Amazon Web Services ブログ

カメラ・映像を活用したスマート製品の技術トレンド (AWS Summit Tokyo 2023)

みなさん、こんにちは!
先日 2023 年 4 月 20 ,21 日、AWS 国内最大のイベントである AWS Summit Tokyo が 4年ぶりにオンサイト開催されました!

本ブログでは、映像やカメラとクラウド技術について、Summit でのお客様事例・登壇を元に最新情報をお伝えします。ハードウェアの進化、通信コストの低下、クラウドの進歩により映像やカメラとクラウドを活用したテクノロジーの需要は益々伸びており、Summit でのお客様・パートナー様・AWS によるデモや事例登壇はまさに技術のショーケースとなりました。本ブログでは、関連する展示や登壇を 5つ技術領域 (映像伝送&録画、移動体からの映像伝送、映像加工・配信、映像分析、エッジコンピューティング)毎にご紹介します。最新の技術トレンドや、クラウドと画像・映像を活用したソリューションのアーキテクチャについてご理解を深めていただければと思います。

なお、事例登壇されたお客様の資料は、別途 Summit Tokyo の Website よりダウンロード可能になる予定です 。


映像伝送&録画(VSaaS):

カメラ映像の録画や監視をクラウドで実施する VSaaS (Video Surveillance as a Service)の形態はすでに一般的になっています。数千、数万台を超える多数のカメラからの映像を受け取って保存・配信するには大規模なスケーラビリティと効率的な運用、そして実用的なコストが必要になります。

セーフィー株式会社 “Safie”

セーフィー株式会社が2015年より提供を開始したクラウド録画サービス ”Safie“ は業界のパイオニアであり、現在 18.6万台という国内最大シェア(セーフィー様ご登壇より)のプラットフォームを運営されています。セーフィー様のご講演では、最大 1,400 台に上る仮想サーバーに水平スケールさせた映像受配信の仕組みの開発・運用効率性を高めるため、AWS の様々なマネージドサービスを活用してモダナイズした過程を共有いただきました。

富士ソフト株式会社/i-PRO株式会社 “i-PRO Remo.”, “moduca”

Web事例化されている i-PRO 株式会社の VSaaS “i-PRO Remo.” の遠隔監視機能を富士ソフト株式会社が構築された例をご紹介。両社より、Amazon Kinesis Video Streams によりスケーラブルな映像伝送機能を素早く開発し、合わせてエンジニアリングプロセスの改革を行って開発生産性を大きく構築された例をご紹介いただきました。また、ブースにおいても、AI 機能を内蔵したモジュールカメラ“moduca”によるデモを展示いただきました。

株式会社USEN “USEN Camera”

株式会社 USEN では、店舗向けの防犯カメラや来店客分析を行う USEN Camera というサービスを提供されています。USEN Camera ではカメラ映像のクラウド録画に Kinesis Video Streams を活用しており、外出先や自宅などから店舗の様子を確認することができます。また、店舗向け BGM サービスである USEN MUSIC と連携することで、映像を分析したデータから来店客に合わせた曲を AI でチューニングするサービスも提供されています。Kinesis Video Streams や AWS IoT Core などのフルマネージドサービスを活用しサーバーレスな構成を組むことで、運用工数を削減しながらもスケーラビリティに優れたアーキテクチャを実現されています。


移動体(ロボット、ドローン)からの映像伝送

ロボットやドローンなどの移動体からの映像を受信し、監視する用途でのクラウド活用も進んでいます。IoT との組み合わせてデバイスの管理・制御やテレメトリデータ送信を行いつつ、映像伝送により機器がある場所の状況をリアルタイムに把握します。

SEQSENSE株式会社 “警備ロボットSQ-2“

SEQSENSE 株式会社では、自律移動型セキュリティロボットを開発しサービスとして提供されています。ロボットに搭載された4つのカメラの映像をクラウドへ収集し、Kinesis Video Streams を用いて保存やオンデマンド再生を実現されています。また、IoT Core を用いてロボットからのデータ収集や遠隔制御を行われており、マネージドサービスを活用することで、運用管理のコストを下げつつも、スケーラビリティや信頼性、耐久性に優れたアーキテクチャを実現されています。詳細なアーキテクチャについてはこちらの記事で紹介しておりますので、あわせてご参照ください。

KDDI スマートドローン株式会社/iret 株式会社 “スマートドローン“

KDDI スマートドローン株式会社の “スマートドローン” について、パートナーの iret 株式会社がドローンの運航管理システムについて、登壇やブース展示を実施されました。大規模なデバイスプラットフォームの中で AWS IoT Core を活用し、初期接続処理の自動化 (Fleet Provisioning) や、デバイス証明書による認証・認可を行ったり、 Amazon Elemental MediaConnectSRT 配信機能を用いて、Level 4 目視外飛行に対応した遠隔映像転送のための耐障害性の高い映像配信について報告されました。


映像加工・配信

スポーツや音楽などのイベントをよりパーソナライズして楽しむために、多数のカメラ映像を元にユーザー毎に加工した映像を生成し、配信する仕組みが脚光を浴びつつあります。映像を加工する大規模な演算能力と視聴のレイテンシ削減のための低遅延の映像生成能力が求められます。

キヤノン株式会社 “ボリュメトリックビデオ ライブ配信システム“

キヤノン株式会社は、多視点映像を生成するボリュメトリックビデオのライブ配信システムを展示されました。スタジオに設置されている複数台のカメラから生成した 3D データを、各エンドユーザーにリアルタイムに転送します。ユーザーは自分の好きな画角で映像を見ることができるようになります。
大容量のデータを安定かつ低遅延で転送するために Amazon Direct Connect、ユーザーごとに 3D 映像レンダリングを行うためにユーザー 1 人につき Amazon EC2 (GPU)を 1 台利用しています。AWS のスケーラビリティを活かして、ライブイベントや視聴者数に応じたサーバーの増減を行います。


映像分析

クラウドに転送したカメラ映像を AI/ML により分析し、地理情報と組み合わせスマートシティのためのデータ取得や、介護・福祉における見守りに用途での映像活用も実用化されています。

株式会社サイバーエージェント “センサス AI”

株式会社サイバーエージェントは、AI による交通量解析サービスの「センサス AI」を出展されました。スマートシティに必要な交通量解析を自動的、リアルタイムかつ高精度に実施するサービスで、道路の上に設置されたカメラの映像を Kinesis Video Streams でクラウドに転送し、Amazon SageMaker で開発した AI 画像認識モデルを用いて、悪天候下でも、映像内に映る人や対象物をリアルタイムに交通センサスの8区分に分類・測定することが可能です。

三菱電機株式会社 “MelCare ”

三菱電機株式会社では、IoT を活用した見守りサービスの MelCare と MeAMOR を提供されています。介護・福祉業界向けの見守りソリューションである MelCare では、カメラを搭載したセンサーデバイスからの動画を Kinesis Video Streams を用いてクラウドへ収集し、動画を分析することで、転倒などの異常を検知することができます。また、Kinesis Video Streams with WebRTC を用いることで、緊急時のリモート通話を行うこともできます。MelCare のサービス概要やアーキテクチャについては、こちらの記事で詳しく紹介しております。

 

AWS 展示 “カメラ映像からタイムラプス動画を生成”

AWS 展示の builders.flash EXPO では、クラウドに録画したカメラ映像からタイムラプス動画を作って日常を振り返ろうの記事をベースとした、ブースの来場者分析のデモを行いました。こちらのデモ展示では、Raspberry Pi に繋いだ USB カメラからの映像を Kinesis Video Streams に収集し、取り出した画像フレームから Amazon Rekognition によって来場者の年齢や性別、来場者数などの傾向を分析、リアルタイムに可視化しています。また、任意の時刻のタイムラプス動画を動的に生成することで、ブースの状況を遡って視覚的に確認することもできます。


エッジコンピューティング

工場の生産ラインでの検査工程といった耐障害性や低遅延が求められる状況では、エッジコンピューティングによる画像認識が必要になります。その場合でも、クラウドは、データの収集、モデルの開発や配信、デバイスの管理に力を発揮します。AWS ではエッジに導入可能な分析サービスや、エッジで任意の機械学習モデルを実行可能なデバイスをパートナー様との協働により展開しています。

AWS 展示: 製造/IoT EXPO : “外観監査の自動化・デジタルツインによる工場稼働状態の可視化”

モデルファクトリーデモ2ブースでは、工場の外観検査において画像認識をエッジで実行するデモをご覧いただきました。ベルトコンベア上に傷がついている製品が流れてきた場合、Amazon Lookout for Vision を使用して画像から製品欠陥を検出し、コンベアを制御してNG品と出荷品の仕分けを実施しています。デモでは Lookout for Visionをエッジデバイスに導入し、工場ネットワークが途切れてしまった場合でも機能し続けられるようにしています。エッジデバイスにはNVIDIA Jetson AGX Xavier が採用されており、おおよそ 200ms 程度で推論が可能です。

AWS展示:製造/IoT EXPO “産業向け AI サービス(AWS Panorama )”

同じくエッジデバイスブースでは、AWS Panorama を用いた棚モニタリングのデモも展示しました。AWS Panorama は、機械学習ok(ML)デバイスとソフトウェア開発キット(SDK)の集合体で、オンプレミスの IP カメラ群を接続しコンピュータービジョン(CV)を行えるようになります。デモでは棚にあるボトルの在庫状況を複数のカメラからリアルタイムに監視し、棚にある 品目の数が特定のしきい値を下回ったときにマネージャーに通知を行います。今回、Lenovo 様の Panorama 対応デバイス ThinkEdge SE70と、 i-PRO 様のモジュールカメラ “moduca” を使用して展示を行いました。


おわりに

Summit Tokyo 終了後、改めて映像やカメラに関するトピックを集めてみると想像以上の数となり、ブログも盛りだくさんの内容となりました。スマート製品における映像活用のトレンドは明白で、今回ご紹介した五つの領域はその中でも特徴的なものです。お客様は AWS を活用して先進的なサービスを開発し、それらはいずれも実用化もしくは実用化予定の段階に来ています。
今回ご紹介した、お客様の実際のビジネスで活用されている事例やアーキテクチャを参考に、新しいサービスの構想や、素早い立ち上げに役立てていただければと思います。

著者について

山本 直志

製造業を担当するスペシャリストソリューションアーキテクトとして、スマート製品やカメラなどの製品・サービスを提供されるお客様を様々な形でご支援しています。

三平 悠磨

ソフトウェアエンジニアとして会話 AI やロボット開発を経験しました。AWS では IoT スペシャリストソリューションアーキテクトとして、お客様の IoT 関連案件を支援しています。