを採用しています。これにより、医療機関ではサイバーセキュリティ体制が強化され、医療機器メーカーにとっては、規制対象デバイスのリスク管理戦略をサポートできます。Amazon Inspectorはすべてのワークロードを自動的に検出し、脆弱性がないか継続的にスキャンします。これにより、マニュアル作業なしで、ほぼリアルタイムで脆弱性情報を顧客に提供できます。次に、最新の共通脆弱性識別子(CVE)情報をネットワークのアクセシビリティなどの要素と相関させ、脆弱なリソースの優先順位付けに役立つ有意義なリスクスコアを作成します。リリースに関するブログと、セッション動画をご覧ください。

5. Amazon EMR ServerlessAmazon EMRのサーバーレスオプションです。これにより、データアナリストやエンジニアは、クラスターやサーバーを設定、管理、スケーリングすることなく、オープンソースのビッグデータ分析フレームワークを簡単に実行できます。Amazon EMRのすべての機能とメリットを享受でき、クラスターの計画と管理に専門家がいなくてもかまいません。リリースに関するブログと、セッション動画をご覧ください。同様に、Amazon Redshift Serverlessは、データウェアハウスクラスターのプロビジョニングと管理を行うことなく、分析を実行およびスケーリングするサーバーレスオプション (プレビュー) です。Amazon Redshift Serverlessでは、データアナリスト、開発者、データサイエンティストを含むすべてのユーザーがAmazon Redshiftを使用して、数秒でデータからインサイトを得ることができるようになりました。これで、データウェアハウスインフラストラクチャの管理について考えるのではなく、データからインサイトを得ることに集中できます。リリースに関するブログと、セッション動画をご覧ください。

6. Amazon SageMaker Canvasは、ビジネスアナリストに視覚的なポイントアンドクリックインターフェイスを提供することで、機械学習 (ML) へのアクセスを拡大します。これにより、機械学習の経験やコードを1行も記述しなくても、正確なML予測を自分で生成できます。SageMaker Canvasを使用すると、クラウドおよびオンプレミスのデータソースのデータにすばやく接続して、データセットを結合し、MLモデルをトレーニングするための統合データセットの作成を行うことができます。SageMaker Canvasは、データエラーを自動的に検出して修正し、MLに対するデータ準備状況を分析します。リリースに関するブログと、セッション動画をご覧ください。また、Amazon SageMaker Serverless Inferenceにより、基礎となるインフラストラクチャを設定または管理することなく、推論用のMLモデルを簡単にデプロイできることも発表しました。リリースに関するブログと、セッション動画をご覧ください。

7. AWS Mainframe Modernizationは、オンプレミスのメインフレームワークロードをAWS上のマネージドランタイム環境に移行できる独自のプラットフォームです。AWSメインフレームのモダナイゼーションにより、リプラットフォームと自動リファクタリングという2つの一般的な移行パターンが可能になります。移行の準備状況を評価および分析し、プロジェクトを計画できます。実装およびテストが完了すると、メインフレームワークロードをAWS Mainframe Modernizationマネージドランタイム環境にAWSにデプロイできます。リリースに関するブログと、セッション動画をご覧ください。

8. AWS Lake Formationは、セキュアなデータレイクを数日で簡単にセットアップできるサービスです。データレイクとは、一元管理され、キュレーションされたセキュアなリポジトリで、すべてのデータを元の形式および分析のために処理された状態で保存します。Lake Formationには、データレイクの構築、保護、管理を簡素化する3つの新機能が導入されています。これには、複数テーブルのトランザクションをサポートして復元力のあるデータパイプラインの構築を簡素化するLake Formation Governed Tablesが含まれます。Governed Tablesは、データの保存方法を監視して自動的に最適化し、クエリ時間が一貫して高速になるようにします。AWS Lake Formationでは、行レベルとセルレベルのアクセス権限もサポートするようになりました。これにより、閲覧権限のあるデータの一部のみにアクセス権をユーザーに付与することで、機密情報へのアクセスを簡単に制限できるようになりました。研究開発、製造、営業のデータを管理する製薬企業にとって、これらのツールはエンタープライズデータ戦略の導入時に柔軟性、パフォーマンス、および制御を提供します。

9. Amazon S3 Glacier Instant Retrievalストレージクラスは、アクセスがほとんどなく、ミリ秒単位での取り出しが必要な、存続期間が長いデータに対して、最も低コストのストレージを提供するアーカイブストレージクラスです。Amazon S3 Glacier Instant Retrievalは、S3スタンダードストレージクラスと同じスループットとミリ秒のアクセスで、アーカイブストレージへの最速アクセスを提供します。医療画像や診療記録、研究データ、ゲノミクスなど、パフォーマンスが重視されるユースケースで、ほとんどアクセスされないデータに即時にアクセスする必要があるデータ向けに設計されています。リリースに関するブログと、セッション動画をご覧ください。

10. AWS Local Zonesの国際展開 — 新しいAWS Local Zonesは、世界の21か国以上の26都市以上で利用できるようになりました。これらの新しいAWSローカルゾーンは2022年に利用可能になり、米国全土の16都市のローカルゾーンに参加し、1桁ミリ秒のレイテンシーを必要とするアプリケーションをエンドユーザーまたはオンプレミスのインストールに提供できるようになります。ボストン、シカゴ、ダラス、デンバー、ヒューストン、カンザスシティー、ラスベガス、ロサンゼルス、マイアミ、ミネアポリス、ニューヨークシティ、フィラデルフィア、ポートランドなどの13の大都市圏に一般公開されている AWS Local Zonesと、さらに2022年後半に開始を予定しているアトランタ、フェニックス、シアトルの3つのAWS Local Zonesを使用して、米国全土の都市のエンドユーザーに超低レイテンシーのアプリケーションを提供できます。アムステルダム、アテネ、バンガロール、ベルリン、ボゴタ、ブリュッセル、ブエノスアイレス、チェンナイ、デリー、コペンハーゲン、ヘルシンキ、ヨハネスブルグ、コルカタ、リスボン、マニラ、ミュンヘン、ナイロビ、オスロ、パース、プラハ、リオデジャネイロ、サンティアゴ、トロント、バンクーバー、ウィーン、ワルシャワなど、26を超える新しいAWS Local Zonesが導入されました。お客様は、2022年以降、世界中の都市でエンドユーザーまたはオンプレミスのインストールに超低レイテンシーのアプリケーションを提供できるようになります。AWS Local Zonesの詳細をご覧ください。

これらの発表に加えて、ヘルスケア・ライフサイエンス領域のお客様が多くのプレゼンテーションを行いました。お客様のセッションを見て、お互いから学び続けるための機会を提供したいと考えています。

  • Revolutionizing colorectal cancer with detection innovation at Medtronic (On-demand)
  • Accelerate pediatric research with ML and healthcare interoperability at Children’s Hospital of Philadelphia (On-demand)
  • Delivering life-changing medicines at AstraZeneca with data and AI (On-demand)
  • How Baxter has innovated digital health connectivity with AWS (On-demand)
  • Anthem HealthOS platform: The future of health data interoperability (On-demand)
  • How cloud facilitates digital transformation at Baptist Health (On-demand)
  • Inside Johnson & Johnson’s cloud transformation (On-demand) and Bold plans, big results: Johnson & Johnson’s data warehouse migration (On-demand)
  • Make sense of your health data with Amazon HealthLake (On-demand)
  • Innovating for digital health equity- featuring UC Davis (On-demand)
  • Improving the human experience in healthcare with Olive (On-demand)

GileadとAWSの発表: Gilead and AWS Collaborate on Development and Delivery of New Medicines for Patients.
AWSをプリファードクラウドプロバイダーとして、GileadはAWSの機械学習とアナリティクスを使用して、患者のプライバシーとセキュリティを優先しながら、よりよい治験デザインやデータドリブンな意思決定を進めています。また、GileadはAWSでのエンタープライズリソースプランニング(ERP)のワークロードを変革し、グローバルビジネス全体でSAP S/4HANAを実装しています。

RocheとAWSの発表: ロシュの大規模な医療データ利活用を AWS が支援
世界最大級のヘルスケア企業の1つがAWSテクノロジーを使用して、安全な研究コラボレーションを促進し、新しい診断テクノロジーを提供し、医療データから洞察を引き出し、患者のケアと健康状態を向上させています。

PfizerとAWSの発表: AWS、ファイザーの医薬品開発と臨床製造の加速化を支援
AWSはPfizerと協力して、より迅速なイノベーションと臨床製造オペレーションの改善を支援し、明日の治療法の開発を支援しています。

UC Davisの発表: New initiative to make UC Davis Health a leader in digital medicine.
学術医療センターに拠点を置く世界初のクラウドイノベーションセンターを開設。

例年と同じように、re:InventはAWSがイノベーションへの継続的な取り組みを示したという点で重要なイベントでした。ヘルスケア・ライフサイエンス領域のお客様にとって、AWS Private 5GやAmazon Inspectorなどの画期的なテクノロジーが追加されたことで、AWSが規制の厳しい業界で最も差し迫った課題の解決支援に注力していることが明確に示されています。2022年も、ヘルスケア・ライフサイエンス領域のお客様やパートナーとともに革新を続けていくことを楽しみにしています。

AWS for Healthのサービスとソリューションが世界中のお客様にどのように使用されているかについては下記をご覧ください。
https://aws.amazon.com/health/

翻訳はIndustry Solutions Architectの松永が担当しました。原文はこちらです。