Amazon Web Services ブログ

在名民放4局による動画・情報配信プラットフォームLocipo(ロキポ)におけるAWSの活用

在名民放4局共通で動画を中心とした配信プラットフォームを構築した背景

昨今、ITテクノロジーの急激な進化の中で放送局を取り巻く環境が大きく変化しており、地上波放送だけでなくインターネットを通じたOTT配信においてもコンテンツ展開をしていくことが、今後の事業継続をしていく上で必要であると考えている放送事業者が増えています。しかし、ローカル局が配信ビジネスに取り組む場合には、ローカル局単独での配信サービスではコンテンツ数において他の配信サービスに及ばない可能性が高い、という課題があります。この状況に対して、東海テレビ放送・中京テレビ放送・CBCテレビ・テレビ愛知の在名民放4局が協力し、東海エリアのコンテンツ集約を行い、視聴者への利便性を高めながら、エリアの視聴者を中心にサービスの展開ができるプラットフォーム「Locipo(ロキポ)」を構築・運用されています。

locipo_main_sp

Locipoの開発コンセプト

Locipoは、2018年春に在名局での検討開始から始まり、その後の継続的な情報交換やディスカッションを経て、2019年10月に在名4局で共同プラットフォーム構築・運営に合意し、2020年3月から、在名4局による新しい動画・情報配信サービスとして提供が開始されました。Locipoでは、ローカル局が導入および運用しやすい配信プラットフォームを構築するという観点から「低コスト運用」「緊急配信対応」「コンテンツのマルチウィンドウ対応」の3つのコンセプトを掲げており、基本的なサービスとして「番組配信」「ニュース(テキスト)配信」「ライブ配信」の3つのサービスをカバーされています。これらのコンセプトおよびサービスの提供を実現するために、既存の動画配信基盤サービスを利用するのではなく、アジャイル型の開発手法で自社開発をする方針を採用されつつも、基盤としてAWS MediaServicesAWS FargateAWS LambdaAmazon Simple Storage Service (Amazon S3)などのAWSサービスを利用することで、マネージドサービスの活用による低い運用コストと高い可用性を実現されています。

Locipo CMSおよびVOD構成

Locipoのシステム構成の中でも中核をなすCMSおよびVOD部分の構成を次に示します。

locipo-cms

 

CMSのメインアプリケーションは、Amazon CloudFrontおよびApplication Load Balancerの背後に設置されており、Control PlaneとしてAmazon Elastic Container Service (Amazon ECS)を採用し、Data PlaneとしてAWS Fargateを採用したRuby on Railsのアプリケーションとして構築されています。また、データベースにはAmazon Aurora MySQLを採用されています。動画ファイルについては、トランスコード前の動画ファイルがS3 Bucketにアップロードされたことをトリガーとして、AWS Lambda関数がAWS Elemental MediaConvertにJobを作成し、MediaConvertが配信用のHLS形式へのトランスコードおよびサムネイルの生成処理を行い、トランスコード済みのアセットを保存する用のS3 Bucketに出力しつつ、トランスコード結果がLambda関数を通してメインアプリケーションと連携されることになります。また、トランスコード済みの動画ファイルは、公開タイミングで公開用Bucketにコピーされることで、CDNを通してエンドユーザーに配信可能になります。ニュース素材については、CMSで登録されたクロール対象の各局のRSSおよびATOMを取り込んで配信されます。

「今回設計したCMSは、Locipo専用とは考えておらず、CMSから直接、他プラットフォームへの素材搬入が出来るように設計を行なっています。そのためLocipoの配信を行っているシステムとCMSは切り離されたシステムとなっています。サービス開始当初は、Locipoへの配信制御のみでしたが、将来的に自社以外のプラットフォームへのコンテンツ配信ができるように構築しており、GYAO!等自社以外のプラットフォームへの配信も一部開始しています。また、他CMSからの入稿にも対応できるように設計を行ない、既存の自社HP作成用の別CMSからのテキストコンテンツ収集にも対応できるようにしました。」と中京テレビ放送(株)インターネット事業部の北折氏は述べます。

Locipo ライブ配信構成

ライブ配信部分の構成を次に示します。

locipo-LIVE_1

ライブ枠の管理および配信パイプラインの制御はCMSを通して行います。そして、スケジュールで予定したライブ配信のタイミングで、AWS Elemental MediaLiveに対して、RTMPのストリームを入力し、HLS形式へライブエンコーディングを行い、高性能のライブ配信用のオリジンであるAWS Elemental MediaPackageへ入力することで、必要なパッケージング処理を行い、CDNを通して配信することが出来ます。また、事前にお気に入り登録をしておくことで、ライブ配信の開始前にPush通知を受けることが出来るのと、ライブ配信の終了後にはVOD化され、VOD視聴をすることも可能です。また、MediaLiveへの入力については、AWS Elemental Linkも併用されています。

加えて、Locipoでは、地震発生時等の突発的な事象が発生した際には緊急でライブ配信を行える必要があるため、緊急配信の仕組みも構築されています。緊急時ライブ配信に関しては、動画配信担当者が不在の状況でも報道の判断で緊急配信運用が可能である必要があるため、事前の手続きなしで、RTMP中継サーバに対してライブストリームの入力をスタートさせることにより、自動で配信パイプラインが構築され、即ライブ配信が行われる仕組みを構築されています。

locipo-live_2-emergency

おわりに

Locipoでは、東海テレビ放送・中京テレビ放送・CBCテレビ・テレビ愛知の在名民放4局およびテクノロジーパートナーとして株式会社アップストリームが協力し、AWS上に統合CMSおよび配信基盤を構築することで、コンテンツマルチ展開のランニングコストの大幅な削減を達成されています。また、アジャイル型の開発手法で自社開発をする方針を採用されたことで、高い俊敏性を持ってサービスを改善していくことが可能になっており、今後も更にサービス内容を拡充し、ローカルエリアに有益な情報を提供できるプラットフォームに成長させていくことを計画されているそうです。本記事が、動画配信ビジネスの立ち上げや改善などを検討されている読者の方の一助となれば幸いです。

参考リンク

*国内代理店様からAWS Elemental Linkが購入可能となりました。詳しくはこちらをご覧ください。

Locipo
AWS Media Services
AWS Media & Entertainment Blog (日本語)
AWS Media & Entertainment Blog (英語)

AWSのメディアチームの問い合わせ先: awsmedia@amazon.co.jp
※ 毎月のメルマガをはじめました。最新のニュースやイベント情報を発信していきます。購読希望は上記宛先にご連絡ください。

この記事はSA 石井 悠太が担当しました。