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AWS Supply Chain は ESG データコンプライアンスを簡素化します

組織は、広大なグローバルサプライチェーンを横断してサステナビリティコンプライアンスを維持するという複雑な課題に直面しています。従来の電子メールやバラバラなメッセージングツールを使用して、世界中のサプライヤーからデータを収集し、そのデータの正確性を監査することは非効率で間違いが発生しやすいです。組織が現代のサプライチェーン環境の中で舵取りする際、デジタルと物理的な変革を受け入れることは、レジリエンスを高め、コストを最適化し、持続可能な成長を促進するために不可欠です。また、サステナビリティの規制準拠と報告の要件に対応しつつ、既存のデータ収集プロセスを改善する必要があります。AWS データセンターハードウェアの規制コンプライアンスを検証する責任を負う Amazon の Global Trade and Product Compliance (GTPC) チームは、AWS Supply Chain Sustainability を活用することで大きな成功を収めています。取引先とのやり取りが改善され、データ収集プロセスが合理化され、詳細なデータ要求コンプライアンス追跡により、GTPC は年間約 3,000 時間の業務時間を節約できるようになる見込みです。

現在の電子メールとマニュアルのアプローチには、以下のような課題があります。

  1. データセキュリティの脆弱性:要件を守らないと、機密データが漏洩するリスクがあります。
  2. 分断された調整業務:別々のチームメンバーがサプライヤーからデータを要求すると、重複した要求、見落とされた要求、遅延した応答、非効率的な作業分担が発生します。
  3. 分断されたコミュニケーション:メールのスレッドでは、文書要求に関する一貫した会話を維持することが困難で、誤解とデータ取得の遅延が生じます。
  4. メトリクスの欠如:文書収集の進捗状況やサプライヤーの応答時間などのメトリクスを追跡できないため、パフォーマンスの監視とプロセス改善が阻害されます。

AWS Supply Chain Sustainability は、すべてのサプライヤーおよび取引先から ESG データを要求、収集、監査するプロセスを簡素化します。製品ライフサイクルアセスメント、製品安全基準の証明書、使用される有害物質に関する報告書などの詳細情報を要求するデータ収集フォームを簡単に配布できます。サプライヤーがフォームに記入すると、その回答がセキュアで監査可能なリポジトリに収集されます。この合理化されたアプローチにより、メールスレッドやファイルフォルダに散在する規制対応データの課題が解消されます。排出量、材料、その他の規制データを集中化された場所でアクセスでき、レポート作成、監査、分析が効率化されます。

この集中型モデルは、データ保護を強化し、冗長なデータを排除し、柔軟なワークロード割り当てを可能にします。構造化されたコミュニケーションを促進して遅延を減らし、データ主導の最適化のための広範囲にわたる追跡を可能にします。AWS Supply Chain は、分断されたデータとプロセスを統一することで、信頼できる唯一の情報源を提供し、可視性、コラボレーション、および業務効率を向上させます。メール主導のプロセスを集中型のデータ収集と報告の仕組みに置き換えることで、運用効率、コンプライアンス順守、協力会社との関係を改善し、相互の成長と成功のためのエコシステムを育成します。

このブログ投稿では、GTPC が AWS Supply Chain Sustainability を導入して、サステナビリティコンプライアンス成果物の収集プロセスを改善した方法を説明し、この解決策の使用方法について順を追ったガイドを提供しています。

Amazon GTPC は大幅な手作業を排除

GTPC チームは、規制コンプライアンスのために AWS データセンターのハードウェアを検証し、サプライヤーおよびテストラボと協力して必須ドキュメントを収集しています。通常、数千件のコンプライアンス成果物を収集し、その数は年々大幅に増加すると予想されています。GTPC チームは AWS Supply Chain Sustainability を活用し大きな成功を収めています。

「GTPC は AWS Supply Chain Sustainability モジュールを使用して、AWS サプライヤーからのコンプライアンス成果物の収集を管理し、監査履歴を保持しています。Sustainability モジュールは効率的でユーザーフレンドリーなツールで、パートナーとの重複した連絡やデータリクエストを回避し、要求の最新状況を全チームに提供できます。さらに、サプライヤーは必要なすべてのコンプライアンス成果物を1つの画面で確認できるため、サプライヤーエクスペリエンスも向上します。」GTPC のシニアマネージャー、 Nishant Jain の言葉です。

取引先とのやり取りの改善、データ収集プロセスの合理化、詳細なデータ要求のコンプライアンス追跡により、 GTPC は年間約 3,000 時間の業務時間を節約できるようになる見込みです。

GTPC が AWS Supply Chain Sustainability を成功裏に導入したことは、コンプライアンスデータ収集の合理化、サプライヤーとの協力関係の強化、業務効率の向上において、この製品の有効性を示しています。これらの魅力的な利点により、自社のサステナビリティ報告とコンプライアンス要件に対して AWS Supply Chain Sustainability を採用することで、GTPC と同様の成功を収めることができます。

次のセクションでは、AWS Supply Chain Sustainability のセットアップと使用開始の手順を説明し、サステナビリティデータ管理プロセスを変革する方法を順を追って紹介します。

前提条件

このブログ投稿では、あなたが前述のサービスの使用を理解しており、次の前提条件を満たしていることを前提としています:

  1. Amazon Web Services, Inc. (AWS) のアカウントをお持ちです。アカウントをお持ちでない場合は、アカウント有効化ガイドに記載されている手順に従ってください。
  2. AWS Supply Chain のアカウントも必要になります。まだお客様でない場合は、AWS Supply Chain のウェブサイトをご覧いただき、詳細をご確認の上、サインアップしてください。

AWS Supply Chain Sustainability を活用してコンプライアンスを合理化

分かりやすくするため、このブログでは AWS Supply Chain Sustainability を利用する2種類のユーザータイプに言及しています。要求者とは、このケースでは GTPC のように、コンプライアンス文書プロセスを管理する担当者のことです。パートナーとは、要求者から文書要求を完了する必要のある部品、材料、または商品を提供するサプライヤーやベンダーのことです。以下のセクションでは、要求者とパートナーの両方の役割について、定義されたユーザーエクスペリエンスと設定を概説しています。

サステナビリティダッシュボードは、要求者が取引先のオンボーディングおよびあらゆる成果物データリクエストの状況を確認できるメイン画面です。次のスクリーンショットにサンプルのダッシュボードが表示されています。

sample dashboard

最初のページには、 Getting Started の概要と、主要な導入指標を含む Partner Overview セクションが含まれています。 Onboarding metrics は、段階別の取引先の参加状況を要約しています。Data requests は、成果物収集リクエストの状況を要約しています。サンプルのスクリーンショットでは、リクエスト組織の取引先参加成功率は 38%、成果物データリクエストの回答率は 30%です。これにより、要求者は取引先の参加とリクエストのフォローアップ活動を優先付けすることができます。

要求者は、コンプライアンスレポート文書を要求するために、3つのステップに従います: 1) 取引先を招待する、2) 成果物データを要求する、3) 取引先の回答を確認する。

要求者のインタラクションおよびプロセス

ステップ1: 取引先を招待する

要求者側では、取引先を 2 つの方法で追加できます。パートナー概要画面に直接情報を入力することで、取引先情報を手動で追加できます。また、取引先の情報が外部のサプライチェーン管理システムで管理されている場合は、サプライチェーンデータレイク (SCDL) に取引先の情報を取り込むこともできます。これらのオプションにより、新規および既存の取引先を柔軟に追加できます。追加後、取引先に対して成果物データリクエストを行うために、取引先を招待する必要があります。招待プロセスでは、取引先が AWS Supply Chain を通じた双方向通信を承認することを確認します。これにより、取引先のビジネスワークフローを簡素化した管理が可能になり、取引先が成果物収集リクエストを表示して応答するために必要となります。取引先の招待画面を以下に示します。

trading partner invite

ステップ2: データリクエストを作成する

要求者側では、次のスクリーンショットに示すように、取引相手に送信するデータリクエストのタイプを選択できます。シンプルなレポートテンプレートを選択するか、前回のデータリクエストで保存したテンプレートを使用できます。データリクエストのタイプを選択すると、リクエスト名、説明、データリクエストの詳細などの主要なレポートパラメータを入力する必要があります。また、レスポンス形式を設定したり、取引相手に従ってもらう詳細なガイダンスの提供もできます。

data request type initial

data request type final

ステップ3:取引先の回答を確認する

要求者としては、「サステナビリティ」ページの Data Request の下に、開始されたすべてのデータリクエストとその主要なマイルストーンを確認できます。次のスクリーンショットに示されています。リンクをクリックすると、特定のデータリクエストを選択し、取引先の提出内容を確認できます。成果物の有効性、リクエストの完全性を評価したり、追加のリクエストを行ったり、アプリケーションから直接追加情報を要求できます。

initiated data requests

取引先のインタラクションおよびプロセス

次のセクションでは、取引先の役割とアプリケーションとの対話について説明します。取引先は、成果物収集リクエストに対して2つのステップで対応できます。 1) 要求者の招待を確認して承認する、2) データリクエストを確認して応答する。

ステップ1: 要求者の招待を確認して承認する

取引先として、AWS Supply Chain に参加し、データ収集の共同作業のための要求者の招待を受け入れるためのメールを受け取ります。その後、オンボーディングプロセスを完了することで、プロフィールを設定できます。オンボーディングが完了し、共同作業の招待を受け入れると、要求者に通知されます。要求者はデータ収集要求を送信できるようになります。

ステップ2: データリクエストを確認して応答する

取引先として、完了する必要があるすべてのデータリクエストの概要を示すダイジェストメールを受け取ります。次に、メールのリンクをクリックすると、成果物データリクエスト画面に接続され、保留中のリクエストをすべて表示できます。下図のように、成果物データリクエストページに直接移動して、オープンデータリクエストを表示し、必要な情報を提供できます。リクエストを拒否し、該当する理由コードの文書化もできます。要求者は、データリクエスト送信を確認し、すべての応答が完了した場合はワークフローを終了します。

artifacts data request screen

サステナビリティのセットアップと構成に関する追加情報と詳細は、AWS Supply Chain ユーザーガイドに記載されています。

AWS Supply Chain Sustainability は、GTPC の課題に対処するために以下の利点を提供しました。

  1. シームレスなコミュニケーション: AWS Supply Chain により、GTPC とそのサプライヤーおよび取引先間のシームレスなコミュニケーションが可能になり、深い対話とタイムリーな対応が可能になりました。
  2. 可視性の向上: GTPC は作業の重複を最小限に抑え、リソースの活用を最大化することで、ワークフロー内で時間を節約することができました。この可視性により、透明性と説明責任が向上し、持続可能な実践の改善案が特定され、規制の非準拠リスクが軽減されました。
  3. 監査可能なコミュニケーション:AWS Supply Chain により、GTPC とその取引先間の監査可能なコミュニケーションが容易になり、やり取りと交換の明確な記録が確保されました。
  4. セキュリティコンプライアンスの改善: AWS Supply Chain は、アプリケーションを通じて重要な成果物の交換を効果的に簡素化し、データを安全かつ確実に転送する方法を提供しました。GTPC はデータの監査可能な記録を持ち、データ収集と検証プロセスの前例のない可視性を獲得しました。
  5. パフォーマンス追跡:GTPC は成果物収集の進捗状況とサプライヤーの応答時間を追跡し、必要に応じてデータ要求を調整することができました。このようなプロセスの可視性と制御により、GTPC は規制コンプライアンスの進捗に影響を与える可能性のある取引先ネットワークの変更、課題、問題を認識することができました。

まとめ

消費者や規制当局が透明性と説明責任を求める中、組織は自社の事業活動とサプライチェーンにわたり、正確かつ包括的なサステナビリティデータを収集する圧力が高まっています。取引先ネットワークから信頼できるデータを入手することは、意味のある分析し、戦略的な意思決定に役立て、進化するサステナビリティ基準とコンプライアンスに準拠するために不可欠です。しかし、多くの企業は非効率的な手作業のプロセスとバラバラなデータソースに苦しんでいます。

AWS Supply Sustainability を活用することで、Amazon の Global Trade and Product Compliance (GTPC) チームは、コンプライアンスデータ収集プロセスを合理化することに成功しました。毎年数千の成果物を収集する責任がある GTPC は、集中型の自動化ソリューションを採用することで、業務効率の大幅な改善を実現しました。取引先とのやり取りの改善、データ収集の合理化、詳細なコンプライアンス追跡により、GTPC は年間約 3,000 時間の業務時間を節約できるようになる見込みです。

GTPC の成功は、AWS Supply Chain Sustainability がサステナビリティデータ管理プロセスに変革的な影響を与えることを示しています。この解決策の中央集権的アプローチは、散在するデータ、分断された通信、可視性の欠如に関連する課題を排除し、同時にサプライヤーとの協力と運用効率を向上させます。これらの魅力的な利点により、サステナビリティ報告およびコンプライアンス要件に対して AWS Supply Chain Sustainability を採用することで、同様の改善を推進できます。

AWS Supply Chain を訪問して、持続可能なビジネス慣行を通じた相互の成長と成功を促進するエコシステムの詳細を学びましょう。

本ブログはソリューションアーキテクトの水野 貴博が翻訳しました。原文はこちら

著者について

Shree Vivek Selvaraj

Shree Vivek Selvaraj は、AWS Supply Chain のシニアスペシャリストソリューションアーキテクトです。彼の役割は、サプライチェーン幹部と技術アーキテクトと協力し、顧客の問題を理解し、意図したビジネス成果を達成するための適切なソリューションを提案することです。彼は、重工業、バイオ製薬、ハイテク、小売りEコマースなど、フォーチュン500企業の幅広い業界で、オペレーション、サプライチェーン、リーン & シックスシグマ、コア製品管理を通じて14年以上の業界経験を持っています。Shree はグレーターオースティンエリアに拠点を置いています。