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IoT データの取り込みと可視化のための7つのパターン – ユースケースに最適なものを決定する方法

この記事は 7 patterns for IoT data ingestion and visualization- How to decide what works best for your use case の日本語訳です。

モノのインターネット(IoT)を始めたばかりでも、すでに数百万台の IoT デバイスが接続されていても、IoT データから抽出される価値を最大化する方法を探しているのではないでしょうか。IoT デバイスのデータには、報告されたテレメトリデータ、メタデータ、状態、コマンドとレスポンスの中に、豊富な情報が含まれていることがあります。しかし、適切なレポート作成および可視化ソリューションを持つことは、業務効率を最大化し、ビジネス成果を実現するために必要な洞察を得るための鍵となります。

それゆえ、AWS Well-Architected のようなフレームワークは、管理、パフォーマンス、コスト、および運用の観点から最適なソリューションを選択するのに役立ちます。例えば、リアルタイムでデータを提供できるレポートと可視化ソリューションを探しているかもしれません。あるいは、完全にカスタマイズ可能で、インサイトを検索できるソリューションをお探しかもしれません。

このブログ記事では、AWS の様々な IoT レポート作成と可視化ソリューションについて説明します。リアルタイム、ニアリアルタイム、スケジュールに沿ってレポートを提供できる7つの異なるアーキテクチャパターンを紹介します。さらに、各ソリューションのユースケース、更新頻度、データ取り込みプロセス、アーキテクチャ、および複雑さに関するデータポイントも提供します。

アーキテクチャーのパターン

下図はすべてのアーキテクチャパターンを集約したものであり、各パターンの詳細は以降のセクションで説明します。

パターン1:AWS IoT Greengrass ストリームマネージャー

概要

AWS IoT Greengrass のストリームマネージャーは、大量の IoT データを AWS クラウドに送信することをより簡単かつ信頼性の高いものにします。ストリームマネージャーは、ローカルでデータストリームを処理し、自動的に AWS クラウドにエクスポートします。この機能は、機械学習(ML)推論などの一般的なエッジシナリオと統合され、データは AWS クラウドまたはローカルストレージにエクスポートされる前に、ローカルで処理および分析されます。ストリームマネージャーは、接続が断続的または制限されている環境でも動作するように設計されています。使用できる帯域幅、タイムアウトの動作、およびコアの接続または切断時にストリームデータをどのように処理するかを定義することができます。

メトリクスと分析

ストリームマネージャーは、以下の AWS の主要な出力先へのエクスポートをサポートしています。

  • AWS IoT SiteWise: AWS IoT SiteWise は、産業用機器からのデータを大規模に収集、整理、分析することができます。
  • Amazon Kinesis Data Streams: Kinesis Data Streams は、大容量データを集約し、データウェアハウスやマップリデュースクラスターにロードするためによく使用されます。
  • AWS IoT Analytics: AWS IoT Analytics を使用すると、データに対して高度な分析を行い、ビジネス上の意思決定や機械学習モデルの改善に役立てることができます。
  • Amazon S3 オブジェクト: Amazon S3 を使用して、大量のデータの保存と取得を行うことができます。

レポート作成

レポートは、使用する AWS サービスによって異なります。例えば、AWS IoT SiteWise パターンではリアルタイムモニタリングのために AWS IoT SiteWise Monitor を、Kinesis Data Firehose パターンではレポートのために QuickSight を使用することがしばしばあります。

なぜこのパターンが有用なのか

  • AWS IoT Core が提供するフリート管理やモニタリング機能を必要としない、またはデータを他のサービスにルーティングする前にエッジでデータを修正する必要がないシステムにとって、これは素晴らしいコスト効率の高いソリューションとなりえます。
  • カスタムの組込みオフライン管理とバッファリング最適化をサポートするため。IoT アプリケーションは、ストリームごとにストレージの種類、サイズ、データ保持のポリシーを定義し、ストリームマネージャーがストリームを処理およびエクスポートする方法を制御することができます。

パターン2:AWS IoT SiteWise (+ AWS IoT SiteWise Monitor)

概要

デバイスにインストールされた AWS IoT Greengrass ソフトウェアは、オープンソースのエッジランタイムとクラウドサービスを提供し、インテリジェントなデバイスソフトウェアの構築、展開、管理を支援します。AWS IoT SiteWise コンポーネントを使用すると、ローカルデバイスと機器データを AWS クラウド上の AWS IoT SiteWise のアセットプロパティに送信するために Greengrass と統合することができます。AWS IoT SiteWise Edge ソフトウェアを通じて、オンプレミスで簡単に機器データを収集、整理、処理、監視することができます。

メトリクスと分析

AWS IoT SiteWise は、機器とプロセスのパフォーマンスメトリクスの計算をサポートします。これらのメトリクスは、機器の問題、生産ギャップ、品質欠陥など、さまざまな種類の無駄を特定するのに役立ちます。AWS IoT SiteWise のデータは AWS IoT Core で利用でき、AWS IoT Core のルールを介して AWS IoT Analytics や Amazon Kinesis などの他の分析サービスで利用することが可能です。

レポート作成

AWS IoT SiteWise モニターは、AWS IoT SiteWise にすでに取り込まれモデル化されたアセットからデータを自動的に発見し、可視化することができます。コードを書くことなく、フルマネージドのウェブアプリケーションをすぐに提供します。

AWS IoT SiteWise for Grafana プラグインは、AWS IoT SiteWise が AWS クラウドに保存したデータを Grafana ダッシュボードで監視することを可能にします。

なぜこのパターンが有用なのか

  • 製造業のオペレーションの改善: 製造ライン、組み立てロボット、工場設備からのパフォーマンスメトリクスを監視し、改善の機会を発見して対処します。
  • 資産のメンテナンスを最適化: 過去とニアリアルタイムのデータを使用したリモート資産監視により、機器の問題をより迅速に防止、検出、解決します。
  • 資産データのライブトレンドチャートの表示(ノーコード、フルマネージドウェブアプリケーション)

パターン3:AWS IoT Core + AWS IoT Analytics + Amazon QuickSight

概要

AWS IoT Core は、接続されたデバイスがクラウドアプリケーションや他のデバイスと簡単かつ安全にコミュニケーションすることを可能にします。AWS IoT Core を使用すると、アプリケーションは、すべてのデバイスを追跡し、それらがオフラインであっても、常にコミュニケーションすることができます。デバイスから収集したデータは、MQTT メッセージ経由で AWS IoT Core に送信でき、IoT ルールを使用して、データの分析のために AWS IoT Analytics にデータを取り込むことができます。

メトリクスと分析

AWS IoT Analytics は、IoT デバイスからのデータを分析するために必要なステップを自動化します。AWS IoT Analytics は、IoT データをフィルタリング、変換、拡張してから、分析用に時系列データストアに保存します。デバイスから必要なデータのみを収集し、数学的変換を適用してデータを処理し、デバイスの種類や場所などのデバイス固有のメタデータでデータを拡張してから保存するよう設定できます。その後、ビルトインの SQL クエリエンジンを使ってクエリを実行することでデータを分析したり、より複雑な分析や機械学習の推論を実行したりすることができます。

レポート作成

AWS IoT Analytics では、Jupyter Notebook との連携により、高度なデータ探索が可能です。また、AWS IoT Analytics は、Amazon QuickSight との統合により、データの可視化を可能にします。Amazon QuickSight は、こちらのリージョンで利用可能です。

なぜこのパターンが有用なのか

  • 使い勝手の良さ: AWS IoT Analytics は、AWS IoT Core と非常によく統合されており、IoT データの収集、処理、保存、分析、構築を支援します。完全にサーバーレスでローコード(Lambda で拡張可能)です。
  • 予知保全: AWS IoT Analytics は、強力な予知保全モデルを簡単に構築し、デバイス群に適用するための事前構築されたテンプレートを提供します。
  • 包括的な分析の実施: AWS IoT Analytics は、AWS IoT レジストリやその他のパブリックデータソースを使用して、IoT デバイスデータをコンテキストメタデータで自動的に拡張できるため、時間、場所、温度、高度、その他の環境条件を考慮した分析を実行することができます。
  • 異常検知の自動化: AWS IoT Analytics では、Amazon SageMaker を使用して異常検出ワークフローを自動化し、ML ワークフローによるインサイトを得ることができます。コンテナ化された Jupyter ノートブックを AWS IoT Analytics で使用する方法については、こちらで詳しく説明しています。

パターン4:Amazon Timestream

概要

このパターンでは、まず AWS IoT Core に時系列データを公開し、次にビルトインの IoT ルールによって Amazon Timestream にデータをプッシュし、様々なダッシュボードオプションを使用してデータを可視化することができます。

メトリクスと分析

Amazon Timestream の IoT ルールは、MQTT メッセージから Amazon Timestream データベースにデータを書き込みます。その後、Amazon QuickSight のようなツールを使用して、データのクエリと可視化を行うことができます。詳細については、Timestream ルールアクションを参照してください。

Timestream のためのヒント: DB への書き込み回数を最適化したい場合は、こちらに記載されているバッチ書き込みのアプローチに従ってください。

レポート作成

Amazon QuickSight とともに、Amazon Managed Grafana をダッシュボードとアラートツールとして使用することもできます。詳しくは Timestream-Grafana integration を参照してください。

なぜこのパターンが有用なのか

  • このパターンは、平滑化、近似、補間などのデバイスデータの分析機能を実行しようとしている場合に便利です(Amazon Timestream によるビルトインサポート)。例えば、スマートホーム機器メーカーは、Amazon Timestream を使用して、デバイスセンサーから動きや温度データを収集し、動きのない時間範囲を特定して補間し、消費者が省エネのために暖房を弱めるなどのアクションを取るように警告することができます。

パターン5:AWS IoT Core + Amazon Kinesis + Amazon QuickSight

概要

このパターンでは、Amazon Kinesis と統合された AWS IoT Core にデータを公開することから始め、リアルタイムで大容量のデータを収集、処理、分析することができます。データは Amazon QuickSight を使用して可視化することができます。

メトリクスと分析

Amazon Kinesis Data Analytics を使用すると、ストリーミングデータから実用的な洞察を得ることができます。Amazon Kinesis Data Analytics for Apache Flink を使用すると、Java、Scala、SQL を使用してストリーミングデータを処理および分析することができます。このサービスでは、ストリーミングソースに対してコードを作成・実行し、時系列分析の実行、リアルタイムダッシュボードの提供、リアルタイムメトリクスの作成が可能です。

レポート作成

レポート作成には、Amazon QuickSight を使用し、バッチおよびスケジュール式のダッシュボードを作成することができます。よりリアルタイムのダッシュボード機能が必要な場合は、Amazon OpenSearch と OpenSearch Dashboards パターンを使用することができます。

なぜこのパターンが有用なのか

  • もしあなたのアプリケーションが高帯域幅のストリーミングデータポイントを含むなら、このパターンはその高帯域幅とリアルタイムのストリーミングデータを分析する能力を提供し、実用的な洞察を導き出すことができるようにします。

パターン6:Amazon OpenSearch Service + OpenSearch Service Dashboards/Amazon Managed Grafana

概要

このパターンでは、まず AWS IoT Core にデータを送信し、次にビルトインの IoT ルールによって Amazon OpenSearch Service にデータを送信し、様々なダッシュボードオプションを使用してデータを可視化することができます。

メトリクスと分析

OpenSearch IoT ルールアクションは、MQTT メッセージから Amazon OpenSearch Service ドメインにデータを書き込みます。その後、OpenSearch Dashboards のようなツールを使用して、OpenSearch Service のデータをクエリして視覚化することができます。詳細については、OpenSearch ルールアクションを参照してください。

レポート作成

Amazon OpenSearch Dashboards の使用とともに、ダッシュボード作成オプションとして Amazon Managed Grafana を使用することもできます。Amazon Managed Grafana では、Grafana ワークスペースコンソールで AWS データソース設定オプションを使用して、Amazon OpenSearch Service をデータソースとして追加することができます。設定方法の詳細については、Grafana plugin for OpenSearch を参照してください。

なぜこのパターンが有用なのか

  • デバイスの健全性またはデバイスのメトリクスを監視することを検討している場合、このパターンによって、その裏にあるデータを検索し、カスタム設定を実行し、リアルタイムのダッシュボードアプリケーションを手に入れることができます。

パターン7:AWS IoT Core + AWS Lambda + Amazon DynamoDB + Amazon QuickSight / Custom Dashboards

概要

このパターンでは、AWS LambdaAmazon DynamoDBAWS AppSync、お好みのカスタムダッシュボードを使用して、AWS IoT Core 経由で IoT デバイスから直接送信されるリアルタイムのテレメトリデータを可視化することができます。

AWS IoT Core の IoT ルールは、AWS Lambda 関数に MQTT メッセージを送信します。Lambda 関数はメッセージをフォーマットすることができ、その後、AWS AppSync GraphQL ミューテーションを実行します。ミューテーションの呼び出しは、Amazon DynamoDB テーブルにメッセージを保存し、カスタムダッシュボードにリアルタイムでメッセージをブロードキャストします。カスタムダッシュボードは、更新されたメッセージを受信する AWS AppSync サブスクリプションを購読します。このパターンについて、詳しくはこちらでご覧いただけます。

メトリクスと分析

IoT データは、Amazon DynamoDB テーブルに格納されます。高度な分析を行うには、データを分析プラットフォームにエクスポートする必要があります。これは、Amazon S3 にデータを移行するデータパイプラインを構築し、Amazon Athena を使用して、高度な分析を実行することで実現できます。詳細については、高度な分析と可視化を実行するAmazon Athena のブログ記事を参照してください。

レポート作成

AWS Amplify を使用して、カスタムダッシュボードとモバイルアプリケーションを簡単に作成し、立ち上げることができます。カスタムダッシュボードは、iOS、Android、React Native、Flutter、React、Vue などの AWS Amplify Framework を通じて AWS AppSync と通信することができます。

なぜこのパターンが有用なのか

  • このパターンは、IoT データがカスタムリアルタイムダッシュボード上で変化したら、すぐにエンドユーザーに配信する必要があるユースケースに最適です。ユーザーは、カスタムで設定可能なフロントエンドクライアントを使用してデータにアクセスすることができます。
  • このパターンは、消費者が家電製品をリアルタイムで監視するためのモバイルアプリケーションにも最適です(オンデマンドでのみ有効化される場合)。

考察と注意点

  • 万能のソリューションはありません: この記事で紹介されているすべてのアーキテクチャパターンは、最も実現可能なパスにフォーカスしています。それぞれのユースケースは異なるので、ほとんどのパターンでは、他の関連するサービスを追加して、機能を追加したり、欠点を克服したりするために微調整することができます。もし、どのパターンも要件を満たさない場合は、直接呼び出しを許可し、AWS サービス(AWS IoT サービスを含む)と統合するためのクレデンシャルプロバイダのパターンを見てください。
  • 費用について: どのパターンにも独自のコストモデルがあり、アプリケーションのデバイスの数やデータ量によって大幅に変わる可能性があります。パターンを選択する際には、これらの要素を考慮することが重要です。
  • リージョン固有のサービス: すべてのサービスがすべてのリージョンで利用できるわけではないので、パターンを選択する前にサービスを確認する必要があります。

まとめ

この投稿では、AWS 上で IoT データのレポートと可視化ソリューションを構築するためのさまざまなアーキテクチャパターンを紹介しました。また、各パターンがどのように異なるニーズや要件に対応できるかを説明しました。リアルタイムレポート、リアルタイム分析、または履歴トレンドレポートが必要な場合に応じて、ビジネスニーズに沿ったソリューションを選択してください。

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著者について

Umesh Kalaspurkar

Umesh Kalaspurkar は、ニューヨークを拠点とする AWS のソリューションアーキテクトです。20年以上にわたり、企業や新興企業におけるデジタルイノベーションとトランスフォーメーションプロジェクトの設計と実施に携わってきた経験を持ちます。顧客が課題を発見し、それを克服するのを支援することにやりがいを感じています。仕事以外では、父親であること、スキー、旅行などを楽しんでいます。

Ameer Hakme

Ameer Hakme はペンシルバニアに拠点を置く AWS ソリューションアーキテクトです。北東部の独立系ソフトウェアベンダーを対象に、AWS クラウド上でスケーラブルかつモダンなプラットフォームの設計と構築を支援しています。余暇にはバイクに乗ったり、家族と過ごしたりしています。

Ravikant Gupta

Ravi Gupta は AWS のエンタープライズソリューションアーキテクトです。熱狂的な技術愛好家であり、お客様と一緒に仕事をし、革新的なソリューションの構築を支援することに喜びを感じています。IoT と機械学習を専門分野としています。余暇は家族と過ごすことと、写真を撮ることを楽しんでいます。

この記事はソリューションアーキテクトの三平が翻訳しました。